171話 色付きの神像
今日明日から全国的に天気が荒れるそうなので、どうかお気をつけくださいね!
私も気を付けます(交通機関が止まらないといいなあ(>_<))
その後も、実際には怖ろしい外見をしているヴィリオーサが、勇壮で格好良い竜の姿で作られていたり、店の常連客の神像を見つけて嬉しくなったり、美しい女神像を見て感動したりと、しずくはさまざまな神像を見て存分に楽しんだ。
だが、中でも彼女が一番驚いたのは、かわいらしい小鳥を模した〈白い死神〉の神像が据えられた台座に、『北大陸の英雄神 〈氷雪の神〉シェラーレクトナータ』と銘打たれているのを見つけた時だった。
「今まで好きに呼んでいたけど、小鳥さんって、こんなに立派な名前だったの? 今まで〈小鳥さん〉って呼んじゃっててごめんね?」
「でも、長くて舌をかみそうきゅる。小鳥さんのほうが呼びやすいきゅる」
『おれ、なまえ、きにしない。いままでどおり、すきによべ』
「あなたは、粗暴なくせに、妙なところで寛大なんですよね……」
『寛大、というよりも、単にサウー砂糖以外のことは、どうでもいいのだと思うわよ?』
『ぷいー……』
他の者からどう呼ばれようとも、全く気にせずにわが道を行く〈白い死神〉は、呆れた顔の神々や「神像にそっくりの小鳥がいる!」と自分を指さす者たちをよそに、しずくの肩の上で悠然と羽繕いを始めている。
本当にサウー砂糖以外のことはどうでもいいみたいきゅる、というネリネのつぶやきを耳にしたしずくは、思わず吹き出してしまった。
「この神像は他の物とは、少し違うみたいだね」
しずくたちが最後に見たのは、〈水の神〉エイリナスの神像だった。
五弁の花の花畑を模した台座の上で、エイの姿をしたエイリナスがゆったりと泳いでいる。
「おねぼうさんの像だけ、色付ききゅる」
ネリネが指摘した通り、今までに見て来た他の神像とは違い、何故かエイリナスの神像だけが彩色されている。
青い花畑の上をゆったりと泳ぐ青空色のエイ──それはまるで、おとぎ話の一場面のようにも見える。
「この花って、確か入口の扉や壁にも彫刻されていたよね」
『あら、よく気づいたわね。これはシーウィという名前の花で、この西大陸では幸運をもたらす花として愛されているの』
「ふうん、そうなんだ」
『いつもエイリナスが眠っているグラキリス湖の周辺は、この花の群生地として特に有名よ。だから、エイリナスとシーウィを題材にした彫刻や絵は、わりと良く見かけるわ』
神像の前に据えられた水盆の周りには、たくさんの青い花が供えられている。これは参拝者たちが、エイリナスの神像にシーウィを供えた者には幸運がもたらされる、という言い伝えにあやかっているのだそうだ。
「そういえば、街のあちこちにこの花の鉢植えが置かれていたね」
『この神殿に来る途中にあったお庭にも、生えていたような気がするきゅる』
記憶をたどるしずくたちに、マスターが説明する。
「西大陸の人々がこぞってシーウィを育てているのは、縁起担ぎのためだけではありません。実は、この花には、瘴気を吸収して浄化する働きがあるんですよ」
「え? そんなに凄い花なの?」
目を丸くしたしずくに、コサギが微笑んだ。
『シーウィの特性が分かった時は、それはもう大変な騒ぎだったのよ。だけどね、この花がいつ頃から生えていたのかは、誰にもわからないの。少なくとも、千年くらい前に私たちが初めてこの大陸に来た時は、一輪も見かけなかったわ』
『ぷ!』
コサギのかばんから顔を出したトトスが、彼女の言葉を肯定するようにうなずいた。
「それなら西大陸にいる神様が創り出したんじゃないの?」
「実は、ぼくもそう考えて確かめてみたのですが、みんな心当たりがないと言うんですよ」
一番最初にシーウィの花が見つかったのはグラキリス湖のほとりで、このエイリナスの神像もその花畑の中で見つかったらしい。
「だから、最初はてっきりエイリナスの仕業かと思っていたのですが、彼は花が見つかった頃もずっと湖底で眠っていましたし」
『第一、何事にも無関心で無気力な彼が、わざわざそんなことをするとは到底思えないしね』
『ぷうう……』
「じゃあ、花と神像を作ったのは神様ではなく、おねぼうさんの信者だったのかな?」
『ええ。今ではそう考えられているわ』
その時、エイリナスの神像をいろいろな角度から眺めていたネリネが、得意げな顔でしずくたちに駆け寄って来た。




