第86話 引き合う者達 2
バキバキン!!
ドゴン!!
シオン達はフィーの後に付いて行く。
そして遠くから戦う音が聞こえてきた。
「追いつかれて戦ってるみたい!」
先行するフィーが教えてくれる。
「急ごう!」
「うん!」「はい!」
今の音で大体の場所は把握した。
探知魔法にも引っかかり始めたので、フィーより速度を上げて追い抜かす。
「フィーは何かあったらすぐ離れて」
「わかった!」
そして徐々に戦いの音が近付き、魔物らしき影を視界に捉える。
(助けて!!)
「レィナ!今」
「はい、聞こえました!」
「シオン君!ここから撃つよ!」
「わかった。僕は先に一気に行く」
「私は怪我人の方へ!」
3人はそれぞれやるべきことを見つけ実行する。
サイクロプスがエルネストとエスカリーテに向かって棍棒を思いっきり振りかぶった時
ドガン!!
リィナは高速の炎球を棍棒に放った。
炎球はかなり炎を凝縮していたので、棍棒に当たった瞬間に爆発を起こす。
サイクロプスが棍棒が吹っ飛ばされて驚いている隙を付き、シオンが速度を乗せたまま剣で切り込む。
「はっ!」
ぎりぎりの所でサイクロプスは切りかかって来る影に気付き、棍棒の残った柄で攻撃を受け止める。
しかし
『グガァア!?』
シオンは風の精霊魔法による加速と身体強化の上乗せで、そのままサイクロプスを吹き飛ばしてしまう。
「大丈夫ですか!?」
そこへレィナが追い付き、怪我をしていそうな男女の二人に声を掛ける。
そして、男性の方が怪我をしていたのをレィナは発見する。
「今傷を治しますね」
レィナは直ぐに治癒魔法を使う。
「君でしょ?私達を呼んでいたのは」
シオンの隣に立ったリィナが精霊のノームを見つけて声を掛ける。
「この子のこと・・・見える・・・の?」
エスカリーテはリィナがノームの姿を捉えているのに驚いている。
「うん、見えるよっと、その前にあいつをどうにかしなきゃ」
「レィナ、二人を頼むね」
「はい、任せてください」
「私も守るね」
そこへフィーも到着してシオンが作った魔道具を発動させる。
すると、エルネストとエスカリーテ、レィナとフィーの姿が消えてしまった。
「もうここまで出来るんだ」
シオンは姿が消えたのは幻術だとわかったが、まだ日が経っていないのにここまで幻術を使いこなすフィーに驚きの声を上げた。
「私達はあれをがんばろう」
「そうだね」
先程吹き飛ばしたサイクロプスは立ち上がり警戒した目でこちらを見ている。
『グガアアァァァーーー!!!』
サイクロプスは突如声を上げ、黒い霧を纏い始める。
「やっぱり瘴気を持っていたか」
シオンは先程吹き飛ばした時、身体を切り刻もうと風の刃も飛ばしていたのだが、サイクロプスの身体には傷一つ負っていなかったのだ。
「ちゅ・・・それならシオン君は足止めお願いしていい?」
リィナはシオンの頬にキスをして牽制をお願いする。
「ありがとう。うん、それで行こう」
そう言ってシオンは剣に今染まったばかりのリィナのマナを纏わせて切り込む。
剣にリィナの太陽のマナを纏わせたままでいれば最低限のマナの消費量で瘴魔と打ち合える。
サイクロプスもシオンに気付き瘴気を纏わせた拳で応戦する。
キン!
サイクロプスの腕に切り込んだシオンの剣はまるで金属を叩いたような堅さにより弾き飛ばされる。
「っと、かったいな」
サイクロプスの追撃の拳を躱してシオンはあまりの堅さに驚く。
シオンは上手く拳を直接受けないように剣を斜めにして受け流していなす。
同じ場所にいないようにサイクロプスの周りをクルクルと回るようにして関節部に攻撃を入れて行こうとする。
サイクロプスもシオンを叩き潰そうと拳の連打を与える。
お互いにその速度が徐々に上がっていき、周りは土煙で視界が遮られていく。
シオンは視界が完全に遮られる前にその場を離脱する。
サイクロプスはまだ周りにシオンがいると思っているのか、その場で拳を地面に叩き続けている。
「シオン君!周りをお願い!!」
リィナがいろいろ端折って伝えてくる。
「わかった!」
だがシオンはリィナの言ったことの意味は分かった。
リィナの頭上には巨大な炎球が太陽の様に燃え盛っている。
もし、それを土煙で蔽われているサイクロプスに向かって放つとなると、その後のことはシオンにも想像できた。
シオンは地面に手を当て、砂煙ごとサイクロプスの周りを囲うように高さ3mほどの筒状に壁を作り出す。
「いっけー!!」
そこへ上から炎球を土壁で出来た筒に入れた。
すると
ドギャアアアァァァン!!!
直後、大きな爆発が起き、かなりの高さまで火柱が昇った。
土煙が舞う中にあれだけの炎球を投げ込んだので、粉塵爆発を起こしたのだ。
シオンは筒を用意することで上方向だけに爆発を逃がすことで、周りに影響が出ないようにしたのだ。
シオンが土壁を壊すと、真っ黒に焦げたサイクロプスが倒れていた。
そしてそのまま黒い煙になって消えていった。
「シオン君、お疲れ様」
「リィナもお疲れ様」
倒したことを確認したシオンとリィナは肩の力を抜いた。
「シオン!大丈夫だった?」
そこへフィーが幻術を解除して飛んできた。
「ああ、大丈夫だよ」
シオンも笑って答える。
「本当に助かった。傷まで治してくれて」
そこへエルネストが歩いてやってきた。
「その・・・ありがとう・・ございます」
エルネストの後ろから顔を半分出してエスカリーテがお礼を言ってきた。
「すまない。妹のエリーは結構人見知りなのでな」
エルネストはそう言ってエスカリーテの頭を撫でる。
「あぅ」
エスカリーテは頬を赤くして照れていた。
「紹介が遅れてすまない。私はエスト、18歳だ。訳あってアルマブルクに向かおうとしていたのだ」
「あの・・エリーです。13歳・・・です」
エルネスト、エストは本名を隠し自己紹介した。
エスカリーテもそれに習い、愛称のエリーで自己紹介する。
「僕はシオンです」
「私はリィナ」
「私はレィナです。見た通りリィナとは双子です」
「私がお姉さんなんだよ」
「不本意ながら妹です」
「私がお姉ちゃんじゃダメなの!?」
「・・・・・・(フイ)」
「なんで顔を逸らすの!?」
リィナとレィナは何か言い合いを始めた。
「僕達は皆17歳です」
シオンがそう付け足した。
「私はフィーだよ」
そこへフィーが自己紹介する。
「わぁー・・・妖精さんだ」
エリーがフィーに興味深々だ。
(巫女様。助けて頂きありがとうございます)
「この人が・・・巫女?」
エリーがリィナとレィナを見て呟いた。
シオン達は頭の中に響くような声の主らしき者に話しかける。
「えっと・・・君は精霊?」
リィナとレィナは言い合いが続いていたので、シオンが尋ねた。
(そうだよ。僕のことが視えて声も聞こえている。それにさっきの戦いで使っていた魔法は精霊魔法だよね?)
「そうだよ」
シオンが答える。
(巫女様の力も君に宿ってるの?)
「んー・・・僕のマナが特殊で他のマナに染まる特性があるみたいだから、瘴魔と戦う時はああやって戦うんだ」
(ふーん・・・マナが染まる・・ね)
ノームは確認するように言ってきた。
(因みに僕は地の精霊ノームだよ。このエリーの契約精霊さ)
「「契約精霊!?」」
その言葉に反応したのはリィナとレィナだった。
以前シオンも故郷の大精霊アレティアと一時的に契約を結んだことがある。
精霊と契約するとその属性の精霊魔法の威力や恩恵がかなり上昇したりといろいろ恩恵があったりする。
今のノームの言葉でエリーは凄腕の地の精霊魔法の使い手と見えた。
(契約はしているけど、エリーはまだ精霊魔法の練習中だけどね)
「はい・・・練習・・中です」
エリーも頑張って会話をしようとする。
(よかったらエリーに精霊魔法教えてあげてもらえないかな?この時代に精霊魔法の使い手が少なくて困ってたんだ)
ノームはリィナとレィナの傍にいるための口実を考えて頼み込んできた。
「教えてもらうならシオン君に教えてもらったら?」
「私達もシオン君に精霊魔法教えてもらったんですよ」
二人は実際にシオンに精霊魔法を教えてもらったので、そっちの方がいいと考えたのだ。
「でも、僕達はバレスに向かわなきゃ」
「それはやめておけ!」
言葉を遮ったのはエストであった。
先程とは違う強い口調に周りは驚いていた。
「すまない。だが今はバレスに近付かない方がいい」
周りが驚いているのに気付き謝り、理由も話した。
「バレスで何かあったのですか?」
レィナが緊張の顔持ちで聞く。
「・・・・・・魔人の手に落ちた」
「「「えっ!?」」」
その言葉をエストは言おうか考えたが、現代の巫女である彼女達ならいいと考えたのだ。
シオン達は予想していなかった答えに思考が働かなくなっていた。
「シオン君、一度王都へ戻った方が」
「そうですね。ただバレスに行くだけではなくて、この方達の保護も大事です」
リィナとレィナは他に何か知っていそうと見て、一度王都で作戦を練るべきだと考えた。
「しばらくは・・・大丈夫」
「ん?何がだい?」
エリーが小さく呟いたのにシオンは気付き聞き返した。
「今・・魔人と魔物・・結界でバレスに・・・閉じ込めてるから」
まだ少しおどおどしながらだが説明する。
「あれがいつまで持つかまだ分からないが、時間はまだあるはずだ」
エストもそう見ていた。
実際は使われたことのない禁術なので詳しくは分からないが、父の命で作った結界がそんなすぐに壊されるとは考えづらかった。
(それなら僕が何となくわかるよ。結界はまだ大丈夫みたいだ)
「え?わかるの?」
エリーも驚いている。
(うん。僕は長い間、あの土地にいたから大地の鼓動であの場所に張られた結界ならわかるよ)
シオンもさすがにそこまで離れていても知覚できるノームに驚いていた。
「実際にどれくらい持ちそうなのですか?」
(僕もだいたいでしか分からないけど、二月ぐらいは持つと思うよ。短く見ても一月は持つ)
「短くて一月って凄いですね」
「あの結界はそんなに持つものなのか?」
エストはレィナの言葉を聞き、驚いた。
エストはあれだけ大きな結界はそこまで長期間持たないと考えていた。
例え、人の命を代償にしても魔力やマナには限りがあるからだ。
(あれは中にいる生き物の生命力を糧にして持続する禁術。魔人には効かないかもしれないけど、魔物とかも入っているから、それぐらいは持つよ)
「生き物の生命力を糧にって・・・」
「中にいる人達は・・・」
レィナとリィナは凄く悲しそうな顔をした。
(残念だけど、例え生き残りがいたとしても・・・)
ノームも少し落ち込んでしまった。
「今時間があるなら二人を送っていこう。服もボロボロだから取り敢えずこれで」
シオンはそう決断する。
そして、異空間袋から旅用のローブを2つ出して渡す。
「済まない」
「あり・・がとう」
二人はそれを羽織った。
「それじゃあ、一度王都へ戻ろう」
こうしてシオン達はエルネストとエスカリーテに会うことが出来た。
ただ、この時はまだエルネスト達がバレスの王族だとは知る余地もなかった。
そしてそのまま一行は一度王都へ戻るべく、道を引き返していった。
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「なかなか解けない結界ですねぇ・・・」
ベッフェルは玉座に座り暇を持て余し、機嫌も悪くなっていた。
「なぁ、ベッフェルよ」
「ギリアムですか。なんです?」
「私の操っていた魔物なのだが、瘴魔も含め死んでいるのだ。何か心当たりはないか?」
「瘴魔も・・・死んでいる?」
(おかしいですね・・・。魔物は食べ物や水がなくては生きていけないですが、瘴魔なら無くても数ヶ月は生きれるはずですが・・・)
「死んだ瘴魔は小型ですか?」
「中型の瘴魔も一部死んでいるな。魔物に限ってはほぼ全滅に近い」
「・・・少し調べてみますか」
その後、数日調べたベッフェルは結界の生命力を奪う結界だと気付き、さらに機嫌が悪くなるのだった。
「魔物の生き残りを殺しなさい」
「・・・なんだと」
「瘴気を宿している魔物には効果が薄い。魔物が生き残っている限りこの結界は解けません」
「・・・・・・・わかった。殺してこよう」
ベッフェルの言葉にギリアムは渋々と従い、生き残った魔物を殺しに行った。
「かなり戦力が下がりますねぇ。殺したとしてもいつこの結界が解けるやら」
ベッフェルは外を見ると真っ赤に染まった結界が広がっているだけであった。




