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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第四章 世界に背を向けたエイと思い出のつみれ汁

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178話 資料探し

「小鳥さん、お願いだから、館内に居る間は、何があっても絶対に暴れないでね?」

『──わかった。おれ、がんばる』


 自分の肩にちょこんと乗った〈白い死神〉に、真顔で何度も大人しくしているように言い聞かせたしずくは、美しい絵画が並ぶ廊下を進み、巨大な閲覧室に足を踏み入れた。


「ふわあ……!」


 それは、まさに圧巻と呼ぶにふさわしい光景だった。

 

 天窓から自然光が差し込むドーム型の閲覧室の壁は、見渡す限り、全て本棚になっている。そして、その内側には、本を閲覧するための机が放射状に並んでおり、中央部分に設置されたドーナツ型のカウンターでは、大勢の司書が、本に関する問い合わせに応対しているのが見えた。


「本当に凄いよ! 私が居た世界でも、こんなに立派な図書館は、世界中で数える程しかなかったと思う」

「実は、しずくさんの世界から、製紙方法や活版印刷の知識を手に入れたおかげで、この世界でも本が普及するようになったのですよ」

「だとしても、これだけたくさんの本を集めて、一般の人にも閲覧できるようにしたのは、素晴らしいことだと思うな」

『交易で手に入れた潤沢な資金を惜しみなく使って、これほど見事な知識の殿堂を作り上げたことは、チャルトリク王国において最も優れた功績だと言えるかもね』


 辺りを見回す度に、感動の声を漏らしていたしずくは、なかなかその場から動けずにいたが、やがて痺れを切らしたコサギによって、半ば引きずられるように中央のカウンターまで連れていかれた。


「あ、ええと、この大陸の一千年前頃の地図、それと、神殿に安置されている〈水の神〉の神像にまつわる記録ですね! い、今すぐにお調べ致しますので、少々お待ちください」


 コサギの美貌から目を離せないでいる狼獣人の男性司書が、しどろもどろに問い合わせを復唱していると、〈白い死神〉が不意に感心したような声で、しずくに話しかけた。


『このたてもの、れっかしないまほう、いっぱいかけてる。えいりなすのぞうに、かけられていたのと、たぶんおなじ……』

「神殿で見たおねぼう(エイリナス)さんの神像と同じように、劣化を防止するための魔法が、この大図書館でも使われているってこと?」

『そう。すごくふるくて、めずらしいまほう』

「小鳥さんは、その古い魔法が、今探している村に関係していると思う?」

『よくわからない』

「まあ、そうだよね……」


 しずくがため息をついていると、マスターが彼女の胸ポケットから顔を出した。


「ですが、その可能性が無い訳ではありません。せっかくですから、この劣化防止の魔法についても調べてみましょう。もしかしたら、思わぬ手掛かりがつかめるかもしれません」


 それからしばらく待たされた後、目的の本がある場所と書名の目録を手渡された一行は、大図書館内の探索に向かうことにした。


「ふむ。目的の資料は、部屋番号と区画番号、それと本棚の番号から探し出すようですね」

『全部の本がこの部屋にある訳ではないきゅるね』

「今、受付でもらった館内地図を見ているんだけど、ちょっと広すぎて迷子になっちゃうかも」

『大丈夫! 私たちにはトトスが付いているのだから、絶対に迷うことはないわ!』


 不安を口にしたしずくに、笑顔のコサギがきっぱりと言い切った。

 美しいエルフの手の上に乗せられたハリネズミは、『ぷ!』と得意げに一鳴きして立ち上がると、しずくに向かって片手を上げた。


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