113話 無礼なのはどっち?
「な、何故なの?! この者たちには魔法効果無効の護符を持たせていたのに、どうしてこんな──」
「つまらない悪だくみをしたって無駄ですよ。なにせこの店は、たくさんの頼もしい神様に守られているんですから!」
「か、神ですって? まさか、さっきから浮かんでいる、そのホコリのような貧相な物体が、神だとでも言うんですの?!」
「失礼なことを言わないで! ふわふわさんや黒ふわさんは、こんなにかわいらしい見た目だけれど、いざという時には凄い力を発揮してくれる、とっても頼りになる神様なんですからね!」
ホコリ呼ばわりされて、心なしか萎れていた毛玉たちは、メーナに反論したしずくが自分たちの事をベタ褒めするのを聞いて、しきりに光って喜んでいた。
一方、しずくの勢いに気圧されたメーナは、悔しそうな顔で黙り込んでいる。
「──とにかく、今度ふわふわさんたちに失礼な態度を取ったら、すぐに出て行ってもらいますから。くれぐれも言動には気を付けてくださいね!」
しずくはにっこり笑ってそう言うと、招かれざる客たちに椅子を勧めた。
最初に、悔しそうな顔のメーナが護衛の若い男性に椅子を引かれて席に着くと、怒りの表情を隠そうともしない護衛と、戸惑った様子の側仕えの女性とが、順番に腰を下ろしていった。
最後に着席した側仕えの女性は、何のためらいもなく主と同じテーブルに着いた護衛を、困惑した様子でチラチラと盗み見ている。
──まあ、そうだよね。護衛だったら、主人の後ろに立って警戒するのが普通だもんね。
メーナや彼女の護衛、黒ふわさんの魔法でだらしなく寝こけている虎人族たちとは異なり、この側仕えの女性だけは至極真っ当な精神の持ち主であるようだ。
豊かに波打つ鮮やかなひまわり色の髪に、美しいオレンジ色の瞳を持つ年若い女性は、よく見ると、身に纏っている地味な衣装にはそぐわない華やかな顔立ちをしている。
顔色の悪さとこけた頬、目の下の隈さえなければ、メーナ以上に美しい女性であることは間違いない。
きっと、普段からわがままな姫の世話を焼かされて、ひどく苦労しているのだろうなあ、としずくが同情のまなざしを向けていると、そんな彼女の態度が癇に障ったらしく、苛立ったメーナが噛みついてきた。
「ちょっと! そんなつまらない者を気にかける暇があるなら、さっさとわたくしにゼーヴァ様を返しなさい!」
相変わらず失礼な物言いをする虎人族の姫に、しずくは毅然とした態度で言い返す。
「名乗りもしない人から、命令されたくありません」
「こいつ、メーナ様になんて無礼な物言いを!」
「だいたい、無礼なのはあなたたちの方でしょう?」
呆れ顔のしずくが、気色ばんで立ち上がりかけた護衛に言い放つと、それまで黙って見ていたシュクレドラゴンたちが、口々に文句を言い始めた。




