191話 迷宮に入れない!
『メダイユ王国で迷宮に入るためには、冒険者登録が必要みたいね』
しずくが、入口に程近い場所から、熱気に溢れる受付の様子を眺めていると、詳細を聞きに行っていたコサギが戻って来た。
『しかも、今回のような新しい迷宮の場合、どの程度の危険度なのかわからないから、二級以上の冒険者しか入れないように、制限をかけているらしいわ』
「それじゃあ、一般人が迷宮に入ることはできないってこと?」
『残念ながら、そういうことなるわね』
「そんなあ……」
「がっかりきゅる……」
あからさまに気落ちしているしずくたちを見て、マスターが助け船を出す。
「たとえば、迷宮に同行する冒険者を募っている学者に直談判して、同行を許してもらうことはできませんかね?」
『そうねえ。直談判するにしても、依頼主に必要とされるような特技や実績──調査に役立つ知識とか、豊富な護衛経験がないと厳しいのではないかしら』
コサギの意見を聞いたしずくが、ため息をつく。
「そっか……。残念だけど、まあ、仕方がないよね。私とネリネは宿で留守番しているから、今回はマスターやコサギたちだけで遺跡を調べてきてもらえるかな?」
『おまえ、なんであきらめる? そんなの、ごまかせばいい』
「ズルするのは駄目でしょ。決まり事はちゃんと守らなくちゃ」
『……おまえ、まじめで、しょうじきすぎ!』
「でも、あなたは、しずくさんのそういうところが、気に入っているのでしょう?」
マスターにからかわれた〈白い死神〉は、しずくの肩に止まって彼女の髪をくしくしと突いているが、これは怒っているのではなく、彼なりに慰めているつもりらしい。
胸ポケットに入っているマスターが、笑いをかみ殺している。
『まあ、今すぐに結論を出す必要はないわ。とりあえず、今夜泊まる宿を探した後で、あらためて全員で迷宮に行ける方法を考えましょうよ』
「ぼくもコサギに賛成です。こんなに冒険者が詰めかけているのですから、取り急ぎ、先に宿を確保しておくべきだと思います」
──この時、気落ちした様子のしずくとネリネが、コサギに手をひかれて冒険者ギルドを出て行くのを、気づかわしげな一対の目がじっと見つめていたことに、彼らは全く気付かずにいた。




