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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第三章 腹ペコの虎と起死回生のカレーライス

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115/167

115話 マスター、名前をばらされる

「マスターを知っているんですか?」


 キョトンとしているしずくに苛立(いらだ)ったように、メーナは甲高(かんだか)い声を上げた。


「あなた、店員のくせに、自分の雇い主がどういう存在なのかも知らないの?!」

「はあ」

「羽が生えた白蛇と言ったら、〈()()()()()()()()()()()()の事に決まっているじゃないの!」

「〈金運と財運の神〉? タピネ様?」

「嘘でしょ? あなた、まさかタピネ様の事を知らないの?!」



 ──思いもよらぬ形で、マスターの正体が判明してしまった。



 マスターはしきりに隠したがっていたようなのだが、こんな形で知ってしまって良かったのだろうか?

 しずくが「うーん」と、眉を寄せて考え込んでいると、メーナが小馬鹿にしたようにせせら笑う。


「お前は、一体どこの田舎から出て来たの? タピネ様以外に、羽の生えた蛇なんてこの世には存在しないのだから、たとえ幼い子供でも、一目見ればタピネ様だと気付くわよ?」

「貴様、見目は良いが、耳や尻尾がないところをみると獣人ではないな。さては、夜人族かエルフ族の出来損ないか? お前のような半端者をわざわざお雇いになるとは、タピネ様は本当に慈悲深くていらっしゃる」


 しずくの事を悪しざまに言われたシュクレドラゴンたちが(いきどお)る。


「こいつらむかつくきゅる!」

「ぽぴー、気持ちはわかるけど落ち着くきゅる。しずくちゃんの正体は秘密にするって、あるじ様から言われているきゅる」

「ねりねの言う通りきゅる。それに、しずくちゃんは悪口を言われたのに、ちっとも気にしていないみたいきゅる」


 モモが言った通り、しずくはこの時、うわの空で全く別の事を考えていた。


(マスターって、結構有名な神様だったんだなあ。でも、子供でも一目見ればわかるということは、神官であるクアウラさんやワトルさんは、とっくにマスターの正体に気付いていたってことだよね。だけど、マスターが本当の名前を私に明かしていないことからいろいろと察して、あえて()()()()()と呼んでいてくれたんだろうな)


 しずくは、シグベルムの神官であるクアウラたちの優秀さに感心する一方で、(マスター)の意図を少しも推し量ろうとせずに、簡単に名を明かしてしまったメーナを、ダメ巫女(ポンコツ)認定していた。

 まさか、自分が愚か者扱いされているとは夢にも思わないメーナは、興奮した様子でしきりに店内を見回している。


「それで、タピネ様はどこにいらっしゃるの? 〈風雷の神〉であるゼーヴァ様の巫女として、ぜひともご挨拶しておかないと!」

「マスターなら、今は不在です。ところで、メーナ皇女はマスターが蛇でも怖がらないんですね。凄く意外です」

「は? そこらにいる蛇とタピネ様を一緒にしないでくれるかしら! あんなに愛らしい姿のタピネ様を、このわたくしが怖がるはずないでしょ!」

「なんだ、メーナ皇女も、あのマスターのまるっこい姿のかわいらしさが、ちゃんとわかっているのですね! 少しだけ見直しました!」

「はあ? なんで上から目線なのよ!」


 ムっとした顔をしたメーナが、嬉しそうなしずくを(にら)みつけた。


自分のあずかり知らぬところで流れ弾に当たるマスター……


お読みくださりありがとうございます!

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