表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第三章 腹ペコの虎と起死回生のカレーライス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
144/164

144話 戻って来たマスター

「お帰りなさい、マスター! いつの間に戻って来たの?」

「たった今ですよ──ただいま、しずくさん」


 そう返事をしたマスターは、ぱたぱたと羽ばたきながらしずくのそばまで飛んで来ると、彼女の膝に着地した。


『っ!? 何故ここに!?』

「ここはぼくの店なのですから、別に居てもおかしくはないでしょう?」


 狼狽(ろうばい)するゼーヴァから視線を外したマスターは、目を見開いたままで固まっている皇帝たちを、冷ややかに一瞥(いちべつ)した。


「それより、これは一体どういうことです? しずくさんに掛けた守護魔法の揺らぎに気付いて、こうして慌てて戻ってみれば、何故か僕の店に、〈風雷(ふうらい)の神〉とターラージャ帝国の皇帝たちが入り込んでいる──」

『お、落ち着け! 実は、これにはいろいろと事情があってだな──』

「それに、あなたは、先程聞き捨てならないことを言っていましたね。確かメーナという者が、しずくさんを襲ったとか何とか──」


 羽の生えた小さな白蛇から、怒気を(はら)んだ冷気が(ただよ)ってくると、ゼーヴァの顔色がますます悪くなり、皇帝や宰相たちは、石のように固まったままで身を(すく)ませた。


「それで? メーナという、その()れ者は今どこに?」

『ま、待て! 頼むから、落ち着いて俺の話を──』


 氷よりもなお冷たい目で店内を見回すマスターを、焦ったゼーヴァが(さえぎ)ろうとしたその時。



「メーナならここに! このわたくしがメーナです!」


 緊迫した空気にはふさわしくない、喜色に満ちた声が店内に響き渡った。


「ま、待て、皇女!今すぐに黙るのじゃ!」


 顔色を失くしたターファズ神殿長が制止しようと声を張り上げるが、メーナは全く意に介さない。

 両手を後ろ手に拘束された美しい娘は、床に転がされたままで嬉しそうに頬を上気させ、二柱(ふたはしら)の神にとろけるようなまなざしを向けた。


「──君がメーナ?」

「ええ、そうですわ! わたくしは、ターラージャ帝国の第二皇女、メーナ・リル・ターラージャと申します。その羽の生えた白い蛇のお姿──あなたは、あの有名な〈金運と財運の神〉のタピネ様で間違いないですわよね! ああ、お会いできて嬉しゅうございます!」


 神の名前を口にした瞬間に、マスターが冷え冷えとした目をさらに細めたことに、メーナは全く気付いていない。



「ああ、マスターの前で名前を言っちゃた……」

「あるじ様、何だかすっごく怒ってるきゅる」


 額に手を当ててため息をついたしずくに、モモがプルプルと震えながらしがみ付く。

 メーナを除くターラージャ帝国の者はみな息を吞み、ゼーヴァの秀でた額からは、うっすらと冷汗が(にじ)み出ている。

 


 しずくの膝から飛び立ってカウンターの上に移動したマスターは、神殿長がメーナに(ほどこ)した強力な戒めをいとも簡単に解除すると、拘束されていた手首を(さす)って媚びるような笑みを浮かべる少女を、冷ややかに見下ろした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ