114話 二人の皇女
「しずくちゃんの言う通りきゅる! この人たち、ずっと失礼なことばかり言ってるきゅる!」
「こんな人たち、早く小鳥さん──〈白い死神〉さんに頼んで、追い出してもらったほうがいいきゅるよ!」
「そうきゅる! きっとあるじ様だって、許してくれるきゅる!」
〈白い死神〉という言葉を聞いた途端に、メーナたちの顔色が悪くなる。
「わ、わかったわよ! ちゃんと名乗ってやるから、そんな恐ろしい化物は呼ばないでちょうだい! わたくしの名は、メーナ・リル・ターラージャ。ターラージャ帝国の第二皇女で〈風雷の神〉であるゼーヴァ様を崇める神殿の巫女を務めているわ。そして、この者は護衛のウルガ」
「そうでしたか。では、そちらの女性は?」
「この者は、シェイラ・リル・ターラージャ。わたくしの腹違いの姉よ。今は侍女として仕えてもらっているわ」
「ん? メーナ皇女のお姉さんということは、シェイラさんも皇女様なのですよね? それなのに、どうして妹であるあなたの側仕えをしているのですか?」
訝しむしずくに、メーナが偉そうに胸を張りながら説明する。
「同じ皇女でも、わたくしの母は皇后で、シェイラの母は身分が低い側室に過ぎないわ。強い後ろ盾もなく、美しさと賢さを兼ね備えたわたくしと違って、何の取り柄もないこの姉は、皇族に利益をもたらす貴族や他国の王族に嫁ぐ事ぐらいでしか使い道がないのだけれど、この貧相な見た目のせいでどこからも声がかからなくて、とても肩身の狭い思いをしているの」
腹違いの姉を、モノ扱いしながら平気で蔑むメーナに、護衛のウルガが偉ぶった態度で言い添える。
「そのことを不憫に思ったメーナ様が、他の者から虐げられぬように、こうしてわざわざ身の回りの世話を任せてやっているのだ。これで頭の悪い貴様にもわかっただろう。メーナ様はただお美しいだけでなく、誰よりもお優しいお方なのだ!」
主従そろって残念な性格をしているなあ、としずくが鼻白みながらシェイラに目を向けると、彼女は悲しそうな顔で俯いていた。
「さあ、こうしてわたくしが名乗ってやったのだから、お前たちも自分とこの店について教えなさい!」
しずくは、やれやれとため息をつくと、招かれざる客に口を開いた。
「私の名は、水瀬しずく。この〈喫茶シルエ〉の店員で、厨房を任されています。この子たちは、シュクレドラゴンという種族で、名前は左からポピー、ネリネ、モモ。彼らはこの店の優秀な給仕係です」
しずくが作り笑いを浮かべながら淡々と説明していると、メーナが怪訝な顔をした。
「ちょっと待って。あなたは店長ではないの?」
「違いますよ。この店の店長──マスターは、羽を生やした、全体的に丸っこい感じのかわいい白蛇で、私はただの雇われ店員です」
「待って、羽のある白蛇ですって? それは本当なの?!」
何故かメーナが驚いて立ち上がる。護衛のウルガと彼女の姉のシェイラも驚愕して目を見開いている。
しずくは理由がわからずに、ぱちぱちと目を瞬かせた。




