第96話 山中での襲撃
「お前達!あの結界についてやっとわかったぞい!!」
遺跡の中にある研究室から予言者ラケルが飛び出しながら、その場にいたリシア、カイ、フィルジア、ルシル、アカネの5人に対し叫んできた。
リシア達はアカネを連れて遺跡へと帰り、ラケルと合流をしていた。
それから暫くは遺跡を中心にアカネの精霊魔法の修行に明け暮れていた。
因みにカイが持っていた大剣はアカネとサラマンダーが契約したことにより、剣から炎を出す他に、かなりの軽量化がされていた。
サラマンダー曰く、大剣に宿っていた大量の火のマナが契約者を得たことにより、パスが出来たらしくそのマナをサラマンダーが制御できるようになったらしい。
「朝から騒がしいぞ、じいさん」
「それよりあの結界じゃ!」
「何か分かったんですか?」
カイは朝からうるさいと不服だったが、リシアがラケルに何がわかったのかと尋ねた。
「あの結界はバレスに伝わる禁術の結界じゃ!そしてもうすぐその結界も崩壊すると予知夢も見た!」
「ちょっと待ってくれ。ラケル殿、禁術というのは?」
「禁術はそのままの意味じゃ。危険すぎるが故に禁じられた術のことじゃ。あれはバレス王エスカーン様が張った『死の揺り籠』と呼ばれる結界じゃ。中にいる者が全て死に絶えるまで消えないとされているのじゃ」
「え?でも今崩壊するって言ってなかった?」
アカネがラケルに質問すると
「だからその結界を破る者がおるということじゃ!!」
遺跡にラケルの声が響き渡った。
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「う・・ん?」
シオンは暖かさと柔らかさ、そして息苦しさで目が覚めた。
だが、起き上がろうとしても何かに押さえられていて、起き上がることができない。
「・・・シオン君」
「!?」
シオンの頭上からレィナの声が聞こえてきた。
そのことでシオンが自分の今の状況を理解した。
シオンはレィナに頭を抱き締められる形なのだ。
目を凝らすと目の前にあるのはレィナの胸の谷間だ。
服の前のボタンが外れ、レィナの胸の谷間に直に顔をつけていることになる。
息を吸おうとするとレィナの甘い香りが鼻腔を擽る。
その香りにシオンはくらっとしてしまう。
「・・・ダメ」
シオンがもぞもぞと動いたからなのか、レィナが更に抱き締めてきた。
強く抱き締めたからなのか、ブラがずれて胸の先がシオンの顔に押し付けられる。
「んー!?」
シオンは慌てて、レィナを起こそうと両手でレィナの身体を叩こうとする。
だが、慌てて叩こうとしたのが悪かった。
右腕はまだ自由があったのでレィナの腰の辺りを叩けていた。
しかし、左手はレィナの足に挟まれた位置にあったため、おもいっきりレィナの足の付け根の柔らかい場所を叩いてしまう。
「ひゃう!?」
その衝撃でレィナは流石に目を覚ました。
そして、何が起こったか確認をする。
驚いた拍子に腕は緩めたので、シオンの頭は自由になっており、ちょうどレィナの解放された胸の前にあった。
「シオン君!?」
そして、着崩れた胸元は胸が丸出しだったので、慌てて手で隠す。
「レィナ、あの・・・足も緩めてくれると」
シオンは頭を解放されたのにその場から動けなかった。
理由はレィナの足の付け根の際どい場所のまま、太腿に左手が挟まれていたからだ。
「んっ!?」
シオンが少し左手を動かしただけでレィナはびくんと反応した。
「ななななんでそんなところに手を!?」
レィナは慌てて足を緩め、シオンの左手を解放する。
「それはごめん!でもレィナが抱き付いてきてたんだよ!」
「それは・・・その、ごめんなさい」
シオンがそう言うとレィナは顔を真っ赤にして謝ってきた。
レィナも自分の抱き付き癖は自覚しているので、謝るしかなかったのだ。
「・・・大人の・・・関係?」
少し離れた所にエリーが座ってこちらを見ていた。
「むにゃむにゃ」
そのエリーのすぐに横ではリィナがまだ寝ていた。
「もう陽が昇るぞ」
そこへエストもやって来た。
「わ、わかった。今リィナを起こすよ」
「そそそうですね」
シオンとレィナは少し挙動不審になりながら返事をした。
シオン達は異空間袋に入れて持って来た食材で朝食を作り、後片付けをしていた。
「その、シオン君。朝のことは出来れば忘れてください。その・・・恥ずかしいので」
シオンの隣にレィナがやってきて言ってきた。
「努力はしてみるよ」
シオンも好きな女の子の胸やあそこの感触を忘れるのは難しいと思うが、努力をすることにした。
「・・・ありがとうございます」
レィナもシオンにとって難しいとわかっているのでそれで妥協することにした。
後片付けが済み、一行はバレスへ向けて山を降り始めた。
「この辺りはまだ草木があるのですね」
レィナが周りを見ながら言った。
「確かバレスは乾燥地帯が多いって聞いてたけど」
シオンも学園で習ったことを思い出していた。
「そうだったっけ?」
リィナだけは首を傾げていた。
「確かにバレスの首都は乾燥した砂漠地帯にあるが、湧き水が出るオアシスを中心に栄えた場所だから水に困ったことは少ないな」
「ただ・・・昼と夜で・・・気温差が凄いです」
エストだけではなくエリーも説明してくれる。
「僕は砂漠初めてだから少し不安かな」
シオンはずっと村で生活していたのでそうゆう場所とは無縁だったのだ。
「私達は一回バレスへいったことありますね」
「そういえば小さい頃に父上と行ったね」
リィナとレィナは一回行ったことがあるらしい。
「そうなんだ。僕は精霊の里から出なかったかっ!!」
「「「っ!!」」」
「シオン!何か来るよ!!」
フィーがシオンに話し掛ける。
シオンも言葉を途中で切り、何かに気付いた。
リィナ、レィナ、エリーも探索の精霊魔法を展開していたのでその存在に気付いたみたいだ。
「何なんですか?シオン様・・・。この変な感じ」
エリーは今まで魔物の反応は取っていたが、今感じている気配は初めての様で不安そうだった。
「これって・・・あの時の?」
「似ている気がしますが・・・」
「三体ぐらいゆっくりだけどこっちに来てるね」
シオン達三人はこの気配に似たものを感じたことがあった。
「あのゾンビみたいの・・・だよね?」
「・・・でも何か大きさが」
リィナとレィナが話し合っている。
「っ!エリー!!」
「きゃ!」
シオンは咄嗟にエリーを押し倒す。
そこへ黒い液体が弾丸の様に飛んできた。
「何者だ!」
すぐにエストも抜剣し、戦闘態勢に入る。
リィナとレィナはすでに攻撃に移っていた。
「右行くね!」「左を行きます!」
木々の向こうに薄っすらと影に向かって二人はそれぞれ遠距離から攻撃を仕掛けた。
リィナが放った炎球は途中にあった木々を燃やしながらその物体へと当たり弾けた。
レィナの放った氷の矢は物体に当たった場所を凍らせた。
だが、その物体はいきなり速度を上げてこちらに走り出した。
「させるか!」
シオンはエリーの傍で地面に手を叩きつける。
すると走ってくる経路を塞ぐように地面が隆起した。
左右のその物体はリィナとレィナからもらったダメージの影響なのかその隆起した地面に思いっきり突っ込んだ。
しかし、真ん中にいた物体は飛び越えて来た。
そこで初めて相手の姿を視認した。
「何だ!?あいつは」
「・・・オオカミ?」
「でも何か違う!」
相手は2m程の大きさのオオカミだった。
だが目は潰れ、体や足にが変に抉れたり曲がったりしていた。
「うぅ・・・」
エリーはその姿をみて気持ち悪くなっていた。
「あれのオオカミ版?」
「そう考えるのが妥当でしょうか」
リィナとレィナも以前戦ったグールと同様の魔物と判断した。
「こいつらがいるってことはあいつもこっちにいるのか」
シオンはあの大柄な男、イマーゴを思い出していた。
「来るぞ!」
エストの言葉通りそのオオカミは肉片を散らしながら突進して来ようとする。
「行くぞ!」
エストは剣を地面に突き刺す。
すると走ってきていたオオカミの足元か岩で出来た槍がオオカミを貫こうと飛び出してくる。
その直撃を受けたオオカミは胴体で千切れてしまい、下半身の方はべちょっと気持ちの悪い音を出して動かなくなる。
しかし、前方へ放り出されるようにしてちぎれた上半身の方は地面に転びながら顔をエストの方へ向けていた。
「危ない!」
シオンが咄嗟にエストの前に出て障壁を張る。
そこへオオカミの口から黒い液体が飛び出してきて障壁に当たる。
「すまん、助かった」
エストはもう倒したと思い油断していたのだ。
「させないよ!」
また黒い液体を出そうとしていたオオカミの上半身にリィナの炎球が飲み込んだ。
炎球は弾けることなくその場で燃え続けた。
そして、リィナが炎球を消すと、そこにはオオカミの物であろう白い骨だけが残っていた。
「もう二体は?」
「それならシオン君が出した地面に思いっきりぶつかったせいか上半身が潰れて動かなくなっていました」
確認をしてきたレィナが教えてくれた。
「なんとか討伐はしたか」
シオンが一息吐いた。
「今のは魔物なのか?」
エストが今まで見たことも聞いたこともない魔物を見て聞いてきた。
「恐らくは魔物の類には入ると思いますが僕も詳しくは」
「ただ、エスト君やエリーちゃんと会う前にあれの人型に襲われたことがありまして」
「それって・・・」
エリーがまだ少し気持ち悪いのか顔を青くしながら何かに気付いた。
「エリーちゃんは何か知ってるの?」
リィナががエリーに聞いた。
「あの・・・少ししか覚えていないのですが、昔の魔人との戦争時にいた魔物と酷似しているような気がして・・・」
「それってその時代にしかいなかったの?」
「私も詳しくは・・・その、わからないです。でも、その・・・グールって・・書いてあったと・・・思います」
途中から皆の視線が集まり、エリーは言葉がたどたどしくなってしまった。
「グール・・・か。今のオオカミもグールの一種なのか?」
シオンの疑問は誰にも分らなかった。
(今のは魔人が作った魔物だから今の人間達は知らないかもね)
たった一人、ノームはその答えを知っていた。
「ノーム、今の魔物はグールなのか?」
(人間達はそう呼んでいたね。あれは魔人が動物や人を無理やり魔人化しようとした失敗作だったと思う)
「でも、前に戦ったグールは最初は人型だったけど途中変な瘴気で合体したよ?」
「確かに。あの強さで失敗作っていわれても疑問に思いますね」
シオン達が戦った最初の人型のグールは突然現れた瘴気の魔法陣によって一つになって襲ってきたのだ。
(・・・僕は失敗作としか聞いたことが無い。もしかするとそれに何かを見出した魔人がいるのかもしれないね)
ノームはそう教えてくれた。
「・・・あの男が何かをやったとしか考えられないか」
「取り敢えず今はバレスに向かいませんか?」
「もしかするとあいつもバレスに向かったのかもしれないよ」
シオンが考え込もうとすると、リィナとレィナがそう言ってきた。
「そうだね。この場所にいたらまた襲われるかもしれないし」
シオンは少し遠くだが似たような気配があるのに気付いていた。
「では向かうとするか」
エストを先頭にシオン達は再び歩き始めるのであった。
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「ん?この気配は」
城でくつろいでいたベッフェルが外に何かの気配を感じ、外へと出た。
「おや?あれはイマーゴですか」
城の遙か上の結界の外にイマーゴが中を覗き込もうとしていた。
「・・・彼に手伝ってもらいましょうか」
そう言ってベッフェルはイマーゴの方へと飛んで行った。




