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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第四章 廻り出す運命
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第87話 遺跡の奥には

今回はリシアやカイ達の話になります。

また話がいろいろ並行して進みますので、ややこしくなるかもしれません。

出来る限り理解しやすいようにしますので、よろしくお願いします。

「はぁ!」

 カイが剣を一閃すると猪の魔物の首がずるりと落ち、絶命した。


「噂通りの強さじゃな」

 預言者ラケルはカイの戦いぶりを見て納得していた。

「ラケルさん、これから向かう所はどこなのですか?バレスに近いと言っていましたが」

 リシアごラケルに訪ねる。

「近いと言ってもバレスの町から1時間ほど離れた場所にあるただの遺跡じゃ。すでに国で遺跡の中は調査されて安全は取れておる」

「その武器はそんな遺跡に保管されているのですか?」

 すでに調査されているのだったら、保管する場所もないと考えたのだ。

「実はその遺跡の奥に隠し部屋があってな。そこにある大剣があったのだ」

「大剣ですか?」

「持ち運ぼうにもやたら重くてな。大人数人がかりでやっても、びくともしないのじゃ」

「・・・・・・その動かせない剣を渡そうとしているのですか?」

「あれほどの強者なら持てるだろう」

 ラケルは前方を歩くカイを見て言った。

「どうなんでしょう?」

「あいつなら大丈夫だろう」

 話を聞いていたフィルジアが大丈夫と言ってきた。

「そうね。カイは身体強化だけなら凄いから」

 ルシルも同意見のようだ。

「でも、そういう遺跡にある剣って何か魔法的な物ってありません?」

「む、確かにその線はあるか」

 リシアの言葉にフィルジアは同意する。

「そういえば、一昔前にその遺跡で変な声を聞いた者がおったな」

「え?」

 その言葉にリシアは硬直する。

 リシアは精霊とかを見ているので幽霊とかもまだ平気な方なはずたが、怖いものは怖い。

 兄であるシオンの前なら冷静でいられるものの、いないとどうなるか自分でも分からなかった。

「ん?リシアは幽霊とかダメだったか?」

「たぶん・・・平気だと思いますけど」

「無理はしないようにな」

「・・・ありがとうございます」

 リシアは心配してくれるフィルジアにお礼を言った。


「おらおらー!!」

 前方ではカイが出てくる魔物を一人で次々と狩っていた。

「あいつはもう少し静かに戦えんのか」

 フィルジアはそう言って少し加勢するために前に出て行った。

 大声を出して戦うものだから、近くにいる生物や魔物も近付いてきていたのだ。

「お主達はいかんのか?」

 ラケルは隣にいるリシアとルシルに聞いた。

「私達は一応ラケルさんの護衛に」

「もしもがあったらいけないですから」

 二人はそう言って周りを警戒し続けた。

「それは助かる」


 そんなに時間もかからずに魔物を討伐し、五人は歩き始める。

「なんか景色が変わってきていません?」

 先程までは草原地帯だったのだが、徐々に草木が少なくなり、地面も乾いた砂でいっぱいになってきた。

「バレスは砂漠の中にある国じゃからな。オアシスを中心に町を発展させた国じゃ」

 ラケルがリシアに説明する。

「周りには遺跡が結構な数が眠っていてな。時よりすごいものが出土する時もあるらしい」

 フィルジアも説明をしてくれた。

「これから向かう遺跡もその中の一つじゃ」


 暫くの間歩き続けていると、遠くにドーム状の何かが視えた。

「ねぇ、あの遠くに見える丸い物って何ですか?」

「あれは・・・なんだ?」

「確かあの辺りは城が見えていたと思ったのじゃが・・・」

 リシアの問いにカイとラケルは首を傾げた。

 遠くに本来見えるはずの城の姿は無く、ドーム状に展開されている結界が見えていたのだ。

「魔物達の襲撃があって結界を張ったのではないか?」

「いいや。あの町や城にそんな機能は付いておらん」

「でも遠くから見る限り結界にしか見えないと思うのだけれど」

 一行は足を止め考え始める。


「もしかすると魔人が何かをしたのかもしれん」

 フィルジアはバレスが魔物に襲撃されていること、予言者であるラケルの予言で魔人が関わっている可能性が高いことからそう判断した。

「それなら近付かない方が賢明かもしれませんね」

「だな。その遺跡にある武器とかを先に貰ってからにしようぜ」

「ラケルさん、案内お願いしますね」

「わかった」

 結局、結界らしきものが見える城や町には今は近づかないで、遺跡に向かうことにした。



「これは・・・」

「すごい火のマナだな」

 マナを視認できるリシアとフィルジアが遺跡の中から溢れてくるマナに驚いていた。

「まな・・・とはなんじゃ?」

 マナを知らないラケルは二人に聞いてきた。

「えっと、マナはですね・・・」

 リシアは簡単にマナについてラケルに説明した。


「なるほど・・・、魔法で得意不得意があるのはそういう理由じゃったか」

 人間族が扱う魔法は魔力で詠唱や魔法陣を通し、マナに命令して現象を起こしている。

 扱える属性に偏りがあるのはその人の資質と考えられていた。

 リシアの説明では、魔力にもマナにも基本的にいろんな属性が混じり合っている物で、得意な属性があるのならば、その人が持っている魔力やマナがその属性の割合が多いからということだ。

 まぁ、その人の待っている資質といっても変わりはないが、リシアの説明ほど詳しくは分かっていなかったのだ。


「で、この遺跡は火のマナが濃いのか?」

「そうみたいです。これだけはっきりしていると逆に不自然すぎます」

「例の剣が関係しているかもしれんな」

「身体とかには害はないのかしら?」

「ないと思いますけど・・・。火の魔法を扱う時は注意した方がいいかもしれません」

「どういうこと?」

「これだけ火のマナが濃いと、魔法にも影響するだろうからな」

 周りに火のマナがこれだけ多いと初級の火の魔法でも周りの火のマナが反応して、想定以上の効果や威力になってしまうのだ。

「わかったわ。注意するわ」

 身体に害はないということで、ラケルを先頭に一行は遺跡の中へと入っていった。



「ねぇ、なんかすごく暑くないかしら?」

「おかしいの・・・。以前はこんなことはなかったのじゃが・・・」

 遺跡の中を歩いて行くと冷えるどころか、どんどん熱くなってきたのだ。

「火のマナが多過ぎますね」

「なにかありそうだな」

 マナが視認できる二人はこれが異常過ぎる事態だと判断した。

「しかし、こんだけあっちいとやばくねぇか?」

「それだったら任せてください」

 カイの言葉にリシアが精霊魔法で周りの火のマナと対である水のマナを放出してリシア達の周りだけ中和させた。

「おお!涼しくなったな」

「さすが水の精霊魔法が得意なだけはあるな」

「ほう・・・これが精霊魔法か」

 リシアの精霊魔法で涼しくなって進みやすくなった。

「これでしばらくは大丈夫だと思いますけど、長時間は難しいので少し急いでもらってもいいですか?」

「わかった。なら少し歩みを早めるぞ」

 そしてそのまま遺跡の奥へと入っていった。


「確か・・・この辺りに・・・」

 遺跡の奥の行き止まりでラケルは壁を手探りで探り始めた。

「おお!これじゃ!」


 ガコ・・・ゴゴゴゴゴゴ!!


 ラケルが壁の石を押すと横の壁がスライドして道が出てきた。

「うわぁ!あっち!!」

「む!これは!!」

「ちょっと待っててください!!」

 隠し扉が開いた途端にもっと火のマナが濃くなって、リシアの今まで使ってた水のマナを大きく上まってしまったのだ。

 リシアは直ぐに火のマナを中和するように水のマナを放出する。

「うぅ・・・ちょっときついかも」

 リシアはあまりの火のマナの多さに水のマナが追い付かなくなってきたのだ。

「俺も少し協力しよう」

 フィルジアもリシアほどではないが水のマナを宿している。

 それを放出してリシアをフォローする。

「うぅ・・・ありがとうございます」

 リシアは自分の不甲斐無さを悔やみ、フィルジアにお礼を言った。

「いや、リシアがいなければここまで来れなかったのだから自分を卑下するな」

 そう言ってリシアを励ます。

「とにかく今の状態は長くは持たん。急ぐぞ」

 そう言って一行は隠し部屋へと入っていった。


 そこにあったのはラケルが話していた大剣が壁の所に祭られる様にして鎮座していた。

 そして、フィルジアとリシアの目には違う物も見えていた。

「あれは!」

「もしかして・・・精霊?」

 大剣の前には小さな赤いトカゲのような何かが丸くなって眠っていた。

「この子が火のマナの原因?」

 そう、この赤いトカゲからは火のマナが溢れ出続けていた。


(ん?君達は?)


 いつの間にか火のトカゲは目を覚ましリシア達の方を向いていた。

「えっと・・・私はリシアといいます」

 最初に目が合わせられたリシアが自己紹介をする。


(そう・・・。君と・・・そっちの君もかな?僕の姿と声は聞こえているみたいだね)


 リシアとフィルジアを見てそう言ってきた。

「おい・・・何かいるのか?」

「・・・・・・・」

 カイやルシル、ラケルはリシアとフィルジアが大剣と話をしているように見え、困惑していた。

「ああ・・・恐らく精霊だと思うのだが・・・」

 フィルジアも少し困惑して答える。


(そうだよ。僕は火の精霊サラマンダー。かつて魔人達を封印するときに協力した・・・ね)


「火の精霊・・・サラマンダー・・さんですか」

 リシアは見えない人のために精霊の名を言った。

「待て!サラマンダーじゃと!?」

 ラケルは驚いて声を上げた。

「何か知っているのか?じいさん」

「ああ!我が国の古文書には魔人を封印した四大精霊の名が乗っておるのじゃが、その中にサラマンダーの名があったはずじゃ」

「「「「え!?」」」」

 他の4人はそれを聞き驚いていた。


(僕が今ここにいるのは封印が解けて来ているから。まだ他の封印もあるから大丈夫だとは思うけど、そう長くは持たないと思う)


「封印が解けて来ているって・・・」


(そう、魔人達の封印がね)


「・・・・・・」

「ま、予想通りではあったな」

 絶句するリシアと予想通りだというフィルジア。


(君達がなぜここに来たのかは何となくだけどわかる。だけど君達では僕と契約するには相性が良くないみたいだね)


 サラマンダーはリシアとフィルジアを見て言う。

「それではこの大剣は持っていくわけには・・・」


(ん?君達はこの大剣がほしいの?・・・僕が宿った剣だけど・・・そっちの人なら武器としてだけなら使えるかな?契約者がいない状態だと僕の力は完全には発揮されない。それでもいい?)


 そっちの人と言うのはカイのことだろう。サラマンダーはカイの方を向いて話していた。

「カイ、サラマンダーはこの大剣に宿っているそうだ。契約出来る者がこの場にいないから完全な力を発揮は出来ないそうだが、どうする?」

 フィルジアがカイに説明する。

「持って行っていいんだろ?ならもらうぜ!」

 そう言ってカイは大剣の柄に手を伸ばす。

「む・・・」

 掴んで持とうとしたが少し動くだけで持ち上がらなかった。

「確かにこいつはおめぇな」

 カイは身体強化の魔法を使う。

 それでも最初は動かずにいたのだが、身体強化の密度を上げていきついに持ち上げることが出来た。

「これだけ身体強化使わないと持てねぇのか」

「カイ、それで戦えるのか?」

「ん・・・大丈夫じゃね?」

 カイは軽く振る。

 それだけで大気を切り裂く音が聞こえてくる。


(うん。扱う分には大丈夫みたいだね)


 サラマンダーもカイの剣の腕は大丈夫と判断したらしい。


(それなら僕も君達に付いて行こうかな)


「え?いいのですか?」

 リシアが突然サラマンダーが言ってきたことに驚愕していると


(うん。僕はその剣に宿る身だしね。それに君達に興味が湧いた。もしかするとどこかに僕と契約出来る人物にも会えるかもしれないしね)


 サラマンダーは嬉しそうに言った。

「それならそろそろこの火のマナの放出をやめてはもらえないか?」

「そうですね。そろそろきつくなってきましたし」


(ああ。ごめんごめん。ここ誰も来なかったから気が緩んでいたみたいだ)


 サラマンダーがそう言うと、溢れ出ていた火のマナが収まり暑さも収まっていった。

「サラマンダー、オレはカイだ。これからよろしくな」

 カイは見えてはいないサラマンダーに自己紹介をする。


(うん。これからよろしく)


「カイさん、サラマンダーさんもこれからよろしくだそうです」

 リシアがサラマンダーの声を通訳する。

「おう!」


 カイはこうして新たな武器を手に入れることに成功した。

 そして、契約者のいない火の精霊サラマンダーも仲間にした。

 これでどこまで戦えるか分からないが、リシア達は瘴魔に立ち向かう武器を一つを手に入れたのだった。



 --------------------------


 ざざぁーーん・・・・ざざぁーーん・・・・


 バレスより更に東に行くと海になっており、遠くには東大陸が薄っすらと見えている。

 波は穏やかで砂浜に波が行ったり来たりしている。

 そこに木で出来た小型の船が漂着していた。

 その中に一人の異国の服を着た赤毛の少女が倒れているのであった。



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