128話 ずる賢いわりにちょろい皇女
昨日の夕方、メーナが滞在している宿に戻ったシェイラは、ゼーヴァが身に着けていた指輪を彼女に差し出すと、やはりかの神は〈喫茶シルエ〉で囚われていたと報告した。
「わたくしやウルガがあんなに調べても、全く見つからなかったというのに……。一体どこで見つけたの?」
「カウンターの上に伏せられたカップの中に隠されていたわ。二階に忘れ物をしたと嘘をついて、店員に探させている間に見つけ出したの」
「あの女、何食わぬ顔をして、ゼーヴァ様が居るという証拠を、ずっと自分の手元に置いていたのね!」
「私が指輪を見せて問い詰めたら、ゼーヴァ様を捕らえていると白状したわ。でも、ゼーヴァ様を返すには条件があると言ってきたの」
「条件ですって?」
「彼女の話では、ゼーヴァ様は店で出される食事をいたく気に入っていらっしゃるのですって。だから、彼女が作る料理とあなたが作る料理、どちらが美味しいのか勝負しようと持ちかけられたの」
「は? 何ですって?」
「もし、ゼーヴァ様があなたの料理を選んだ場合は、素直にゼーヴァ様を返す。けれど、もしあなたの料理が選ばれなかった場合は、巫女の座を返上してもらう──彼女はそんな条件を出してきて──」
シェイラの言葉を遮るように、激怒したメーナが叫ぶ。
「あの女! このわたくしに、そんなバカげた条件を突きつけて来るだなんて──一体どこまで人をコケにするつもりなの!?」
「でも──」
頬に手を当てたシェイラが、考え込むような仕草をする。
「何よ?!」
「相手は、料理勝負に勝てば、あの店の主である〈金運と財運の神〉タピネ様に誓って約束は守る、と言っているのだから、ここはぐっと我慢して、彼女の気が変わらないうちに、条件を飲んで取引に応じた方が良いのではないかしら?」
「まさか、このわたくしに、あの女の言いなりになれって言うの?!」
「いいえ、そうではないわ。だって彼女は、あなたが優れた料理の腕前を持っていることを知らないのだもの。それなら、この条件を逆手に取ってしまえばいいのよ」
「つまり、料理に自信のないわたくしが渋々条件を飲んだように見せかけて、自分の腕前を過信しているあの女を油断させればいいってことね」
「そして、料理勝負であなたが余すところなく、その素晴らしい腕前を披露すれば──」
シェイラが水を向けると、メーナが勝ち誇るようにニヤリと笑った。
「あの女はバカみたいに驚いて真っ青になるという訳ね! ふふ、気に入ったわ! そういうことなら、条件に乗ってやるわ!」
今までずっと見下してきた従順な姉が、まさか自分を騙すとは夢にも思わないメーナは、こうしてまんまと策略にはまったのだった。
わりとノリノリで演技するシェイラ(#^.^#)




