130話 料理勝負開始!
「じゃあ、二人とも料理を始めてくださいきゅる!」
ネリネの号令で、しずくとメーナ皇女がほぼ同時に調理に取りかかった。
予想していた通り、メーナ皇女はバッフェンの熟成肉にスパイスをふんだんにまぶしたカルパッチョを作るようだ。あとは副菜として生野菜のサラダを添えるらしい。
だが、料理の制限時間は、あらかじめ二時間と決められている。そんな短時間でどうやって肉を熟成するのだろう?
しずくが不思議に思っていると、メーナはウルガに命じて、綺麗な装飾が施された箱を持ってこさせると、慎重な手つきで時計を模した魔道具を取り出した。
(あれも調理道具なのかな?)
米を炊く準備を終えたしずくが、こちらを見ていることに気づいたメーナが、得意げに胸をそらす。
「確か、料理に使う道具の持ち込みは禁じられていなかったわよね?」
「ええ。その通りですけど──それは調理用の道具なのですか?」
「そうよ! これは時間に干渉できる特別な魔法具なの。効果範囲はスープ皿程度の大きさしかないけれど、バッフェン肉の時間を進めて熟成肉を作るのには十分だわ!」
一度使うと、その後しばらくは使えなくなるらしいが、効果範囲の狭さとクールタイムを差し引いたとしても、時間に干渉できるということは、使い方によっては恐ろしいことも出来るのではないだろうか。
たとえば、体に密着させた状態で魔道具を作動させ、体内の時間を急激に進めたらどうなるか──。
ふと、そんなことを想像したしずくは、ぶるりと体を震わせた。
(そんな危険な魔道具を持ち出しても平気なのかな?)
しずくが首を傾げていると、こちらを見ていたシェイラが、真っ青な顔でブンブンと首を横に振っていた。
やはりあの魔法具は、本来であれば持ち出してはいけない物のようだ。
帝国でゼーヴァに熟成肉を振る舞っていた時、おそらく、彼女はいつもあの魔法具を使っていたのだろう。その証拠に、少しもためらわずに、いかにも慣れた手つきで作動させている。
「一番危ない人が、一番危ない物を手にしているきゅる」
「しーっ! ぽぴー、静かにしゃべるきゅる! 本人が気づいていないんだから、黙っているきゅる!」
「ねりねも、もう少し声を抑えるきゅる。そうしないと、聞こえちゃうきゅるよ!」
シュクレドラゴンたちも、しずくが危惧したことに気付いたらしい。こそこそと内緒話をしながら、メーナが上機嫌で魔法具を使うのを見守っている。
(よし。あとで虎さんに頼んで、取り上げてもらおう)
とりあえず危険な魔法具の事は後回しにして、しずくは調理を進めることにした。
まず、一口大に切ったバッフェン肉に小麦粉をまぶして焼いたあと、肉を取り出した鍋に油を足して、シナモン、カルダモン、クローブを弱火で炒める。
香りが移ってきたら、そこにしょうがとにんにくを入れて炒め、スライスした玉ねぎを入れて更に炒めていく。
焦げそうになる度に差し水をしながら、完全に茶色くなるまで炒めたら、湯むきして粗みじんにしたトマトを入れてさらに炒める。そして、入れていたスパイスを取り除いたら、いったん火を止める。
この時点で、パウダー状にしたオールスパイス、コリアンダー、ターメリック、クミン、ブラックペッパー、チリペッパーなどを調合した、しずく特製のパウダースパイスと塩を入れる。
すると、食欲をそそる複雑で芳醇な香りが、ぶわりとカウンター周辺に広がった。
食いしん坊のポピーと辛い物好きの黒い毛玉は、早くもカレーを作っている鍋に釘付けになっていた。
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あと、カレーが食べたいです\(^o^)/




