↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第三章 腹ペコの虎と起死回生のカレーライス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
118/167

118話 お爺ちゃんじゃなかった!

「あのわがまま姫が戻ってきたきゅるか?!」

「でも、お外に馬車は止まってないきゅるよ?」

「外にお馬さんが一頭いるだけきゅる」


 警戒する毛玉たちに付き添われたしずくが、「どちらさまですか?」と、ドアの外に声をかけると、返事をしたのは意外な人物だった。


「あの、私は、先程までこちらに伺っていたメーナの姉で、ターラージャ帝国第一皇女のシェイラ・リル・ターラージャと申します。皆様にどうしてもお話したいことがあって、宿に戻る途中で引き返して参りました。あまりお時間は取らせませんので、どうか店に私を入れて頂けないでしょうか?」

「シェイラ皇女?!」


 驚いたしずくが毛玉たちを見ると、「入れても大丈夫」とでも言うように、チカチカと光っている。


「わかりました。今すぐに開けますね」

「! ありがとうございます」


 開いたドア越しにしずくの姿を見たシェイラは、ほっとしたような顔をして、深々と頭を下げた。


「それにしても、あのメーナ皇女が、よく引き返すことを許しましたね」

「ゼーヴァ様の神力と相性が良い私なら、瞑想(めいそう)の儀を()り行うことで行方を捜せるかもしれない、と説き伏せました」

「その、瞑想の儀というのは?」

「一人きりで静かに瞑想することで、ゼーヴァ様の神気(しんき)を感じ取り、対話を試みる儀式のことです──ですが、儀式を行うというのは、ここへ戻るための単なる口実にすぎません」

「もしかして、シェイラさんはゼーヴァ様の行方について、何か思い当たることがあるのですか?」


 しずくがシュクレドラゴンたちと一緒になって彼女を見つめると、美しいオレンジ色の目を持つ虎人族の女性は、柔らかな微笑みを浮かべながらうなずいた。


「ゼーヴァ様はこの店にいらっしゃいます。中に入れて頂いた瞬間、確かにあのお方の神気を感じましたから」


 驚くしずくたちの頭越しに視線を向けたシェイラは、帝国の皇女らしい完璧な所作でうやうやしくお辞儀をした。


「ゼーヴァ様がご無事でいらっしゃったことを知り、心から安堵(あんど)いたしました。先程は私の妹メーナとその取り巻きたちが、無礼な態度でお心を(わずら)わせてしまいました。彼女の代わりに、姉である私が心から謝罪いたします。どのような罰でもお受けしますので、どうかその寛大なお心でお許しくださいますよう──」


 そう語り掛ける彼女の視線の先にいたのは、元の巨大な姿に戻っていた白虎だった。




「虎さんが、ゼーヴァ様だったきゅるか?!」

「でもあのお姫様は、ゼーヴァ様は若い男の人の姿をしてるって言ってたきゅる。虎さんはそうじゃないきゅるよ?」

「ねりねの言う通りきゅる。虎さんはヨボヨボのお爺ちゃんきゅる。足腰が弱っていたし、歯だってボロボロだったきゅる」


 ポピーやネリネ、モモたちが騒いでいると、いかにも心外そうな響きを持つ若々しい声がした。


『確かに歯も毛並みもボロボロで、足腰もガタガタだったが、俺は断じてお爺ちゃんなどではないぞ?』

「と、虎さんが、しゃべったきゅる!!」


 飛び上がったポピーが、しずくの足にしがみつく。ネリネとモモは、しずくの背後に隠れて震えている。


『おっと済まん! どうやら、急に話しかけたせいで、驚かせてしまったようだ』

「やっぱり虎さんが、メーナ皇女が捜していた〈風雷の神〉だったの?」


 しずくに問いかけられた白虎は、薄水色の目を細めてゆっくりとうなずいた。

 周囲にふわふわと浮かぶ毛玉たちが、弱々しく点滅しているのを見て、しずくの足にしがみついたままのポピーが戸惑っている。


「ふわふわさんたち、黙っていてごめんねって謝ってるきゅる」

「そっか。同じ神様なら、お互い正体に気づいていてもおかしくないもんね」


 苦笑するしずくに、白虎が慌てて説明する。


『どうかその毛玉たちを責めないでやってくれ。彼らがお前たちに俺の正体を明かそうとしていたのを、俺がもう少しだけ待ってほしいと頼み込んだのだ』

「どうしてそんなことを?」

『それは、俺が元の神力を取り戻すまでの間、帝国から逃げ出して来たことを知られたくなかったからだ』


 大きな鼻にしわをよせた白虎は、重々しい声でそう言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。