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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第四章 廻り出す運命
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第90話 報告へ

 アカネの村はいたって平和なものであって、海沿いにある村だから漁業が盛んで、近くには火山もあり、火の神としてその火山を崇拝していた。

 事件は村の近くで魔物に人が襲われたというものから始まった。

 この村は少し閉鎖的な部分があるが完全に閉鎖してはいない。

 魔物に襲われ、怪我人が出た場合は無償で助けたりしていた。

 しかし、最近は魔物による被害が多くなってきており、無償で助けるにも限界が近付いてきていた。

 そんな時、『火の神が怒り、魔物が増えている』と噂が流れ始めた。

 そんな噂でさえ信じてしまうほど、村の人々は疲弊していたのだ。

 そして、最悪の事態が起きてしまう。

 本来、魔物はマナの暴走が原因であるため集団で行動することはない。

 それなのに、魔物が集団で村を襲ってきたのだ。

 村の中でも漁師等の力仕事をしている人の中には戦闘が出来る者もいる。

 しかし、圧倒的な魔物の数が相手ではまったく歯が立たなかった。

 その時、アカネは18歳と年相応な少女で、成人したばっかりだった。

 一応大人の仲間入りを果たしたということで、村で人々の非難誘導を手伝っていた。


「おっちゃん!大丈夫!?」

 知り合いのおじさんが腕を怪我してやって来たので、慌てて駆けつける。

「大丈夫だ。こんなのつば付けときゃ治るわ」

 強気な顔でそう答える。

「もう、無茶言って」

 アカネは怪我していない方の腕の肩に自分の肩を貸して、家の中に運んだ。


 怪我人を運び終えて家の外に出ると目の前に大きな熊の魔物がいた。

「あ、あ、ああ・・・」

 アカネはいきなり現れた魔物に恐怖を感じ動けなくなってしまった。

 そんなアカネを気にする様子もなく、熊の魔物は腕を振り上げて、アカネを叩き潰そうとしてきた。

「っいや!!」

 アカネは殺されると思い、頭を庇うように目を瞑って縮こまってしまう。

 しかし、いつになってもその衝撃はやって来なかった。

 うっすら目を開けると魔物は黒焦げになって振りかぶった態勢のまま死んでいた。


「・・・え?」


 訳もわからず辺りを見渡すと、アカネのことを人も魔物も畏怖するような眼差しで遠巻きに見ていた。


「アカネ・・・あんた・・・」

 遠くからそんな声が聞こえた。

 アカネは後ろを振り返ると、先程の知り合いのおじさんを運び入れた家が黒焦げになり、中に人らしき焦げた物が転がっていた。

 そして、地面を見るとアカネを中心に直径10m程の地面が焦げていた。


「なに・・・・これ・・・」


 アカネは何が起こったか理解していなかった。

 呆然としているアカネに、危険と判断したのか、魔物はアカネを先に殺そうと近付いてきていた。

「いや!!」

 アカネもそれに気付き腕を付き出しながら来ないように願った。

 その時はうっすらと目を開けていたので、何があったか理解出来た。

 腕を付き出した瞬間に手から青白い炎が飛び出して行くのを。

 その炎に当たった魔物は一瞬で炭と化していた。

 魔物達はそれでもアカネを殺そうと囲んできた。

「何なのよ!!もう!!!」

 自分がしてることも理解出来ずに頭を抱えるアカネ。

 そして、魔物を拒絶する想いは無慈悲な青白い炎となり嵐を造り出す。

 ほんの数秒で辺りの魔物は全てアカネによって焼き殺されていた。

 遠くでそれを見ていた村人達は青白い炎を操る悪魔とアカネのことを呼び出す。

 その後、アカネは危険と村人達に判断され、村外れの小屋に軟禁された。

 翌日には村に悪魔は置いておく訳にはいかないとの理由で小舟に乗せられ、島流しにされてしまったのだ。



 普通に村で暮らしていた少女、彼女が普通と違うのは火の山で拾われた子供ということだけ。

 両親はいなかったが、村ではいろんな人が助けてくれて生活は支障なく送れていた。

 一応の生きるための技術は村の人々の手伝いで心得ている。

 だが、いきなり拒絶され、島流しにされるのはアカネの心に深い傷を負わせていた。



「何なのよ・・・この炎は」

 アカネ自身もこの青白い炎を操れているわけではない。

 命の危機を感じると、その対象をこの青白い炎は飲み込んで殺してしまう。

 わかっているのはそれだけだった。

 暫く歩いていると川が海に流れ込んでいる場所、河口を発見する。

「川を遡れば村とかないかな」

 アカネは川を遡るようにとぼとぼと歩き出す。

 喉が渇いたらこの川の水を飲めば、凌ぎにもなる。

 そう考えたアカネは休みを少しずつ取りながら歩いていった。



 --------------------------



「ここがアルマブルクか」

「・・・大きい」

 シオン達は行商人の馬車で二日目には王都アルマブルクに到着していた。

 エストとエリーは初めて見る城下町に目を大きく開けて驚いていた。

「どうします?国王陛下に会いに行きますか?」

「先に服を買おうと思う。流石に一国の国王に会うのにこの格好は失礼だからな」

 エストは自分のボロボロの服を見て言った。

「じゃあ二人は先に伝えてて貰ってもいい?」

「後程エストとエリーを連れて一緒に城に行きますので」

「「わかりました」」

 ユーグスとカイルはリィナとレィナの指示に従い、城の方へと馬で向かっていった。

「それでは服屋に案内しますね」

「私達も見立ててあげるからね」

 服の買い物をするということで、リィナとレィナは少し上機嫌だった。


「シオン、エストとエリーは助けを求めていたのは本当みたいだから大丈夫そうだよ」

「わかった。ありがとう、フィー」

 シオンは何か裏があるかもしれないと考え、フィーに大まかな二人の感情を見ていて貰っていたのだ。

「それとね、エリーだけど」

「ん?エリーがどうかした?」

「シオンのことが好きみたい。あのマナの暴走を止めた時に惚れちゃったみたい」

「・・・・・・え?」

「シオン、頑張って」

「・・・・・・え?」

 フィーはそう言い残し、リィナとレィナの方に飛んでいった。

 シオンは先に移動しているリィナとレィナに呼ばれるまで放心状態だった。



「シオン様、どうですか?」

 エリーは試着する度に兄であるエストやリィナとレィナではなく、シオンに感想を聞いてきた。

「うん、可愛いよ」

 エリーとエストは金髪のブロンドヘアーだ。

 エストは肩より上ぐらいの髪の長さで、髪や服を整えると凄くカッコいい王子のように見えた。

 エリーは先程まで腰近くまであった髪を今は後ろで二つに束ね、お下げのツインテールになっている。

 エストは動きやすい貴族服を、エリーも少し動きづらそうだが、簡易ドレスのようなものを着ている。

 二人とも服は青を基調としている。


「あ、ありがとうございます」

 エリーは可愛いと言われて、顔を赤くしながらお礼を言ってきた。

「すまないな、服まで買ってくれるとは」

 エストもお礼を言ってきた。

 二人はバレスから逃げる際に最低限の物しか持っていなかった。

 お金も少しは持っていたが、バレスとアルマブルクでは商品の種類や物価が違い、質もアルマブルクのほうが良かったので、値が張ってしまうものが多かったのだ。

 シオン達はお金はかなり持っているので、それを提供したのだ。

「困った時は助け合わないといけないですから」

「助けられてばかりで少々心苦しいがな」

 シオンの返答にエストは少し苦笑いしながら答えた。

「それでは城の方へ向かいましょうか」

 シオン達はエストとエリーを城へと連れていった。



『リィナ様!レィナ様!お帰りなさいませ!』

 城に到着すると兵士が列を組んで挨拶してきた。

「ただいま」

「只今戻りました」

 そんな兵士に二人が挨拶する。

『シオン様もお帰りなさいませ』

「ええ・・・ただいま」

 シオンは慣れていないので少し引き気味で挨拶をして。

「え?どういうことです?」

「やはりか」

 その光景を見て、エストとエリーはそれぞれ違う反応を見せた。

「兄様、どういうことですか?」

「リィナとレィナは王族ということだろう」

「え!?」

 城に入って兵士達が迎えるようにして、様付けでお帰りなさいと挨拶をする。

 それしか考えられなかった。

「そういうこと。たぶん謁見の間にいると思うから案内するね」

 話を聞いていたリィナがそう言ってシオンは達三人で案内する。



 謁見の間に入るとアルバルトが脇に騎士のユーグスとカイル、騎士団団長のバルトル、魔導師団団長のジンが控えていた。

「よく戻ったな。そちらの二人が例の客人か?」

 アルバルトはエストとエリーを見て聞いてきた。

「はい、バレス国の方で事件があり、こちらの方へと逃げて来たようです」

 レィナが説明する。

「お初にお目に掛かります。私はバレス王国王子、エルネスト・フォン・バレスといいます」

「えと・・・は、初めて。バレス王国王女のエスカリーテ・フォン・バレスです」

 エストが正式な挨拶をするとエリーもそれに習い挨拶をした。

「え!?王子様と王女様だったの!?」

「まあ、そんな予感はしていましたが」

「そうだね。雰囲気とかで何となくは」

 シオンとレィナは特にエストの振る舞いでそんな予感をしていた。

 ただ一人、リィナは気付いていなかったようだ。

「二人ともなんで教えてくれなかったの!?」

「いえ、言わないということは言えない理由があるかもしれませんので」

「こっちから無闇に聞くのは良くないしね」

「う、確かに」

「そろそろ戻っていいか?」

 三人でガヤガヤと話しているのをアルバルトは待っていたようだ。

「はい、すみません。大丈夫です」

 シオンは謝り、続けても大丈夫と伝えた。


「すまんな、こんなのでも我の娘達なのだ。悪く思わないでくれ」

「いえ、ここまで一緒に来て頂きましたし、優しく明るい娘さん達だと思います」

 エストは当たり障りのない返答をする。

「私は関係ないじゃないですか」

 レィナまでアルバルトに悪く言われているように言ったので、レィナがぼそっと呟いた。


「少しいいですか?」

「む、なんだ?」

 シオンが口を挟んだ。

 最初に確認したいことがあったのだ。

「今からでもエルネスト様と呼んだ方がいいでしょうか?」

 シオン以外は皆、王族なのでそこまで気にしないだろうが、シオンにとっては他国の王族ということで接し方に悩んでいた。

「いや、今まで通りエストで構わない。こう言っちゃなんだが、同世代の友人はいなかったからシオン達とこうして話が出来るのは嬉しいんだ。だからそのままでいい」

「わ、私もエリーで、いいです」

 二人がそう言ってくれた。

「わかりました。すみません、話を折ってしまい」

「確かにシオンにとっては確認しておきたいことだな」

 アルバルトは笑いながら許してくれた。


「で、何を報告に参ったのだ?」

「少し長くなるかもしれませんがよろしいでしょうか?」

「構わん。その為の人払いもしているし、多少の時間は取ってある」

「ありがとうございます。それでは報告させて頂きます」

 エストはバレス王であるエスカーンとのやり取りから今に至るまでの経緯を皆に説明した。




「そうか・・・エスカーンの奴が」

 話を聞き終わったアルバルトは力を抜き、玉座に身体を沈めた。

 アルバルトは冒険者の時にエスカーンと会って意気投合した友人でもあったのだ。

「父は最後まで戦った戦士だったと私は思います」

 エストも父の死は完全に受け止めきれていないが、少し時間があったので心の整理は出来ていた。



「話を戻そう、確か・・・精霊だったか?」

 話の途中に出てきた精霊についてアルバルトがエストに聞いた。

「はい、こちらに向かう道中にかなり助けて頂き、今に至ります」

「その精霊とやらは?」

「えっと・・・」

 エストは精霊を認識出来ないので、隣にいるエリーを見た。

「え、えっと・・・この子・・です」

 エリーは足元にいる精霊ノームを指した。

「・・・・・・見えんのだが」

「えっとですね・・・うぅ、兄様」

 アルバルトは少し強面なので、エリーは萎縮してしまった。

「すまん、エリー。私にもノームの姿は見えない」

「そう、ですよね。えっと・・・」

 エリーは後ろにいるシオンの方を見てきた。

 シオンはエリーに見られていることに気付きそっちを見ると、エリーは目をうるうるさせて見つめてきていた。

「アルバルトさん、ノームはいますよ。僕達には見えていますので」

 シオンは流石に無視することは出来ずに助け船を出すことにした。

「そうなのか?」

「父上、あまりエリーちゃんを怖がらせないで」

「そうです。そんな強面で睨まれたら怖がってしまいます」

「・・・強面」

 娘達にそう言われ少し悲しくなったアルバルトであった。


「ノームは僕達以外に姿や声は届けられないの?」

 シオンがノームに聞く。


(まだ完全に力が戻っていないから難しい。だからシオン、話をするときに通訳してくれないかな?)


「わかった。アルバルトさん、ノームが言うことは僕が伝えますので」

「む、そうか。それなら頼もうか」

 こうして精霊ノームとの話が始まった。

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