127話 作戦開始!
「ちょ、頭なんて下げなくていいよ! それよりも、作戦を成功させるためには、虎さんやシェイラさんにも協力してもらうことになるんだけど、それは構わないかな?」
『ああ、もちろん構わないぞ! そもそも、料理長たちを帝国のゴタゴタに巻き込んでしまったのは俺たちなのだから、協力するのは当然の事だ! で、俺は何をすればいいんだ? 何でも言ってくれ!』
「しずく様、どうか私にも、何でもお申し付けください!」
「もちろん、ぽぴーたちも、手伝うきゅる!」
「あのわがままなお姫様を、やっつけるきゅる!」
「しずくちゃんを馬鹿にしたことを、ももは許さないきゅる!」
ゼーヴァだけでなく、シェイラやシュクレドラゴンたちにも、やる気がみなぎっているようだ。彼らのうしろでは、毛玉たちがぽんぽんと跳ね回っている。
「それじゃあ、一人ずつ、お願いしたいことを説明していくね!」
そう言って、しずくは皆の顔を見回すと、作戦の段取りとそれぞれの役割について説明し始めた。
「本当にごめんね。虎さんとシェイラさんには、かなり無茶振りしてるな、っていう自覚があるんだけど」
『ふん。料理長は、この俺を誰だと思っているのだ。ターラージャ帝国の守護神、〈風雷の神〉ゼーヴァの手にかかれば、こんな事は容易い事だ!』
「メーナの性格は熟知していますし、これでも皇女ですから駆け引きには慣れております。ですから、どうか安心してお任せください!」
難しい頼みごとをしてしまった、と心配しているしずくをよそに、風雷の神と巫女は不敵に笑っている。見たところノリノリで、楽しんでさえいるようだ。
その後、〈喫茶シルエ〉の面々に見送られ、一人で馬を駆ってシグベルムに戻ったシェイラは、しずくに告げた言葉通りに、自分に与えられた役割を完璧にこなしてみせた。
一方、夜陰に紛れて風魔法でいずこかへと飛び立って行ったゼーヴァも、任務をきっちりと果たした上で、夜が明けないうちに帰還した。
その間、しずくたちも作戦の準備で大忙しとなり、なんとか全ての手配を終えたあとは、黒い毛玉の睡眠魔法で仮眠をとり、光る毛玉の治癒魔法で疲れを癒してもらうことで体調を万全に整えた。
そして翌日。
しずくたちが待ち構える中で、開店時間の十時ぴったりにやって来た皇女メーナは、顔を真っ赤にしながら激怒していた。
「やっぱり、わたくしを騙していたのね! この性悪猫!」
「性悪猫って……。昼のメロドラマみたいなセリフだなあ……」
「めろどら……? さては、また適当な事を言って、わたくしを煙に巻こうとしているのね!?」
「そんなつもりは全くないんだけどな……。まあ、とりあえず中へどうぞ」
しずくは小さくため息をつくと、憤怒の表情をしたメーナと、彼女のお気に入りの護衛であるウルガ、俯いたままのシェイラの三人を招き入れた。
彼らを案内しながら、ふと窓の外を見ると、店の外にずらりと並ぶ護衛や従者たち全員が、険悪な顔つきでしずくを睨んでいた。
彼らがこんなにも怒っているのには、もちろん理由があった。




