184話 今後の方針を決める
「とりあえず、グラキリス湖の西側は、この際あと回しにして、古い地図が残っている東側から調査することにしませんか?」
『そうね。私もそれがいいと思うわ』
「私もマスターに賛成」
コサギとしずくに続き、ネリネやトトスも賛成する。一柱だけ返事がなかった〈白い死神〉は、小腹が空いたらしく、持参したクッキーに夢中になっている。
宿に戻り、ベッドの上で地図の写しを広げたしずくたちは、額を寄せ合いながら、山が書き込まれた場所と、現在の国名を逐一確認した。
チャルトリク王国にも幾つか山があるが、昔からそこに住んでいる種族は獣人族ではなく、夜族や小人族である。
そのため、チャルトリク王国に探している村がある可能性は、限りなく低いと判断した。
『そうなると、この国から一番近くて、村がある可能性が高いのは、メダイユ王国かしらね』
メダイユ王国は、チャルトリク王国の南隣に面している国で、北以外の三方を山に囲まれた農業国である。チャルトリク王国と同様にメダイユ王国も他民族国家で、昔から山間部には獣人族が多く暮らしているらしい。
道に明るいトトスの勧めで、国境付近の森まで一気にマスターの力で転移した後、徒歩でメダイユ王国へ入国することに決めた一行は、夕食をとるために一階の食堂に向かうことにした。
「屋台の料理も美味しかったけど、この宿の人が教えてくれた、名物料理の、『白身魚とじゃがいものグラタン』っていうのを一度食べてみたくて」
『そのお料理、実はねりねもずっと気になってたきゅる!』
またしても運の良い事に、奥の壁際にあるテーブル席に座ることができたしずくたちは、白身魚とじゃがいものグラタンの他に、昨日頼んだものとは違う種類の料理と飲み物を注文した。
「んんー! 白身魚とじゃがいも、どちらもほんのり甘味があって、ホクホクで美味しい!」
熱々の状態で出されたグラタンは、チーズの塩味で味付けしたクリームソースと淡泊な白身魚、じゃがいもとの相性が最高だった。
ふうふうしながらグラタンを口に運ぶしずくとネリネの前では、コサギが度数の高い地酒を片手に、魚のつくねをこんがりと焼いたものにショウガと刻みネギを乗せ、甘辛いタレをたっぷりと絡めた料理に舌鼓を打っていた。
『どの料理もとっても美味しいわあ。唯一不満があるとしたら、しずくが淹れたコーヒーが無いから酔えないってことね』
「え? でも今飲んでいるのって、この店で一番強い高いお酒なんだよね? それなのに、酔えないの?」
コサギが飲んでいるのは、琥珀色をした辛口の酒で、アルコール度数は五十を下らないだろうとマスターが言っていた。そんなに強い酒を瓶で頼んだエルフ美女は、先程から手酌で飲んでいても、顔色が全く変わっていない。
『んー。ちょっとピリッとするけど、水のようにしか思えないわ』
「そ、そうなんだね……。お酒で酔えないのは体質によるものなのかな?」
『さあ、どうなのかしらね。まあ、こういうわけだから、また部屋に戻ったらコーヒーを淹れてもらえるかしら?』
「それはいいけど、悪酔いしないように、飲んでいいのは三杯までだからね?」
『んふふ、ありがとう、しずく! 大好きよ!』
『しずく、おれにも、さうーのおさとうのみるくてぃー……』
「小鳥さんが便乗してきたきゅる!」
「え? でも小鳥さんは、さっき食べてたクッキーで、もうお腹いっぱいでしょ?」
『さうーのおさとうは、べつばら』
「しかたがないなあ。でも一杯だけだからね?」
『わかった!』
「全く、しずくさんは本当に甘いですねえ」
彼らがにぎやかに食事をとっていると、明らかに酔っぱらっている男たちが、酒瓶を片手にテーブルまでやってきた。




