149話 ようやく訪れた幸せ
「俺の体のことは、息子二人と娘のシェイラ、俺の主治医と、宰相のヒーリム、ターファズ神殿長しか知りません。だから、皇后がメーナを身ごもった時、腹の中の子は彼女の不義の子であると、すぐにわかりました」
『それなのに皇后は、メーナはお前の子だと平気な顔で嘘を吐いたのだな? ふん。いかにもあの女がやりそうな事だ!』
「本来ならばすぐにでも離縁するところですが、ゼルバ王国からの食料支援は帝国の命綱であったため、そうする事ができませんでした」
しかも、皇后が生まれたばかりのメーナを溺愛して離そうとしなかったため、やむを得ず自分の娘として育てる事にしたのだという。
だが、もちろん皇位継承権を与えるつもりはなかったそうだ。
「血は繋がっていなくても、わが子として愛情を注いできたつもりでしたが、皇后の願いを聞き入れて一切の養育を委ねてしまったのは、大きな間違いだったようですな」
おかげで、あんなに困った娘に育ってしまった、とほろ苦く笑うアンワルに、ゼーヴァが厳しい顔を向ける。
『わかっているとは思うが、メーナが嘘偽りを申し立てて、シェイラから巫女の座を奪ったことと、帝国の守護神たる俺の神託を故意に捻じ曲げて伝えていたこと──これらは許しがたい大罪だ』
「ええ。それは重々承知しております。メーナ本人だけでなく、彼女に手を貸した皇后とその一派にも、今度こそ犯した罪をきっちりと償わせます」
厳かにそう告げて、深々とゼーヴァに頭を垂れた皇帝アンワルは、かつて彼が愛した側室の面影を色濃く残す愛娘に、優しく笑いかけた。
「シェイラ……。愛するイーリアを亡くしてからというもの、娘のお前にはこれまでの間、ずっとつらい思いをさせてしまったな。だがこれからは、ようやく幸せにしてやれる──」
「お父様……」
アンワルは、シェイラの母の最期を看取った時に交わしていた、「何があってもシェイラは必ず幸せにする」という約束をずっと果たせずにいたことを謝罪すると、愛する娘を強く抱きしめた。
これまで、メーナや皇后からどんなに虐げられても、決して折れずに前向きに生きて来た気丈なシェイラが、父親の広い胸の中で子供のように泣きじゃくるのを見て、しずくやシュクレドラゴンたちが思わずもらい泣きしている。
その一方で、ゼーヴァやマスターと毛玉たちは、号泣が止まらないヴィリオーサを慰めるのに必死になっており、マイペースな〈白い死神〉はミルクティーの残り香に夢中になっていた。
小鳥さんはいつでもマイペース(*^-^*)




