10話 この世界の通貨
「凄い! あっという間に出来ちゃた!」
メニュー表はA4サイズの冊子になっており、表紙には明るいクリーム色の合皮が使われている。中身のページも、表紙と同様に水に濡れても平気な素材で作られており、しずくが描いた料理のイラストや説明が忠実に再現されていた。
「飲み物や料理の価格は、こちらの世界の物価を参考にして決めました」
「この世界の通貨は、メルダっていうんだね」
「あちらの世界とは違って、こちらではメルダが全世界共通の通貨単位です。小銅貨一枚が十メルダで、だいたい十円くらいだと思ってください。他には、百メルダが銅貨一枚、千メルダが小銀貨一枚、一万メルダが銀貨一枚、十万メルダが金貨一枚でやり取りされています」
「硬貨だけで紙幣はないんだね」
「ええ。だから、まとまったお金を持ち歩くような場合は、重くて大変みたいです」
異世界の通貨事情についてざっくりと学んで一息ついた後、しずくはメニューに載せた料理の下ごしらえに取り掛かった。
まずはデザート類を作り上げて、貯蔵庫の中に備え付けられた大型冷蔵庫の中で冷やしておく。これらは明日の朝になったら、必要な数だけカウンターの端に据えた冷蔵ショーケースの中に入れて、客に提供していく予定である。
「ごめん、マスター。久しぶりにデザート作りをしたら、つい楽しくて作りすぎちゃった。もしかしたら、夕食代わりに食べる羽目になるかも……」
「大丈夫です。そんな心配はいりませんよ。おそらくデザートは余らないでしょうからね」
「えっ? こんなにたくさん作ったのに? マスターの知り合いって、みんな甘党なの?」
生暖かい笑みを浮かべる白蛇に小首を傾げつつ、どうにか料理の下準備を終えたしずくは、凝った肩をぐるぐると回しながら椅子に座り込んだ。
「これで、今できることは全てやり終わったと思う。少し遅くなっちゃったけど、さっき試作したオムライスで晩御飯にしようよ」
「ええ、ぜひそうしましょう。しずくさん、今日は本当にお疲れさまでした」
一人と一匹で食べたオムライスは、必死に働いて空腹だったせいか、この上なく美味しく感じられた。
マスターも、「ああ、何て美味しいんだろう……」と、しきりに感激しながら夢中で頬張っている。
(牙はないけど、丸飲みしないできちんと噛んで味わってるんだ……)
妙なことに感心しながら、しずくは嬉しそうに顔を綻ばせていた。
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