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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第四章 世界に背を向けたエイと思い出のつみれ汁

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189話 メダイユ王国に入国

 その後、支配人や従業員たちに見送られながら宿を後にしたしずくたちは、人目のない場所から、マスターが下見した国境近くの森まで一気に転移した。

 

 その後は、トトスの道案内で、国境へと続く道に出て、他の旅人たちとすれ違いながら、ひたすら歩いて行く。


『この道をまっすぐ南に行けば、国境にある砦に出るわ。そこで出国手続きを無事に終えたら、いよいよメダイユ王国に入国よ!』


 そう言いながら、コサギが指さした方向には石造りの砦が見えた。街道を行く人々がだんだんと増えていくにつれ、しずくのワクワク感がますます高まっていく。

 まだ見ぬ新しい国への期待を膨らませながら、しずくはネリネとしっかり手を繋ぐと、優雅な足取りで先を行くコサギの背を追うのだった。





 多種多様な人種が入り混じった列に並び、無事に砦での出国手続きを終えたしずくたちは、国境の街で一泊した次の日に、メダイユ王国に足を踏み入れた。


『とりあえず、まずはこの先にある町を目指すわよ』


 一行は、コサギとトトスの案内に従い、街道に沿って一時間程歩いた後に、旅行者で賑わう小さな町にたどり着いた。

 

 食堂や宿泊施設の多いこの町は、いわゆる宿場町のような役割を果たしているようだ。

 

 しずくたちは、近くの食堂で簡単に小腹を満たした後、コサギやトトスが今までに巡った国々の話を聞いて順番待ちをしながら、町から出ている乗り合い馬車に乗り込んだ。

 

 それから、のんびりと馬車に揺られること、二時間あまり。

 ようやく一行は、メダイユ王国の最北端に位置する、ケルベラという名の地方都市にたどり着いた。

 がやがやと人で賑わう城壁前で、マスターが目立たぬように、胸ポケットから顔を出した。


「どうやら、メダイユ王国への正式な入国手続きは、ここで行うようですね」

「手続きを待つ人の行列は、チャルトリク王国に入国した時と比べたら、そんなに長くないみたいだね」

「こっちは、なんだかのんびりしているきゅる」


 入国希望者の多くが商人だったチャルトリク王国とは違い、列に並んでいるのは、冒険者や旅行客が多いようだ。


「いろんな装備の冒険者さんがいるきゅる!」

「ほんとだ! わ、あの熊の獣人さんの持っている盾、私の体が隠れそうなくらいに大きい!」


 しずくとネリネが夢中になってはしゃいでいると、不意に、「君たちは冒険者じゃないのかい?」と、背後から声をかけられた。

 驚いて振り向くと、立派な体格をした竜人族の男性が立っていて、興味深そうな顔でしずくたちを見下ろしていた。


「あ、はい。私は冒険者ではなく、コサギの──魔導士のお師匠様の弟子で、ミナセと申します」

「ねりねは、しず……ミナセちゃんの使い魔きゅる!」

「そうなのか。ま(・)だ(・)こ(・)ん(・)な(・)に(・)小(・)さ(・)な(・)子(・)供(・)な(・)の(・)に(・)、使い魔を持っているだなんて、ミナセは礼儀正しい上に優秀なんだなあ」

「小さなこども? いえ、私は──」


 子供ではないと、誤解を訂正しようとしたしずくは、剣士の格好をした男性の背丈が、優に二メートルを超えていることに気付くと、「この人から見たら、私が子供に見えても仕方ないかも……」と思い直し、そっと口を閉じた。

 

 男性はしずくとネリネのことを、縦長の瞳孔の目を細めて見つめている。その顔は、しずくがかわいらしい生き物を見つけた時の表情にとても良く似ていた。


「俺の名はドウリグ。仲間たちと共に、〈烈剣(れっけん)〉という名のチームを組んで活動している冒険者だよ」


 穏やかな声でそう名乗った青年は、人懐っこい笑顔を向けて来た。


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