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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第三章 腹ペコの虎と起死回生のカレーライス

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148/165

148話 皇帝アンワルの告白

 ヴィリオーサの加護で常に実り豊かなシグベルムとは異なり、近年ずっと作物が不作で食料不足に悩まされていたターラージャ帝国だが、守護神であるゼーヴァ自らが、〈大地の神〉ヴィリオーサに対して帝国民の窮状(きゅうじょう)を訴えたことと、しずくやシュクレドラゴンたち口添えにより、優先的に枯れた国土を回復してもらえることになった。


「これでようやく、皇后やその取り巻きたちの専横を(くじ)くことが出来る。ゼーヴァ様だけでなく、わが帝国の窮地(きゅうち)を救ってくれたこの店には、いくら感謝しても足りません!」


 皇帝アンワルは感極(かんきわ)まった様子で、しずくたちにそう語った。




 今から約三十年前。

 当時皇帝に即位したばかりだったアンワルは、数年前から大きな飢饉(ききん)に見舞われ、深刻な食料不足に陥っていたターラージャ帝国を救うため、帝国の北東に位置する大国のゼルバ王国と条約を結び、食料を援助してもらう代わりに、魔石の輸出と行き遅れの第三王女を皇后として迎え入れることに同意した。

 

 だが、飢えた民を救おうと奔走(ほんそう)するアンワルをよそに、夢見がちで思慮に欠ける皇后は、「淋しいから」という理由だけで、同腹の弟のダディトを手元に呼び寄せて高い地位を与えたり、自分の気に入った貴族たちを優遇したりと、勝手気ままに振る舞った。

 

 当然、アンワルはそんな皇后の振る舞いを(いさ)めていたが、ゼルバ王に溺愛されて育った彼女は何を言われてもどこ吹く風で、食料難の件で日々頭を悩ませているアンワルをひどく苛立(いらだ)たせた。

 だが、ゼルバ王国から食料を支援してもらっている手前、王の愛娘(まなむすめ)である彼女の機嫌を損ねる訳にもいかず、あまり強い態度をとることができなかったらしい。




「だが、そんな我慢の日々もこれで終わりだ。疲弊(ひへい)した土地がヴィリオーサ様のお力で豊かになり、ゼルバ王国からの食料支援が要らなくなれば、もういちいちあの女の顔色を伺わなくて済む」


 皇帝アンワルはそう吐き捨てると、晴れやかに笑って見せた。

 長年にわたる彼の苦労を察したしずくたちは、同情と労わりをこめたまなざしを向けた。


「皇帝さんは、今までずっと奥さんに我慢していたきゅるね……」

「だから、やけに老けて見えるきゅるね」

「これからは幸せになってほしいきゅる」

「ははは。ありがとうございます。帝国の食料問題が解決したら、俺はあの女に堂々と離縁状を叩きつけるつもりです」


 アンワルの頭痛の種であった皇后は、実家に突き返されても文句が言えないほどに、これまでにもいろいろとやらかしているそうだ。

 

 先程アンワルたちが皇后の弟であるダディトを詰問したところ、〈刻知らずの宝具〉を宝物庫から勝手に持ち出してメーナに与えたのも、彼女を溺愛する皇后の仕業であったらしい。


「離縁する際は、メーナも一緒にゼルバ王国に突き返すつもりです」

『ほう。生まれてきた子供に罪はないと言っていたお前も、今回の一件でとうとう愛想がつきたようだな』


 意味深な発言をしたゼーヴァに、しずくたちが不思議そうな顔をする。

 そんな彼らに気付いたアンワルが苦笑した。


「実は、メーナは俺の子ではないのです。おそらくあれの父親は、皇后の取り巻きの貴族か、帝国に来たばかりの頃に夢中になっていた役者のどちらかなのでしょう」

「え?!」

「きゅる?!」


 実は、過去にシェイラの母と同じ病にかかった際、アンワルは子を成せない体になってしまったのだそうだ。だが、この時点ですでに優秀な子が三人もいたので、特に問題はなかったのだという。


皇后は、ゼルバ王国だけでなく周辺国の間でも地雷女として有名だったため、引き取り手が見つからなかった模様……

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