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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第四章 廻り出す運命
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第98話 結界の破壊

(シオン!エリー!起きて!!皆も!!)


 まだ外が明るくなる前の時間にノームにシオンは起こされた。

「ノーム?どうした?」

 シオンは目を擦りながら、ノームに尋ねた。


(外出て!早く!!)


 シオンは言われるがまま、テントの外へ出た。

「ん?どうした、シオン」

 外で見張りをしていたエストがシオンに気付いた。

「いや、ノームに外・・に・・・」

 シオンは外に出てあるものを見て、言葉が途中止まってしまった。

「ノームがどうした?」

 エストはシオンが固まって見ている方向を見た。

「・・・特に変わりはないが」

 シオンが見ていたのはバレスの城や町がある方向だ。

 だが、エストには今もまだ結界は普通に機能しているように見えた。

「違う・・・何だ、あれは・・・まさか瘴気?」

 シオンの眼には明るくなってきた空と、結界の上に不自然に黒い靄がかかっているのが見えていた。


「ふぁー・・・なにかあったの?」

「んー?なんなのですか?」

「・・・眠いです」

 そこへリィナ、レィナ、エリーが起きてくる。

 三人もノームに起こされたようで、まだ眠そうだ。

「「「シオン君(様)?」」」

 三人は声を掛けても反応しないシオンを声をそろえて呼んだ。

「・・・・・・」

 それでもシオンは反応がなかった。

 三人もシオンが見ている方向を見てみた。

「なに・・・あれ」

「瘴気にしてはおかしいですね」

「模様?」

 そう、最後エリーが言ったように結界の上の瘴気らしき靄は、何かの模様のような奇妙な形をしていたのだ。

「っ!リィナ!レィナ!障壁張って!!全力で!!!」

「「は、はい!!」」

 シオンの突然の命令に二人は寝起きにも関わらず、できる限り全力で障壁を全方位に張った。

 その直後、とてつもなく大きな音がした後、黒い波動がシオン達がいる場所を襲ったのだった。



 --------------------------



「ベッフェル、中から手伝わなくていいのか?」

 ギリアムは移動しながら訪ねた。

「ベッフェル様、以前外と中から一緒に攻撃しないとっておっしゃっていませんでしたか?」

 アミラも付き従いながら共に移動している。

「何を馬鹿なことを言っているのですか?あそこにいたら自分達が死んでしまうかもしれないのですよ」

 ベッフェルはイマーゴが合図をした後、彼が何をしようとしているのかを確認してからの行動だった。

「あれは彼オリジナルの多重乗化魔法陣です。何枚張ったか分からないですが十枚は少なくともありました。単純に計算しても威力が二千倍以上に膨れ上がります」

「「二千倍!?」」

 流石にその数字にギリアムとアミラも叫ばずにはいられなかった。

「イマーゴは魔人の中でも出力や瘴気の量は少ない。ですが、二千倍以上は強化されたら主でさえ防ぎられるかどうか」

「「・・・・・・」」

 その説明に二人は絶句してしまった。


「やはりあれはイマーゴの物か」

 城から離れた場所にある地下空間に足を運んだら先客がいた。

「アスラも避難してきましたか」

「俺もまだ死にたくはない」

「でしょうね。今はイマーゴに任せてお互い守るために障壁でも張っておきましょうか」

 そう言ってベッフェル達はその地下空間を守るように障壁を張った。



 --------------------------


「さて、あいつらに避難は終わった頃合いか」

 イマーゴは今、自分で時間をかけて作った多重乗化魔法陣の上で待機していた。

「これなら瘴気が少ない俺でもこんな結界を破壊する威力を出すことができる」

 そう言ってイマーゴは己が出し切れる瘴気を両手を突き出して集め始める。

 それはベッフェルに比べると些細な量の瘴気だ。

「いくぜ!!」

 イマーゴが瘴気を圧縮して打ち出した瘴気の球は一枚目の魔法陣を通過すると二倍ぐらいの大きさになる。

 それを十数回繰り返すと城を一つを丸ごと覆う大きさにまでなる。

 瘴気の球はあまりにも威力が上がり過ぎて、周りに黒い雷のようなものを纏い、結界へと落ちていった。


 そして、結界に当たった瞬間、数十キロ先にまで届く衝撃波を出した。そして、見事に結界の破壊に成功するのだった。



 --------------------------


「な!なんだ!?今のは」

 エストは近くの岩に掴まっていた。

 シオンは自分の身体でエリーを庇い、両手でリィナとレィナを支えていた。

 リィナとレィナは障壁をなんとか張り続けたが、衝撃波は障壁を貫通して吹き飛ばされそうになったのだ。

 シオンはそれを支えていた形になる。


「なななななんです!?」

 テントの中から寝ていたフィーが飛び出してきた。

 髪が少し乱れているのは崩れたテントの中でめちゃくちゃにされたせいだろう。

 テントも衝撃波で一部が破壊されていた。

「の、ノームは!?」

 エリーがノームの姿を探す。


(僕は大丈夫だよ。エリー)


 ノームはいつのまにかエリーの足元に立っていた。

「取り敢えず皆無事だね」

 シオンは周りを見て生存確認を取る。

「はぁ・・・はぁ・・・何・・今の?」

「はぁ・・・ん、すごい力でした」

 リィナとレィナは予想以上の力でかなり消耗していた。

「二人共ありがとう。皆が助かったのは二人のおかげだ」

「えへへ、どういたしまして」

「はい、でも本当にちょっと危なかったです」

 二人はシオンにお礼を言われ微笑んだ。


 皆は今の衝撃の疲れから座り込んで休息を取っていた。

「・・・やはりか」

 エストはバレスの城や町の方角、結界が張られていたはずが無くなっているのを確認して呟いた。

「たぶん外からの攻撃で破壊したんだろうね」

「にしても威力高すぎないか?まだそれなりの距離が離れているのに衝撃波でここまでの威力となると」

「さっき見えていた瘴気で出来た模様、恐らくあれが威力を増加させたんだと思う」

 シオンはそう考えていた。

「今は・・・もうありませんね」

 レィナは先程その模様があった場所を見る。

「連続使用は出来ないみたいだね」

「でも、結界が破壊されたってことは中に閉じ込めていた魔人や瘴魔は」

「外に出ているだろうね」

 シオンはリィナの言葉を継いで話した。

 その事実に少し沈黙が下りる。


「ここでゆっくり休んでいる場合ではないな」

 エストが活を入れるように立ち上がって言った。

「そうだね。むしろこれからその魔人を倒しにいくんだ。向こうからやって来るのなら向かい撃てばいい」

 シオンも気合を入れる。

「私達もまだやれるよ」

「さっきのが連発で来ないのならまだまだ戦えます」

 リィナとレィナも立ち上がった。

「わ、私も頑張ります」

 エリーもそれに続く。

「魔物や瘴魔があの中にいたのなら、すでに動き出している可能性が高い」

 シオンがそう言った時

「シオン!前の方から何か来る!」

 フィーがさっそく魔物か瘴魔の反応を教えて来た。

「この速さから足が速い魔物か空を飛ぶ魔物だ。皆、一点突破で魔人がいる可能性がある城を目指す。それまで残りの魔力やマナに注意して戦っていくよ!」

「ああ!」

「わかった」「わかりました」

「頑張ります」

 シオン達が行動方針を示すと皆もそれに同意した。

 シオン達は魔人との戦いに備えて、極力魔力やマナの消費を抑え、一点突破で魔人がいるであろう城を目指すことにした。



 --------------------------


 ガラガラ!!・・・どぉおおおん!!!」


 崩れた瓦礫が突如、爆発が起こし吹き飛んだ。跡には穴が顔を出していた。

 そしてその中から五人の人影が出てきた。

「ケホっ!ケホッ!」

「大丈夫ですか?アカネ」

 砂煙を吸い込み咳き込むアカネにリシアは声を掛ける。

「さっきのは危なかったな」

「ああ、サラマンダーが教えてくれなかったらまずかった」

 カイとフィルジアは身体についた土埃を払いながら言った。

「今のは何だったのかしら?」

 ルシルは突如襲ってきた衝撃波に対し疑問を持った。

「サラマンダーさんが教えてくれた時、結界の上にいくつか魔法陣のようなものが見えていましたよ」

「・・・増幅系の魔法陣かしら?」

「増幅系ですか?」

 リシアの言葉にルシルが何か思い当たることがあったのか呟いた。

「ええ、滅多に使える人がいない魔法の一つなのだけれど」

「どういう魔法なのだ?ルシル」

 フィルジアも気になったようで話しに入って来る。

「私も使えないから詳しくは分からないけど、魔法の威力や効力を増加させる魔法のことよ。魔法陣にすることもできるらしいから、さっきのはそれを何枚も重ね合わせて放った攻撃じゃないかしら?」

 ルシルは知っている知識を教える。

「実際に使っているところを見たことがあるのか?」

「ええ、一度だけだけどね。あれは確か・・・そう、大型の魔物を狩るときに魔道師団団長の人が何人かと協力して魔法陣を創っていたの」

「何人かとなのか?」

「増幅系の魔法は使用する魔力も多いし、制御もすごく難しいの。上級魔法に増幅魔法を使えば威力は倍以上にまで上がるわ」

「それなら上級魔法をたくさん使った方が効率が良くならない?」

 アカネが疑問に思い聞いてみる。

「上級魔法を使える人間は限られているから大人数では難しい。一人だと上級魔法の同時展開は出来ない。そういった時に上級魔法で倒しきれない魔物とかに一気に片付けるのに向いているのよ」

「なるほど」

 アカネはその説明に理解を示した。


「で、さっきのは結界を壊すために外から攻撃した訳か」

 カイがバレスの方を確認しながら言った。

「結界が壊されたってことは」

「中に閉じ込められていた者が動けるようになったってことだな」

 フィルジアの言葉にアカネは顔を青くした。

「私達だけで魔人に遭遇すると危ないですから、まず兄さん達と合流しましょう」

「それには俺も賛成だ」

 リシアの案にフィルジアは賛成ようだ。

「それならバレスの西寄りに進む形になるのかしら?」

「アルマブルクから兄さん達が来るならそうなりますね」

 皆で話しながら達が来るであろう方向を確認する。


「それじゃあとっとと行こうぜ」

 カイを先頭に皆は進みだすのだった。



 --------------------------



「思っていたよりは被害が少ないですね・・・。彼が威力の調整をしたか、もしくは結界が予想以上に硬かったのか・・・」

 ベッフェルは城や町の被害を見て分析していた。

 城や町の一部は破壊されていたが、まだ綺麗に残っている部分もある。それに、元々ベッフェル達や魔物の襲撃で壊れていた部分もあった。そのせいなのか、被害が目立たないのだった。


「よ!ベッフェル、久しぶりだな」

 そこへイマーゴが空から降りてきた。

「イマーゴ、さっきのあれは私達まで殺そうとしたのかと思いましたよ」

「いや、あの結界はいろいろと厄介だったんでな。ちと時間は掛かったが、一撃で破壊しようと考えたんだ」

 イマーゴがあの準備をするのに半日近くかかっているのだ。


「俺はここで退散させて貰う」

 そこへアスラがやってきた。

「いいのですか?」

「俺の与えられた仕事は小国バレスの破壊だ。もう王は消えた。仕事は完了と見た」

 アスラは的確に言ってくる。

「まぁ、貴方がそれでいいのならいいですけどね。私はここにあるはずの精霊具を探します」

 ベッフェルはベッフェルでやることがあった。


「こっちはこっちで色々・・使えるものがないか探させてもらうわ」

 イマーゴもやることがあるみたいだ。

「そこでベッフェル、助けたお礼として一個だけ瘴玉をくれねーか?小さいのでも構わねぇから」

「・・・まぁ、いいでしょう。今回は助けられましたしね」

「あんがとよ」

 イマーゴは瘴玉を受け取るとそそくさと何処かへ行ってしまった。


「貴様はどうするのだ?ベッフェル」

 取り残されていたギリアムはベッフェルに問いただす。

「言ったでしょう。精霊具を探すと」

「ベッフェル様、精霊具とはなんなのですか?」

 アミラが精霊具について尋ねた。


「精霊具は精霊が宿った物のことですよ。私が探しているのはバレスにあると云われている双剣です。あれは主を封印した地の精霊が宿っているはずです」

「それを破壊するのですか?」

「いえ、破壊はしません。それを使って試したいことがありましてね」

 そう言うベッフェルの口は不気味な笑みを浮かべているのだった。

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