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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第四章 世界に背を向けたエイと思い出のつみれ汁

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159話 巨大な来訪者

 〈喫茶シルエ〉がカリエンテス大陸──通称〈西大陸〉に移転してから、そろそろ二週間がたとうかという頃。

 ようやく、グラキリス湖の西側に広がる〈死の大地〉の瘴気(しょうき)を浄化し終わったヴィリオーサたちは、店を訪れるなり、思い思いにくつろいでいた。

 


 お疲れさま、という気持ちを込めて、彼らには〈りりちゃん印のクリームチーズケーキ〉と好きな飲み物を無料で提供している。


「複数の神で作業しているとはいえ、あれだけ濃い瘴気を浄化した上で、土地の再生まで行ってきたのですから、相当疲れがたまっているはずです」

「そうだよね。みんな、ここに来たばかりの時より、だいぶやつれているもの」


 実際に、浄化に協力していた光る毛玉たちが、日を追うごとに(しお)れていくのを見ていたしずくは、マスターに同意してうなずいた。

 

 今ヴィリオーサと行動を共にしている神々は、いずれも大地の再生や瘴気の浄化に特化した権能を持っている。そんな彼らがこれほどまでに手こずったのだから、〈死の大地〉の瘴気汚染は想像以上にひどいものだったのだろう。


「ですが、ヴィリオーサたちが懸命に働いてくれたおかげで、近い将来〈死の大地〉は緑豊かな土地に生まれ変わることでしょう」


 ほんの数日前まで砂と石しかなかった荒野には、ほんの少しずつだが、草花が根づき始めている。


「みんな、せめてこの店では、美味しいものを食べながら、のんびりしてもらいたいな」

「そうですね。ヴィリオーサの話では、明日からはそれぞれ自分の住処(すみか)に戻って、しばらく休みを取るそうですから、帰り際に何かお土産を渡してあげると、喜ばれるかもしれません」

「そっか。それなら好きなケーキや軽食をお持ち帰りできるようにしようかな」

「今であれば、カレーライスを希望する者が続出しそうですけどね」


 カレーを入れるのにちょうどいい入れ物なんてあったかな、としずくが考え込んでいると、不意に店の外が暗くなった。


「あれ? さっきまで晴れていたのに、どうしたんだろう。雨でも降るのかな?」

「──違います。急に(かげ)ったのは、雲のせいではありません!」


 そう告げるマスターの声が緊張を(はら)んでいる。今しがたまで楽しげにお(しゃべ)りしていた神々も、ピタリと口を閉じ、真剣な面持ちで窓の外に目を向けている。


「すごく大きな神気を感じるきゅる」

「神気に当てられて体が動かないきゅる」

「ももは、少し怖いきゅる……」


 カウンターの中に逃げ込んで来た、三匹のシュクレドラゴンたちは、萎縮(いしゅく)して涙目になっている。


「神気を感じるってことは、外に神様が来てるってこと?」



 普段から神気に触れても何も感じないしずくが、窓のそばに駆け寄って空を見上げると、 目や口と思しき穴が開いた、白くて巨大な物体が、ゆったりと波打っていた。


(──この魚、水族館で見たことがある!)




 日の光を(さえぎ)るように、店の真上を覆っていたのは、巨大なエイの腹だった。


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