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神様の遺言状 ~世界に一軒だけの喫茶店はお客様の悩み事も解決いたします~  作者: はんぺん
第三章 腹ペコの虎と起死回生のカレーライス

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112/167

112話 本当に効果てきめんだった

「そこの女、さっさとこのわたくしを店に入れなさい! そして一刻も早くゼーヴァ様を解放するのです!」

「メーナ様のご命令に従い、土下座して許しを請うなら、貴様らの犯した罪は大目に見てやるぞ!」

「おい、聞いているのか?! われわれを無視するな!」


 うるさく(わめ)く虎人族たちをよそに、振り返って店内の時計を確認したしずくは、長針がそろそろ昼の十二時を指そうとしているのを見ると、思いっきり眉を寄せた。

 窓の外を見ると、爽やかな風が吹き抜ける草原と、雲一つなく晴れ渡った青空が広がっている。


(今日は、お天気が良くて暖かいから、皆でピクニックでもしながら昼ごはんを食べるつもりだったのに)


 だが、その素敵な計画は、突然店に押しかけて来たこの不愉快な集団のせいで、諦めるしかないようだ。


「はあ。このまま放っておいても帰ってくれそうにないし、とりあえず事情だけでも聞いてみようか?」

「でも、きっとあのお姫様は、素直に話なんて聞かないきゅるよ?」

「そうかもしれないけれど、どうして帝国を守護する神様がこの店に居ると思ったのか、その理由だけは聞いておきたいからね」


 しずくは光る毛玉や黒い毛玉に何事(なにごと)かを相談した後、メーナと呼ばれていた少女に向かって窓越しに声をかけた。


「とりあえず話は聞きますけど、店に入るのは三人だけです! もし、人選が終わったら声をかけてくださいね」

「な!? このわたくしに条件を突きつけるだなんて、お前は自分を何様だと思っているの? 三人だけと言わず、全員を中に入れなさい!」

「そうですか。条件がのめないのなら、店に入ることは諦めてもらうしかないですね。そこに居座るのは勝手ですけど、もしこの店の常連である〈白い死神〉さんが来たら()()()()()()()()()と思うので、それだけは覚悟しておいてくださいね」

「ひっ! 〈白い死神〉ですって?! それは、あのデノグラーラ迷宮をたった一日で崩壊させた正体不明の化物の名前じゃないの!」


 毛玉たちから助言された通りに〈白い死神〉の名前を出した途端、メーナが悲鳴を上げ、あんなにも騒がしかった虎人族たちが一斉に静まり返った。


(うわ、本当に効果てきめんだった! だけど、名前を出しただけでこんなにも怯えるなんて……)


 迷宮を崩壊させただなんて、小鳥さんは一体どれだけ大暴れしたんだろう? と、しずくが遠い目をしていると、先程とは打って変わって勢いを失ったメーナが、顔をこわばらせながら話しかけて来た。


「わ、わかりましたわ。では、店に入るのは、わたくしと側仕えの者と護衛の三人だけということにします。これならいいですわよね?」

「ええ。いいですよ。じゃあ、今ドアを開けますから入口に回ってください」


 三人が店の入口に向かうのを見たしずくは、光る毛玉たちに声をかけた。


「ふわふわさん、今だけ結界を解除してもらえます?」


 宙に浮かんだ毛玉たちが返事をするようにチカチカ光ると、ドアベルを鳴らしながらメーナたちが店に入って来た。

 だが、次の瞬間、黙って様子を伺ってた従者たちが、「今だ!」と叫びながら、一斉に店に押し入って来ようとした。


「あ! やっぱり約束を破ったきゅるね!」

「どうせこんなことだろうと思ったきゅる!」

「つくづくどうしようもない人たちきゅる!」


 呆れているシュクレドラゴンたちの目の前で、無理に押し入ろうとした虎人族たちがバタバタと倒れていく。


 こうなることを予想していたしずくに頼まれ、あらかじめドアのそばで待機していた黒い毛玉が、彼らを睡眠魔法で眠らせたのだ。


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