106話 青い小鳥たちの来襲
「うわっ! どうしたの、これ!?」
店内にはたくさんの青い小鳥が詰めかけていて、まるでスーパーの特売セールのように賑わっていた。
「あ! しずくちゃんが来てくれたきゅる!」
「ポピー、これって一体どういう状況?」
「ねりねやごーちゃんたちと、外のお花にお水をあげてたら、いきなり鳥さんたちが押しかけて来たきゅるよ!」
「こうなったのは、ねりねのせいきゅる。この青い小鳥さんたち、このあいだ小鳥さんを迎えに来てたきゅる。だから、店に入れても大丈夫って、ぽぴーに言ってしまったきゅる……」
「そしたら、〈りりちゃん印のクリームチーズケーキ〉を寄こせって脅してきたきゅる!」
しょんぼりした顔で説明するネリネに、怒ったモモが言い添える。
すると、テーブルに乗った青い小鳥たちが一斉に騒ぎ出した。
『われらは、いだいなる〈しろいしにがみ〉のしゃていなり!』
『でんごんをききたければ、いまおまえたちがつくっているけーきをよこすのだ!』
『できたてじゃなくてもゆるす!』
『いちわにつき、いっこずつがのぞましい!』
『ただし、あにきにはないしょで!』
要するに、彼らは小鳥さんこと〈白い死神〉の舎弟であり、ここへは何らかの伝言を届けにやって来たらしい。それなのに、その伝言を聞きたいのなら、〈りりちゃん印のクリームチーズケーキ〉を寄こせと強請っているのだ。
(小鳥さん自身がいなくても、やっぱりトラブルは持ち込まれるんだね……)
ぴーちくぱーちくと姦しい青い小鳥たちを前に、しずくは遠い目をした。
『りょうりちょう、きいているのか?』
「はいはい。ちゃんと聞いていますよー。でも、そんなに失礼な態度を取るなら、とてもじゃないけどケーキなんてあげられませんけどね」
『?!』
『りょうりちょうは、でんごんをきけなくてもいいのか?!』
驚愕した青い小鳥たちは、ぴたりと騒ぐのを止めた。しずくは、そんな彼らを呆れ顔で見た。
「私はそれでも構わないよ。でも、そうなった場合、困るのは伝言役を任された君たちの方だよね? もし、小鳥さんがこのことを知ったら怒るんじゃないかなあ?」
『はっ! たしかにそうだ!』
『りょうりちょう、なんてひきょうな!』
「失礼な! むしろ卑怯な真似をしているのは、君たちのほうでしょ。これ以上悪さをするなら、ホントに小鳥さんに言いつけちゃうよ? それでもいいの?」
『!!』
しずくに言い負かされた青い小鳥たちは、しょげかえった様子で項垂れた。
そんな彼らから伝言を聞き出すと、なんと依頼主はマスターで、その内容とは「会議中に予想外の問題が起こったので、もうしばらくの間は店に戻れない」というものだった。
ちなみに、命に関わるような問題ではない、という補足を聞き、しずくたちはほっとして胸を撫で下ろす。
この青い小鳥たちは、会議が長引きそうだと知って困っていたマスターに、店への伝言なら任せて欲しいと自ら申し出たそうだ。
「でも、ただの親切じゃなくて、お礼のケーキ目当てだったきゅるね」
『われらも、あにきがぜっさんしているケーキを、たべてみたかったのだ……』
呆れて半目になっているポピーの前で、青い小鳥が項垂れる。
「小鳥さんは、頻繁にケーキを持ち帰っているのに、一度もおすそ分けしてくれないの?」
「そんなことはない。さいしょに、あにきがけーきをもちかえって、みんなにわけたとき、ほかのやつのぶんまで、よこどりしようとしたせいで、おれたちだけ、けーきをもらえなかった」
「つまり、それって自業自得じゃないの!」
「いばっていうことじゃないきゅる!」
「ぽぴーは食いしん坊だけど、よこどりなんてしないきゅるよ?」
「ももだけでなく、ふわふわさんたちも、呆れているきゅる……」
光る毛玉と黒い毛玉がふよふよと浮かぶ店内で、しずくたちから一斉に突っ込まれた青い小鳥たちは、ますます体を小さくして項垂れていた。




