168話 魚料理を堪能
『それなら、この近くに安くて美味しい店があるわ』
『ぷ!』
コサギと、彼女のかばんから顔を出したトトスが、そろって勧めてくれた店は、港に近い街らしく、魚料理が絶品だと評判の店だった。
混み合う昼の時分だというのに、運よく空いていた個室に通された一行は、店長おすすめの料理が運ばれてくる度に、その美味しさに舌鼓を打った。
ちなみに、いつもマイペースな〈白い死神〉だけは、持参したケーキを夢中で食べている。
「どれも美味しいきゅる! でも、シグベルムやターラージャとは違って、お魚ばっかりでお肉の料理がほとんどないきゅるね」
「味付けは少し濃い目かな。それに、甘辛くしたものが多いみたいだね」
もぐもぐと料理を味わうネリネとしずくに、コサギが彼女の手前に置かれた大皿の料理を勧めてきた。
『こちらのニフニフという料理は、グラキリス湖で獲れるサープという白身魚を使った、西大陸の名物料理なの。せっかくここまで来たのだから、ぜひ食べてみて欲しいわ』
ニフニフとは、見たところ、白身魚のすり身を団子状にして、それにとろみのある甘辛いタレをかけた料理のようだ。
早速口にしてみると、味付けは少し濃いが、団子は柔らかくふわふわで、とても食べやすい。
「確かに美味しいけど、この濃い目のタレに絡めるよりも、出汁の利いたスープに入れて食べるほうが、白身魚本来の旨みをしっかり味わえるかも」
『あら、その食べ方も美味しそうね! 今日買ったサープを使って、ぜひ作ってみて欲しいわ』
そういえば、〈喫茶シルエ〉のメニューには、今のところ魚料理が一つもない。マスターに相談して、もし新鮮な魚を手に入れる算段がつくのであれば、新たなメニュー作りに挑戦してみるのもいいかもしれない。
しずくはそんなことを考えながら、目の前の大皿に山盛りになっているニフニフを、また一つ口の中に放り込んだ。
たっぷりと時間をかけて、存分に魚料理を堪能したしずくたちは、この国を訪れた本来の目的である村探しのために、大通りを抜けた先にあるという神殿に向かうことにした。
神殿の書庫に保管されているという、古い文献を調べてみようと考えたのだ。
「でも、そんな貴重なものを、一般人に見せてもらえるかな?」
『大丈夫。お布施をたんまり渡せば、喜んで見せてくれるわ』
「うわー……。いかにも商売で成り立っている国って感じだね」
『お布施代なら、ぼくが幾らでも出せますから、何も心配は要りませんよ』
〈金運と財運の神〉であるマスターが胸を張る。確かに、お金のことで彼以上に頼もしい神はいないだろう。
商店が雑多に立ち並ぶ大通りを更に歩いて行くと、白い石造りの建物が見えて来た。




