182話 禁書庫
『とるたたも、えいりなすも、ひきこもり。きっと、あいつらにきいても、むり。でも、きんしょなら、なにかわかるはず』
「きんしょ? ……あっ、もしかして禁書のこときゅるか?! 確かに、禁書だったら、詳しいことが書かれているかもしれないきゅる!」
はっとしたネリネが声を上げると、すぐにコサギが反応した。
『確かに、禁書を調べてみるのは名案かもね! 結局、ここにある本を読んで分かったのは、東側諸国の地名と地形、それと、神殿で見たエイリナスの神像は大戦前後に作られた可能性が高い、ということだけだったし』
「そうとわかれば、早速みんなで禁書庫に行くきゅる!」
手分けして本を戻した一行は、休憩室で簡単に腹ごなしをした後、トトスの案内で禁書庫のある区画へと向かった。
昨日神殿で出会った館長に教えられた通り、禁書庫の扉の前に立つ守衛に声をかけ、名前を伝えて入室するためのコインを手渡すと、一行は施錠が解かれた扉の奥へと足を踏み入れた。
正面の受付には、今しがた守衛から連絡を受けていたらしく、管理者と思しき者たちが、立ったままでずらりと待ち構えており、しずくたちに興味深そうな目を向けていた。
『ニュイシーパ。実は私たち、館長さんの紹介でここを訪ねてきたの。しばらくの間、書庫にある資料を見せてもらっても構わないかしら?』
「コサギ様ですね。事前に話は聞いております。本をお探しの際は、この部屋の管理人である私も同行し、本の閲覧はこの我々のいる受付前の机で行っていただきますが、それでも宜しいでしょうか?」
『ええ、もちろん。それで構わないわ』
禁書庫の管理人をしているのは、全員エルフのようだった。彼らの中には、特に感覚の鋭い者がいるらしく、マスターたちが完全に抑え込んでいるはずの神気を感じ取ったのか、コサギの姿だけでなく、しずくの胸ポケットや、コサギの肩掛けかばんをしきりに気にかけていた。
彼らの視界から外れるまでの間、しずくの胸ポケットにいるマスターや、コサギのかばんの中の〈白い死神〉とトトスは、隠れたままで懸命に気配を殺していた。
何も気付かないフリをしながら書庫の奥に進み、やっと疑いの目を向けていたエルフの姿が見えなくなると、しずくとコサギはほっと息をついた。
そんな二人を見て、共に同行しているエルフ男性が不思議そうな顔をした。
「どうかしましたか?」
「い、いえ。思っていた以上にたくさん本があるので、少し驚いてしまって」
『そうそう。これだと、目的の本を探すのは大変そうだと思って、ついため息が出ちゃったのよ』
「ああ、そういうことでしたか! それならば、管理者である私にお任せください。どんな本をお探しなのか教えていただければ、すぐに探し出して差し上げますよ」
どうやらこのエルフ男性は、マスターたちの神気には全く気付いていないらしい。
心の中で胸を撫で下ろしたしずくは、にこやかな笑顔を向けると、調べたい本の内容を書いたメモを差し出した。
「では、お言葉に甘えて、これらのことに関する本を探していただけますか?」




