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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第三章 腹ペコの虎と起死回生のカレーライス

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122話 捻じ曲げられた神託

「あの子──メーナは、私が伝えたゼーヴァ様からの神託を、自分に都合のいいように捻じ曲げて伝えるようになったのです」


 今にも泣き出しそうな顔で、シェイラはそう語った。


「たとえば、水害が起こる恐れがある地域をゼーヴァ様が教えてくださっても、その地域が皇后様の派閥(はばつ)と敵対する一派が治める土地であった場合、わざと伝えずに何の関係もない話にすり替えてしまうのです」

「えっ? でも、そんなことをしたら、虎さんの──ゼーヴァ様の信用に関わるのでは?」

『料理長、急にかしこまる必要はないぞ。俺の事は今まで通りの呼び方で構わない』

「んんっ、じゃあ遠慮なく。今の話だけど、もしメーナ皇女が神託の内容を故意に()じ曲げ続けたら、虎さんの神託に対する信用が失われて、守護神としての立場が危うくなるのでは?」

『ああ。その通りだ。だが、メーナが犯した罪はこれだけではなかったのだ』


 信じがたいことに、メーナは、最も親しく接しているはずの自分がゼーヴァの声を聞き取れないことに苛立つようになり、実際にはありもしない神託を勝手に捏造(ねつぞう)して、好き勝手に振る舞い出したのだという。


「ええ……。神様の言葉を(かた)るだなんて、なんて罰当たりな……」

『あの女は俺からの神託だと偽り、俺と二人きりで住むための宮殿を建てさせようとしたのだ。俺は奴の事など、ひげの先ほども気にかけていないというのに!』


 今までは、仕方なくメーナの好き勝手にさせてきたゼーヴァも、さすがにこれらの所業を許すことはできなかった。


『俺は、あの女が犯した許しがたい罪の数々を、俺自らが皆の前で言葉を発して糾弾することで、奴を巫女の座から引きずり下ろし、排除しようと考えた。奴が増長して油断している今なら、シェイラの身に危険が及ぶ前に全てをやりおおせることができる──あの時はそう確信していたのだ』

「いよいよ反撃きゅるか!」

「あのわがまま姫を、とっちめるきゅるね!」

「作戦は上手くいったきゅるか?」


 ワクワクしながら前のめりになったシュクレドラゴンたちに、しずくが水を差す。


「虎さんが帝国から逃げ出して、巫女を名乗るメーナ皇女が追って来たと言うことは、当然その計画は失敗したってことだよね?」

『……うむ。神として非常に情けない限りだが、料理長の言う通りだ。ここぞという時に、俺はしくじったのだ』


 巨大な白虎は、体を丸めてしょんぼりと項垂(うなだ)れた。


「しくじったって、一体何があったの?」

『神の威光(いこう)を示そうと、風雷(ふうらい)の権能を使おうとした瞬間、急に腰砕けになったのだ』

「……はい?」


 言っている意味が全くわからず、しずくたちの目が点になる。


『実は、このひと月あまり、毎日メーナの手料理を食わされるようになってから、ずっと体の具合が悪くてな。無理に神力(しんりょく)を使おうとしたら、全身から力が抜けて変化が解けてしまったのだ』

「変化が解けたってことは──じゃあやっぱり、今の姿が虎さん本来の姿なんだね」

『ああ、その通りだ。他国から来た皇后と娘であるメーナだけは、ヒト族の青年を模した姿が、俺本来の姿だと思い込んでいるがな』


 ターラージャ帝国の皇族や神殿の高位神官たちは、ゼーヴァに初めて目通りする際に、本来の姿を見せてもらえるらしい。だが、現皇后とメーナのように、ゼーヴァが気に入らない者は目通りすることすら叶わないそうだ。


『気に食わない奴に、俺本来の姿で顕現(けんげん)してやる必要などないからな!』


 シグベルムの住人に望まれれば、喜んで姿を見せるヴィリオーサとは大違いである。


 どうやら、同じ守護神であっても、国民との接し方には大きな違いがあるようだ。


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