172話 新たな手掛かり
『しずくちゃん、あるじ様、この神像って魔法がかけられているきゅるよ! この台座に像が劣化しない魔法陣が組み込まれているきゅる!』
「よく気が付きましたね。さすがはネリネです」
『凄いじゃない、ネリネちゃん。確かに見つかった当時から、この像には色や形が劣化しないようにするための、高度な魔法がかけられていたの。だから、シーウィとこの神像は、おそらく同じ時期にエイリナスの敬虔な信者たちの手で作り出されたのだろうと言われているわ』
その謎の信者たちについては今でも盛んに研究が行われているが、詳しい事はまだ何もわからないらしい。
「この神像って、私たちが探している村と何か関係があるのかな? たとえば、実はシーウィと神像を作ったのは村人さんたちだった、なんてことはないのかな?」
「まあ、今のところ可能性がないとは言い切れませんが、どうでしょうね」
『この神像に関する事なら、これから行く予定の神殿の書庫に手掛かりがあるかもしれないわ』
その後、お布施としてメルダ金貨を積み上げる代わりに、書庫への立ち入りを許可された一行は、閉館まで粘ってほぼ全ての書物を調べたが、残念な事に、エイリナスの神像や村に関する手掛かりは何一つ見つけられなかった。
夕暮れ時になって、ようやく神殿を出たしずくたちは、成果が出なかったことにがっかりしながら街を歩いていた。
「うーん。せめて一つくらいは、手掛かりが見つけられると思ったんだけど……」
『期待させてごめんなさい。強運の私が一緒なら、何か見つけられると思っていたのだけれど──』
「でも、係員が鍵を無くしたおかげで、二時間も長く書庫に居られたのは、すごく運が良かったと思うよ!」
「しずくちゃんの言う通りきゅる! おかげで珍しい書物をいっぱい見ることができたきゅる!」
「ふふ。あなたたちは、本当に優しくていい子たちねえ」
実は、幸運な事は他にもあった。肩を落としながら書庫を出たしずくたちが、たまたま柱の陰で具合が悪い様子で座り込んでいた老人を見つけ、手厚く介抱してやったところ、なんと彼は、この街が誇る大図書館の館長だったのだ。
「わが街──ユイリーパの大図書館には、神殿の書庫とは比較にならない数の書物を収めております。くまなく探せば、目的の本が見つかるかもしれませんぞ」
しずくたちから、〈水の神〉エイリナスを信仰する村を探している、と聞かされた図書館長は、「そうでしたか。では、関係者以外は閲覧出来ない禁書庫にも入れるよう、取り計らっておきましょう」と約束してくれた上で、入室するための特別なコインを手渡してくれた。
「大図書館で一番偉い人と偶然知り合えたのも、コサギの強運のおかげかもしれないね。明日、早速図書館に行ってみようよ。蔵書数が桁違いに多いらしいから、今度こそ手がかりが見つけられるかも!」
「ぼくも、しずくさんに賛成です。もし村に関する手がかりがなくても、当時の古い地図が見つかれば、村があったのがどの山なのか、ある程度まで特定できるもしれません」
『やみくもに聞いて回るより、地図からだいたいの場所を割り出したほうが、効率的きゅる!』
元気を取り戻したしずくたちに、笑みを浮かべたコサギが提案する。
『わかったわ。それなら、今夜は大図書館の近くで宿を取りましょう』
「もし、そう出来るのなら凄く助かるけど、この時間から宿を探そうとしても、どこも満室なんじゃないかな?」
『ふふふ。強運の私がいれば大丈夫よ。さあ、急いで大図書館がある場所に向かいましょう!』




