13話 助っ人を呼ぶ
マスターからやり方を教わったしずくが、実際に何度かコーヒーを淹れてみたところ、驚いたことに、彼女にはコーヒーを美味しく淹れる天性の才能があることが判明した。
「すごいです、しずくさん! こんなに短期間で、浅煎りも深煎りも自由自在に淹れられるようになるだなんて! しかも、どれを飲んでもコクがあってすごく美味しいです!」
「ありがとう、マスター。私も、自分にこんな才能があったことにびっくりしてる」
引きつった笑いで答えるしずくの足元には、彼女の熱唱を聞いたばかりのコーヒー豆が、ご機嫌な様子でピカピカと光っている。
「まあ、とにかくこれでコーヒーの問題は解決したね。紅茶のほうは、茶葉も淹れ方も元の世界とほぼ一緒で良かったよ……」
しずくはもともと紅茶が好きで、普段から自分専用のティーポットやティーメジャーなどを使って紅茶を入れている。そのため、紅茶に関しては美味しく淹れられる自信があった。
「では、これで準備万端整ったということですね。いろいろありましたが、何とか開店に間に合って良かったです!」
「いやいや! まだ、一番大きな問題が残っているでしょ?」
「え? 他に問題なんてありましたっけ?」
「……マスター、それって本気で言ってるの? 一番重要なことから、わざと目を逸らそうとしてるんじゃない?」
「いや、そんなことはないと思いますけど」
「あのね、ちょっとよく考えてみてよ。この店の座席分のお客さんに対応するのに、私たちだけでは明らかに手が足りていないよね?」
「そうですか?」
「だって、私は調理にかかりきりになるから、注文は取りに行けないでしょ? だとしたら、注文を取るのも、料理を運ぶのも、お会計をするのも、全部マスターがやることになるんだよ?」
「あっ……!」
「それに、料理は魔法で運べても、接客に関してはどうにもならないだろうし」
「た、確かに!」
ようやく慌て出した白蛇を見て、しずくは大きくため息をついた。
「……本当に気付いていなかったんだね。でも、今からバイトの募集をかけても間に合わないし。一体どうしたらいいのかな……」
もちろん、しずくも調理の合間を縫って極力マスターを手伝うつもりだが、客が多ければ手が回らなくなるのは目に見えている。しずくが、うーんと唸りながら思案していると、マスターが何かひらめいたような顔をした。
「それなら、助っ人を呼びましょう!」
「え? 手伝ってくれそうな人がいるの?」
「ええ。普段は食材を確保するために、畑仕事を任せているのですが、簡単な接客であれば問題ないはずです」
「それなら、今すぐに来てもらおうよ!」
「わかりました! 彼らも人じゃないですけど、きっとしずくさんなら問題ないでしょう! 早速呼びますね!」
「待って、今なんて?!」
「出でよ! ぼくの眷属たち!」
慌てるしずくをよそに、マスターが高らかに叫ぶと、ぽふんという間の抜けた音と共に、ぽっちゃり体形の白い生き物たちが現れた。
なお、コーヒー豆は産地によって、演歌が好きだったりロックが好きだったりと、好みが分かれている模様。




