↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第四章 世界に背を向けたエイと思い出のつみれ汁

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
186/227

186話 危うい所で命を拾ったわね

「何のことかわからないきゅる。きっと、酔っ払いの空耳きゅる」

「そんな訳があるか! こいつ、魔物のくせに、舐めた口をききやがって!」

「ねりねは、魔物なんかじゃないきゅる! お前の目はふしあなきゅる!」

「なんだと?!」」


 逆上してネリネに掴みかかろうとした魔導士の男を、慌てて立ち上がったしずくが止めようとする。


「落ち着いてください! こんな小さい子を相手に、ちょっと大人げないですよ!?」

「うるさい! 邪魔をするなっ!」

「あっ!」


 ネリネを庇(かば)おうとしたしずくの手を、激昂した男が乱暴に振り払った拍子に、よろけたしずくのフードが脱げた。


「お、お前、その顔──」

「しずくさんに触れるな!」


 しずくの美貌に気付いた男が手を伸ばそうとするよりも早く、鋭い声を上げたマスターが、魔法で男たちの体をまとめて宙に放り出した。


「な──」

「うわっ!?」

「痛え!」

「ぐえっ!!」

「ぎゃっ!」


 そろって宿の入口付近に投げだされた男たちが、床に強く体を打ち付けた痛みで呻いていると、たまたま外を通りかかった警備兵が、悲鳴と大きな物音を聞きつけて入って来た。


「おい、一体なんの騒ぎだ? 客同士が喧嘩でもしたのか?!」


 警備兵が床に転がっている〈黒竜の牙〉を見て訝(いぶか)しんでいると、彼の背後から顔をのぞかせた商人の男が、「あっ!」と、驚きの声を上げた。


「警備兵さん、私の店で売っていた品を無理やり巻き上げたのは、こいつらです!」

「何?! それは確かか? こいつらは〈黒竜の牙〉という冒険者チームだが、本当に見間違いではないんだな?」

「ええ! この顔と身に着けている装備──商人なら一度見た客の姿は忘れません。絶対に間違いありません!」


 真剣な顔でそんなやり取りをしていた二人は、床で呻いている男たちを睨みつけた。


「一体何です? 僕たちが何か──」

「呆れましたね。もう、自分たちが売り物を奪った相手の顔を忘れたのですか?」

「お前たちには、窃盗の容疑がかかっている。このまま一緒に、詰め所まで来てもらうぞ!」

「ええっ?!」


 よろよろと立ち上がりかけたルーグの腕を、険しい顔の警備兵が乱暴に掴んで、外の通りに引きずり出して応援を呼ぶと、遅れて駆け付けてきた他の警備兵たちが、わめき散らす残りの仲間たちと共に連行していった。

 従業員からの知らせを受けて現れた宿の支配人に、責任者らしき警備兵が事情を説明するのを、好奇心にかられた食堂の客が見つめている。その隙に、すばやくフードを被り直したしずくは、緊張の糸が切れたよう椅子にもたれ掛かると、大きく息をついた。


「マスター、さっきは助けてくれてありがとう」

「しずくさんもネリネも、どこにも怪我はありませんか?」

「うん。大丈夫」

「ねりねも、大丈夫きゅる!」


 心配そうに胸ポケットから顔をのぞかせたマスターに、笑顔で答えるしずくたちとは裏腹に、コサギは少し焦ったような表情で、つい先程まで男たちが立っていた場所を見つめていた。


「あの冒険者たち、危うい所で命を拾ったわね。マスターに投げ出されていなかったら、今頃は全員この場で氷漬けにされていたわ」


 先程まで彼らが立っていた床に、うっすらと氷が張っているのは、〈白い死神〉が男たちを確(・)実(・)に(・)仕(・)留(・)め(・)よ(・)う(・)と(・)、氷魔法を発動しかけた名残である。

 しずくに手を出されて怒った〈白い死神〉よりも、一瞬早くマスターが魔法を発動したおかげで、惨劇は防がれたようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。