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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第四章 廻り出す運命
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第95話 山を越えて

「う・・・ん?」

 アカネは目を覚ますとテントらしき中にいた。

「えっと・・・」

 アカネが辺りを見渡していると

「あ!アカネさん、目が覚めましたか」

 リシアがテントの外から覗き込んで話しかけてきた。

「えっと・・・確かあたし・・・」

「はい、サラマンダーさんとの契約は無事に成功しましたよ。あの後すぐに気を失ってしまったのでここで野営していたのです」

「・・・あたしどれくらい寝てたの?」

「一晩ですよ。今朝食を作っているので出来上がったら呼びますね。それと服を一部手直ししてそこに置いてありますので、着てくださいね」

 そう言ってリシアは外へと戻っていった。

「服?・・・きゃあ!!」

 自分の姿を見ると布団の下はすっぽんぽんだった。



「アカネの奴、目覚ましたのか?」

「はい、意識もしっかりしていそうなので大丈夫そうです」

「そいつはよかった」

「カイ、ここでその剣を振るのやめてくれないかしら?」

 カイは大剣が軽くなったのが嬉しくて、料理しているリシアの隣で素振りをしながら話していたのだ。

「そうだぞ、カイ。せっかくリシアが作ってくれている料理が台無しになったら困る」

「わーったよ」

 外からはそんな声が聞こえてきた。



(アカネ、受け入れてくれてありがとう。もう大丈夫?)


 いつのまにかアカネのすぐ近くにサラマンダーがいた。

「う、うん。大丈夫」


(ごめんね、思ったよりアカネのマナが強くて馴染めなかったみたいだ)


「馴染めなかった?」

 アカネが疑問に思って聞き返した。


(うん。アカネは火のマナに長けているのは、僕、火の精霊が保証する。でも、アカネのマナは火のマナの中でも少し特殊だったみたいだ)


「特殊・・・」

 アカネは自分の火の色が普通でないのは知っている。


(だから、馴染ませる過程で反発が起きて、想定以上の熱が発生してしまったみたいだ)


 そういうサラマンダーの姿を改めて見てみると、赤かった鱗の一部が青白くなっているのがわかった。

「それ・・・あたしの所為?」

 アカネが申し訳なさそうにサラマンダーの青白く変色した鱗を指して聞いた。


(恐らくはね。でも大丈夫だよ。特に問題はないみたい。むしろ逆に今までより強い炎が出せそうだ)


 サラマンダーは少し微笑んだ。

「それならいいけど・・・」


「おい、朝飯できたってよ」

 そこへカイが朝食が出来たとアカネを呼びにテントを開けて覗いてきた。

「へ?」

「あぁ?」

 カイはアカネの姿を見て固まった。

 アカネはサラマンダーとの話に夢中になっていたため服をまだ着ていなかった。

 アカネの裸体は再びカイの前に晒されてしまったのだ。

「見ないで!!」

「ぐはっ!!」

 アカネが手をカイに向けて突き出すと青白い炎が飛び出して、カイの腹にめり込んで、テントの外へふっ飛ばした。

「あ!ごごごごめんなさい!!」

 ついやってしまったと思い、アカネは謝りながらテントの外へ出た。

「ん?」

「アカネさん!?」

「あら?」

「っつー・・・」

 食事の準備をしていた皆がアカネの方を向いた。

「・・・あ」

 気付いた時は皆にアカネは裸体を見られていた。

「いやぁああーーー!!」

 アカネは胸を隠しながらしゃがみこんだ。

「フィルジアさんは向こう向いててください!」

「アカネちゃん!早く中へ!」

 リシアとルシルはそれぞれ早く対応した。

「・・・もうお嫁にいけない」

 アカネはサラマンダーと契約した後の目覚めは、最悪の目覚めになってしまうのだった。



 騒動の後、アカネは服を着ると今まで際どかった部分が修復されていた。

「リシアさん、ありがとう」

「リシアでいいですよ。アカネさんの方が年上みたいですし」

 リシアは今15歳だ。アカネは18歳なので3つほど離れている。

「わかった。ありがと、リシア。あたしもアカネって呼び捨てでいいよ」

「うん、アカネ」


「取り敢えずサラマンダーの契約者が見つかったわけだが」

「今後どうするってことだな」

 フィルジアとカイが今後の方針を決めようとしていた。

「一度あの遺跡に戻りません?ラケルさんもいますし」

「後、アカネちゃんの精霊魔法の練習も必要よ」

 リシアとルシルも意見を言う。

「・・・そうだな。一度遺跡に戻るか。もしかしたらラケル殿があの結界について何か分かったかもしれんしな」

「結界?」

「アカネには後で説明するね」

 リシア達はアカネを仲間に加えて、予言者ラケルがいる遺跡に向かって歩きだすのだった。



 --------------------------


『ぐおぉぉぉ!!』

「ふっ!」

 3mはある魔物の巨人がエストに向かって拳を振り下ろす。

 それをバックステップで躱す。振り下ろされた場所はクレーターができている。


「お願い!」

 エリーがそう言って、エストの後方で地面に手を当てる。


 ガガガガン!!


 巨人の足元から複数の石の槍が飛び出す。その内、いくつかが巨人の足を貫いた。

「兄様!」

「ああ!」

 エリーの言葉の後にエストの足元の地面が勢いよくせり上がった。

 エストはその勢いを利用して高く跳躍して巨人の頭上へと飛び上がった。

「落ちろ!」

 エストが剣を頭上に構えると剣先に複数の拳大の岩が集まる。

 それを巨人の頭目掛けて振り下ろすと、ものすごい速さで巨人の頭に襲い掛かる。

 巨人は飛来して岩が目に当たり苦しそうにもがく中、エストは跳躍の勢いを乗せて縦一閃に剣を走らせる。

 巨人はそのまま頭から腹のあたりまで一刀両断され絶命した。


「やっぱり兄妹の息は合ってていいね」

「ですね。あの跳躍はタイミングがずれたら大怪我する可能性もありますし」

「そうだね。さすがってところか」

 エストの身体能力の高さがあるから出来る芸当だろう。

「シオン、この辺りの魔物はあれで最後みたい」

「わかった。ありがとう、フィー」


 シオン達は今、国の境の山の頂きを越えた辺りにいた。

 頂きを越えた辺りから魔物の種類が変わってきており、狂暴なのが多くなってきていた。

 エストとエリーも瘴魔以外の魔物の討伐は十分に出来るので、複数の魔物や瘴魔には一緒に戦ってもらっている。


「シオン、ここからバレスが見えるぞ」

 エストが視界が開けた場所で言ってきた。

 そこからエストが指し示した方向を見ると、小さくだがドーム状の何かが見えた。

「あれが・・・」

「そう、父上が張った禁術の結界だ」

「・・・・・・」

 エストの言葉にエリーが悲しそうな顔をした。

「凄いですね。もう時間が結構経つのに、あれだけの規模の結界を維持しているなんて」

「そのおかげで私達も準備が出来たしね」

 レィナ、リィナも強固な結界に驚いていた。


「確かここを降りた所に洞穴があったはずだ」

「兄様、それって私達が過ごした場所ですか?」

「そうだ。偶然かもしれないが、私の記憶に間違いがなければ、洞穴があったはずだ」


(お兄さんの言うとおり、僕達が休んだ場所だね)


「兄様、ノームも同じ場所だって言ってる」

「それなら今日はそこで休もうか。もう少し暗くなってきてるし」

 一行はこの日、山中にある洞穴で休むことになった。




「見張りを代わろう」

 洞穴の中からエストが出て来て、シオンに向けて言った。

「あ、うん」

 シオンはそれに曖昧に返事をする。

「何かあったのか?」

「いや、この先の事を少し考えててね」

 シオンは洞穴の中で眠るリィナとレィナを見た。


 今は深夜の時間帯だ。女性陣は皆、洞穴の中で熟睡中だ。

 最初はシオンが見張りをすることにし、それまではエストに休んでもらい、途中交代するということになっている。


「・・・何か不安があるのか?」

 エストはシオンが二人を見る目に何かを感じた。

「ノームから契約の話があった時から考えていたんだけど、もし契約してエリーやノームが巫女である二人のマナの供給を受けれるようになったら、二人はどうなるのかなって」

「・・・もしかして、シオンは二人のマナが枯渇しやすくなると懸念しているのか?」

 エストはシオンの考えを理解して聞いてきた。

「まあね、ノームの話だと昔の巫女は人間であり精霊でもあった。だから、契約しても精霊としての巫女のマナは膨大にあったから余裕があったはずだ。でも二人は人間であって、精霊ではない」

 シオンは今と昔の比較をする。

「やはりそんなに違うものなのか?」

「精霊はマナが自我を持った存在と言われている。生きるためにはマナが必要だから、マナの回復力も人間と比較にならないぐらい高い」

 シオンはエストに分かりやすく説明をしようとする。

「精霊と契約すればまた変わるんだろうけどね」

「その話だとエリーはノームと契約している。リィナとレィナよりマナの回復力はあると話になるのか?」

「地のマナに関してはだけどね」

「・・・なるほど。城でも話していたが、そもそも精霊と契約すると契約者はその精霊のマナを扱えるようになるのだろう?」

「そうだね。その精霊の力に特化する感じかな」

 シオンは知っていることを答える。

「なら、なぜ精霊は契約してくれるのだ?お互いにマナを分け与えていたら変わらないだろう?」


(それには僕が答えるよ)


「ノーム?」

「ん?ノームがどうした?」

「いや、今のエストの質問にはノームが答えてくれるみたいだ」

「まさか精霊自信が答えてくれようとは」


(えっとね、僕達精霊はもちろん単独でも特定の場所では存在は出来るよ)


「特定の場所?」

 シオンがノームに聞き返す。


(そう。例えば地なら地、水なら水ってそれぞれの精霊が必要とするマナが多い場所でしか、存在を保てないんだ)


「・・・もしかして、精霊が人間と契約すると他の場所でも活動できるようになるってこと?」

 シオンが考えを述べる。


(その通りだよ。僕は地の高位精霊だから大体の場所は平気だけどね。精霊はその人と生きていきたい、守りたい、友達になりたい、いろんな場所に行きたいとかいろいろな感情を持つことがある。そういった精霊が自分にあった契約者を探しているんだ)


「そうだったのか」

 シオンも精霊に何が得なのか分からなかったが、今の話でようやく理解することが出来たのだった。

 シオンは今の話をエストに伝えた。

「そうか・・・。ノーム、エリーと友達になってくれてありがとな」

 エストがノームにお礼を言った。

 ノームはエストには見えていないが、エストはノームの方を向いてお礼を言っていた。

 ノームは少し恥ずかしくなったのか、エリーの方へと消えていった。

「ノーム、少し嬉しそうだったよ」

「そうか」

「そうだ、エスト。さっきの二人のことは一応皆には黙ってて」

「わかった。それよりシオン、そろそろ休んだらどうだ?」

「うん、そうさせてもらう」

 シオンは洞穴の中に入ると、エリーが隣で寝ていたエストが抜けたのに気付いたのか、もぞもぞと動いていた。

 そこにリィナが寝返りを打ち、エリーの横に移動した。

 エリーはリィナの服を掴むと安心したように静かに寝始めた。

 シオンはそんな様子を見て、姉妹のようだと微笑ましく思った。

(魔人との戦いに向かっているとは思えないな。だからこそ守らないと)

 シオンはそう心の中で思いながら、隅に横になり寝ることにした。


 こうして夜は更けていった。



 --------------------------


「なんじゃこりゃ!?」

 イマーゴはバレスの結界を見て叫んだ。


 イマーゴは未開の森から北上し、バレスに到着していた。そのバレスだがまだ結界が解けてはおらず、赤いドームに包まれているような状態だった。


「こいつは・・・ただの結界じゃねぇな」

 イマーゴは結界を分析した。

「なんだ?こいつは・・・」

 イマーゴは瘴気を球にして軽く撃ち出し、結界に当てる。

 すると、結界に当たった途端に瘴気の球は霧散する。

「瘴気を無効化?・・・いや、吸収・・・したのか?」

 イマーゴは完全ではないが結界が瘴気を吸収しようとしたように見えたのだ。

「・・・・周りを見てみるか」

 イマーゴはこの中に何を閉じ込めているのかに興味が湧いたのだった。

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