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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第四章 廻り出す運命
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第88話 王都への道中で 1

 シオン達はエストとエリーを瘴魔の手から助け、山を下り麓の村に戻っていた。

「徒歩で戻るとなると結構時間がかかるよね。身体強化で走るわけにもいかないし、どうするの?」

 リィナが質問する。

「確か村の入口に馬車があったから王都にまで送ってくれないか頼んでみようか」

 村に最初に来た時に馬車があったのをシオンは思い出した。

「それならその馬車の持ち主さんを見つけないとですね」

 エストとエリーを引き連れて、シオン達は馬車の持ち主を探し始めた。

 問題はどうやって探すのかだが、それは以外に早く見つかることになる。


「え?王都にかい?」

 お世話になった宿屋を訪ねてみると、行商人の人がいたので聞いてみたら、村の入口にある馬車の保有者だということがわかった。

 シオン達はさっそく王都へと馬車を出してくれないかと頼んだのだが、雲行きは怪しかった。

「今、王都に行くまでに失踪が多いから腕利きの冒険者が来るのを待っている状態なんだ。悪いけど他を当たってくれるかい?」

 どうやら王都へ向かうために腕利きの冒険者を探しているようだった。

「僕達が護衛するのはどうでしょうか?」

「え!?君達がかい!?」

 シオンは見た目が冒険者に見えなくもない。

 リィナとレィナは冒険者にしてはスカートが短く、可愛らしい服を着ている。

 戦える様には見えない。

 その後ろにはエストは服を隠すようにローブを着込んでいるが、年長者だけあって強そうではある。

 エリーも同じような格好だが、背が低く、幼いと解るので強いとは思えない。

 男二人に女の子三人、戦力的に見ても不安しかなかった。

「あ、二人は負傷しているので乗せて貰うだけになります」

 シオンはエストとエリーの方を向き、そう言った。

「え!?大丈夫なのかい!?」

 行商人はシオンとエストが主に戦うと思っていたので、エストが戦わないと聞き、更に驚いた。

「大丈夫だよ」

「私達は冒険者ですから」

 リィナとレィナが冒険者であることである冒険者の拠点ギルドの登録の証であるバッジをシオンの分も含めて見せる。

「ぼ、冒険者?」

 行商人はバッジを見て目を丸くしていた。

「翼竜も討伐したこともあるよ」

「・・・・・・・」

 リィナが翼竜を討伐したと言って行商人は言葉が出なくなっていた。


「わかった。それなら君達に護衛を頼もう」

 行商人は暫く悩んだ末、シオン達に護衛を頼むことにした。

「用意するから村の入り口で待っててくれ」

 行商人はそう言って宿屋の奥へと入っていった。




「手間を掛けさせて済まない」

 エストは自分達のために馬車の交渉してくれたシオン達にお礼を言った。

「気にしないで下さい。それより王都へはどんな用件で向かうのですか?」

 シオンは改めて王都へと向かう理由を聞いてみた。

「それは・・・バレスが襲われ今の状況になったことをアルバルト国王陛下の御耳へと入れようと考えているのだが・・・。それはやはり難しいだろうか?他国の知らない人が国王陛下と謁見するのは」

 エストが少し渋い顔をする。

「それなら大丈夫だよ」

「はい、私達が一緒に行けばすぐに会えますから」

 リィナとレィナが大丈夫だと笑顔で言った。

「そ、そうか。それならいいのだが」

 エストはなぜ大丈夫かと聞き返そうとしたが、今はそれだけで納得することにした。

 今は自分も身分を隠しているので、少し後ろめたさがあるのだった。

「じゃあ、村の入口辺りで行商人さんを待ちましょうか」

 シオンの一言で一行は村の入口まで移動することにした。




「待たせたね。それじゃあ少し狭いけど荷台の方へ乗ってくれ」

「僕は行商人さんの隣に乗せて貰ってもいいですか?警戒をしたいので」

 シオンは荷台に乗らずに行商人の横に座り、周りを警戒しようと申し出た。

「ああ、一人ぐらいなら大丈夫だよ」

「ありがとうございます」

「それでは私達は荷台の方へ乗りますね」

「ええー、私はシオン君の隣がいい!」

「私も我慢するのですから行きますよ」

「はーい」

 リィナとレィナは渋々荷台の方へ歩いて行った。

「すみません、煩くて」

「少し不安はあるけど、賑やかな分には大丈夫だよ」

 行商人は苦笑いしながら答えた。


「それじゃあ出発するよ」

 皆が乗ったことを確認して行商人は馬を動かし始めた。




「それでは兄妹でバレスからこっちまで逃げてきたんですね」

 荷台の方ではリィナとレィナ、エストとエリーで固まって座り話し込んでいた。

「ああ、途中に山の麓にある妖精が住む森に最初は行こうとしたのだが、そこも瘴気の影響を受けていてな。結局そのままアルマブルクを目指すことにしたんだ」

「その・・・途中は危なかったけど・・・ノームが助けてくれて」

「確かにノームには食料や水といろいろ助けて貰ったな」


(僕も頑張った)


 ノームはエリーの頭の上で寛いでいた。

「それにしても私、精霊さんに会うのは2回目だよ」

「そうなのか?」

「シオン君の故郷は大精霊アレティア様が住んでいるんですよ」

「凄いな」

 レィナが説明にエストが驚いた顔をした。

 言葉には出していないが、エリーも驚いている。

「私は精霊の姿も声も聞こえないから、意志疎通出来る君達が少し羨ましいよ」

「エリーは精霊と契約してるんだっけ?」


 こくこく


 リィナの質問にエリーへ頷いた。

「ノームは精霊魔法を教えて欲しいって言っていたけど、精霊魔法を使ったことはあるの?」

「あの・・・ノームが一緒に・・・」


(僕が指示して少し使ったぐらいだよ。殆ど僕がマナを操っていたけど)


 ノームがその時の使用状況を説明してくれる。

「ん~・・・それだとマナを見て感じ取ることは出来てるから、操る感覚を覚えた方がいいのかもね」

 リィナがシオンに教えて貰っていたことを思い出しながら言った。

「自分の中にあるマナを知覚出来ているのならそれでいいかもしれませんね」

 レィナもその教え方に賛同する。

「自分の中にあるマナは知覚出来る?」

「・・・?」

 エリーは首を傾げて悩んでいた。


(エリー、これだよ)


「ん!?」

 エリーは慣れない感覚にビクッとして驚いた。

「私達も最初はくすぐったくて驚いたよね」

「ですね。なんか懐かしいです」

 リィナとレィナはエリーの様子を見てそんな感想を持った。

 エリーは笑いを堪えるように踞っているプルプルしている。

「エリー・・・大丈夫か?」

 エストは隣でプルプル震えるエリーが心配になり聞いてみた。


 こくこく


 エリーは踞りながら首を縦に振った。

 暫くの間震えていたエリーだが、大分慣れてきたのかなんとか普通に座ることが出来るようになった。

「結構くすぐったいよね」

「シオン君が言うには、普段使わなかった物が刺激されてくすぐったく感じるそうです」

「はぁ・・・はぁ・・・」

 エリーはまだ疲れているようだ。


(ごめんね、エリー)


 ノームは精霊であるためマナの加減が人間と違って難しかったようだった。

「はぁ・・・うん、大丈夫だから・・気にしないで」

 エリーは心配してくれたノームに声をかけた。

「今感じたマナを手に集めて・・・。レィナ、火は不味いよね?」

「そうですね。商品を燃やしてしまうわけにもいきませんし」

「それじゃあ・・・。どうしよう?」

「あ!あの!?」

 言われた通りにマナを手に集めたエリーは手にどんどんマナが集まってきて制御が利かなくなってきていた。

「え!?どどどどうしよう!?」

「エリーさん、散らせるイメージをしてください!」

 リィナは戸惑い、レィナは落ち着かせようとしていた。

 その光はどんどん強くなっていく。

「こ、これは!」

 マナを知覚出来ないエストですら気付くレベルだ。


 その時、突然馬車が止まった。

 そして

「エリー!ごめん!」

 シオンが慌てて荷台に飛び込んできて、エリーの手を溢れるマナごと両手で包んだ。

「少し我慢してね」

 シオンはエリーのマナに自分のマナを染めてエリーのマナの制御を始める。

「っ!!」

 エリーは何かを感じてしまいシオンに身体を預けるように倒れてしまう。

 シオンはそれを抱き止めてエリーのマナの制御に集中する。

「「ずるい」」

 シオンは何かを聞いたような気がしたが、気にせずに集中し続けた。

 そして、溢れていたマナが静まり始めた。

「これで大丈夫だ。エリーは大丈夫?」

 シオンは腕の中にいるエリーに話しかける。

「は、はい。大丈夫・・・です。ありがとう・・ございます」

 エリーは顔を真っ赤をしてシオンにお礼を言う。

「「シオン君、ごめんなさい」」

 そして、リィナとレィナが謝ってきた。

「教えてくれてたんでしょ?謝らないでいいよ。ただ、今回はエリーの才能が悪い方向に転がったみたいだしね」

「「え?」」

「ん?」

「どういうことだ?」

 シオンの言葉に皆は疑問に思った。

「今、暴走しそうだったエリーのマナを制御した時に、少しエリーの中を感じ取ったんだ。マナの量が僕と同じぐらいはあったように感じたよ」

「というと?」

「潜在能力が高いってことだね」

「凄いじゃないですか」

「だね」

 リィナとレィナはエリーに凄いと褒め称えた。

「そう・・なの?」

 エリーはシオンにまだ頬が少し赤いまま上目遣いで聞いた。

 シオンはエリーのその可愛さに一瞬ドキッとしたが

「うん。練習すれば凄い精霊魔法使いになれるよ」

 シオンは優しくそう言ってやると

「そっか・・・えへへ」

 エリーは家族以外の男の人に初めて笑顔わ見せるのであった。

 エリーは頑張れば自分の手で祖国を取り戻せるかもしれないと考えていたのだった。

 そして、それが兄であるエストの役に立てると、そしてシオンの・・・。

 そう考えて顔を上げると、シオンの顔が目の前にあった。

「あ」

 エリーは顔を再び真っ赤にして俯くのだった。

「なんか・・・」

「ライバルが増えた気が・・・」

 同じ女の感なのか、リィナとレィナは嫌な予感をしていた。


「だ、大丈夫なのかい?」

 突然馬車を止めた行商人は荷台を除き込むようにして確認していた。

「はい、大丈夫です。ご心配かけてすみません」

 そう言ってシオンは行商人と一緒に御者台の方へと戻って行った。

「あ・・・」

「エリー、シオン君は私達の物はだからね」

「例え年下とはいえこれは譲れませんから」

 リィナとレィナはエリーがシオンに好意を向けていることがわかったので釘を差しておこうとする。

「むむ」

 それを悔しそうに二人をエリーは睨んだ。

「・・・・・・・」

(エリーがあのような態度を・・・、アルバルト陛下に会えたら少し打診してみるか)

 エストはエリーのあまり見たことのない態度を見て、密かに考えるのであった。



「それで何があったんだい?」

「いえ、連れの者が少し・・・」

 シオンは言葉を濁して誤魔化そうとした。

「まぁ、何もなければいいけど」


 そして、暫く馬車を走らせていると

「「シオン君!」」

 荷台からリィナとレィナが声をかけてきた。

「これは・・・中型ぐらいの魔物かな?」

「魔物だって!?」

 シオンの言葉に行商人は驚いていた。

「馬車を止めて下さい。右手の方から来るのでここで討伐します」

「あ、ああ」

 行商人は慌てて馬車を止めた。

 止まったのを確認したリィナとレィナが荷台から飛び出してきた。

「シオン君、どうする?」

「こっちに近付く前に倒しちゃおうか」

「わかった」「わかりました」

 そう答えた時には3m程の蛇の魔物が見えていた。

「ひ、ひぃ!」

 魔物の姿を見た行商人は悲鳴を上げた。

 蛇の魔物は這いずりながら凄い速度でこちらに向かってくる。

「これでどうだ!」

 リィナは炎球を3つ出して魔物に向けて放つ。

 咄嗟に出した炎球の割にはそれなりの威力があったらしく、蛇の魔物は勢いを緩め、警戒するように一定距離を保ち周りを回り始めた。

 そして、先程炎球を放ったリィナの死角にきた途端に再び馬車へ向かってくる。

「予想通りですね」

 目立つそれなりの威力の炎球の精霊魔法。

 生物は火を恐れる習性がある。それは、魔物と化しても同じ事。

 炎球を出したリィナを避けるなら、馬車の反対側に来るとレィナは予測して、マナを集めた状態で構えを取っていたのだ。

 レィナは手の平に青白い光球を造り出していた。

 その光球の周りの空気が凍ってキラキラと輝いていた。

「凍りなさい」

 レィナはその光球を蛇の魔物に向かって放つ。

 光球はレィナの拳程の大きさしかない。

 魔物はそんなのは効かないと考えて、その光球を丸呑みした。

 そして、こちらに向かって来ようとした蛇の魔物は、こちらに向かおうとする姿のまま蛇の氷像と化した。

 そして、己の重さに耐えきれずに蛇の氷像は崩れていった。


「・・・・・・・・」

 リィナとレィナの戦いの余裕に行商人は声を失っていた。

 3mはある蛇の魔物をこの馬車に近付くことさえさせずに、あっさりと討伐してしまったことに驚いていたのだ。

「二人ともお疲れ様」

「うん、あれぐらいならね」

「特に問題ありませんから」

 そう言って二人は荷台へと戻って行った。

「さぁ、出発しましょうか」

「・・・ああ」

 シオンの言葉に行商人は頭の整理が出来ないまま、馬車を出すのだった。

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