17話 千客万来
予想通りプリンをおかわりした光る毛玉たちが、メルダ硬貨で代金を支払い、嬉しそうに宙を飛び跳ねながら店を出ていくと、入れ替わりでやってきたのは、身長およそ百二十センチ位の紫水晶のような石でできたゴーレムと、羽と尾先に美しい瑠璃色の差し色が入った、シマエナガにそっくりな白い小鳥と、体長十五センチ程の光沢のあるオレンジ色のトカゲだった。
(またしても、人外のお客さん! もしかしてこの世界って、私のような人間はいないのかな?)
『店員殿。済まぬが、拙者にはオムライスと、冷たいブレンドコーヒーを頼む』
「かしこまりましたきゅる!」
カウンターに近い二人席に陣取ったゴーレムは、メニューを見ながら侍言葉で注文してきた。
……この世界の言語体系は一体どうなっているのだろう。
早々に注文を済ませた侍ゴーレムは、背筋をピンと伸ばして椅子に座り、カウンター内でしずくが調理するのを、興味津々な様子で見つめている。
「はーい! お客様、ご注文を承りますきゅる」
次に注文してきたのは、鮮やかなオレンジ色のトカゲだった。器用に右前足を上げてネリネを呼ぶ様子は、客としてなかなか堂に入っている。
ただ、さっきネリネが持って行った水がいつの間にか沸騰したお湯になっているのと、トカゲがそれを平気な顔でちろちろと飲んでいるのは、少しばかり気になるところである。
「卵ハムサンドとホットのオリジナルコーヒー、それとレアチーズケーキをお願いしますきゅる。卵ハムサンドはマスタードをたくさん利かせて欲しいきゅる」
「マスタード多めだね。了解です!」
この店のオリジナルコーヒーの説明には、コクと苦味がある事が明記されている。苦味と酸味を抑えて飲みやすくしているブレンドコーヒーを選ばなかったことから推測するに、あのオレンジ色のトカゲは、辛いものや苦いものが好みなのかもしれない。
まだ注文が済んでいないのは、ふくふくとした白い小鳥だけなのだが、先程からテーブルの上をトテトテと行ったり来たりするばかりで、何やら落ち着きがない。
テーブルのそばで注文を待つポピーは、やたらと緊張した面持ちで小鳥の様子を伺っている。
しずくはそんな彼らをさりげなく気にしながら、出来上がった料理をカウンターの上に乗せた。
「オムライスとアイスブレンドコーヒー、あがりました!」
「お客様、お待たせしましたきゅる」
『かたじけない、店員殿。おお、これはうまそうだ!』
モモが侍ゴーレムに料理を運び終えた時、ようやくマスターが戻って来た。
「遅くなって済みません。プリンは今ケースの中に並べますね。それと、これは砂糖水に入れる砂糖です」
「ありがとうマスター。あれ? このお砂糖って、カウンターの棚にある物とは少し色が違うんだね」
淡いクリーム色をしたきめの細かい砂糖を見て、しずくは小首を傾げる。
「ええ。飲料用の砂糖水に使うのなら、少し上等な砂糖のほうがいいかと思いまして。なので、サウーの木からとれる砂糖を持ってきま──」
『さうーのおさとう?!』
いきなりそう叫んで、一直線に飛んできたのは、あのかわいらしい真っ白な小鳥だった。




