第84話 未知の敵
第1章26話の後書きに第1章での登場人物紹介載せました。
少しでも興味ありましたら見てみてください。
「くっ!」
シオンは2体同時に左右から両腕で殴り掛かってきたグールの攻撃をいなす。
避けようと思えば避けれたが、そうすると後ろで戦っているリィナとレィナに攻撃がいってしまう恐れがあるのだ。
「このっ!」
「何なんですか!」
シオンの後ろでもリィナとレィナが近接戦を余儀なくされていた。
「シオン君!こいつらやっちゃうよ!」
リィナは精霊魔法で片付けていいかの確認をシオンにした。
精霊魔法は人前で無闇に使わないと決めているのでその確認だ。
「こいつらはもう人じゃない!思いっきりいこう!」
シオンは戦っていてあることに気付いた。
このグールの中にある魔力やマナが人の物ではなくなっているのだ。
どちらかと言うと魔物に近い感じがするのだ。
「わかりました!思いっきりいきます!」
レィナの返事と共に三人はそれぞれ風、火、水の精霊魔法を使い、周りにいるグールを吹き飛ばす。
『グガァ!?』
突然吹き飛ばされたグールは切り刻まれたり火傷を負った状態で、起き上がった。
「「嘘!?」」
リィナとレィナの声が重なった。
起き上がったグールは確実にダメージを与えたはずだった。
シオンは風の刃で腕を切り落とし、リィナは足を消し炭にし、レィナは水の砲弾で胴体に穴を開けたはずだった。
なのに、起き上がったグールにそんな傷は何処にもなかったのだ。
「普通の魔物でもなさそうだ」
シオンは呟いた。
「ねぇ、シオン。この人達から苦しいとか痛いって感情があるよ」
「なんだって!?」
この魔物になっても人としての感情を持っているようだった。
「それは・・・戦いづらいね」
リィナが呟いた。
感情があるってことは人として戻れるのかもしれないと希望があるかもしれないのだ。
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「おお!凄いな!あの数を一気に吹っ飛ばすとは」
遠くから静観している魔人イマーゴはシオン達に称賛の声を上げた。
「さて、ではもう少し盛り上がってもらおうか」
イマーゴほそう言って、グールのいるところに瘴気で魔法陣を造り出す。
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今はシオン達に飛ばされて橋の上で集まり出したグール達。
すると、そこに黒い霧が橋の上に描かれ始めた。
「あれは瘴気!?」
シオンが驚いた時にはリィナとレィナの二人は咄嗟にシオンに抱き付き、頬にキスをしてマナを染めた。
「・・・最近キスするスピードが上がってきたよね」
「だって」
「こういうタイミングじゃないとキス出来ませんから」
二人はいつでもキスとかをしたいのを我慢しているようだった。
「ありがとう、取り敢えずあれをどうにかしよう」
シオン達が目を向けた先では橋を破壊し、3mはある四足のゾンビのような謎の瘴魔が姿を現していた。
人の顔らしきものが幾つか付いており、見ていて気分が悪くなりそうだった。
「先手必勝!」
そう言ってリィナは自らと同じ大きさの炎球を瘴魔に飛ばした。
『グガァ!!』
瘴魔は正面から炎球を受け、苦しむような声を上げる。
「場所が悪かったですね」
レィナは川の水を操り、一気に瘴魔全体を包み込む。
「凍りなさい」
その言葉で包み込んだ水が凍結した。
「止め!!」
そこへリィナが短剣に炎を纏わせ、それを更に凝縮して瘴魔に斬りかかった。
(何かおかしい)
シオンは二人の戦いを見てそんな疑問が沸いた。
(二人が成長しているのは明らかだが、合体した意味が見いだせない。大きな的になって何もしないなんてことは・・・)
シオンが考えながら見ていると、リィナが短剣を凍結した瘴魔に突き立てた後だった。
ドッガアァーーン!!
リィナが突き立てた短剣のから巨大な火柱が現れ、瘴魔を貫いた。
瘴魔の上半分がリィナの一撃で吹き飛び、残った下半分からどす黒い液体が出てきた。
こぽ
「リィナ!」
シオンは倒したと思いこちらに向かって来ているリィナに向かって、風の精霊魔法と身体強化を併用し一気に近付いて、抱き抱えた。
「え?」
リィナがいた場所にどす黒い液体が飛んできて、地面を穿った。
「シオン君!」
レィナが咄嗟に氷槍を出現させ、瘴魔の下半分に向かって放つ。
『グガガガ』
瘴魔の下半分に残った顔らしきものから、苦悶らしき声が響いた。
だが、レィナの氷槍は貫いたはずなのに、穿った穴は塞がりどんどん再生していく。
リィナを抱えたシオンは一度レィナの近くに戻った。
そこでリィナを下ろす。
「シオン君、ありがと」
リィナはそう言って武器を構える。
「本当に何なんです?あれ」
瘴魔は先程吹き飛ばされた欠損部位を再生しながら、こちらに四足で歩いてくる。
「さっきの魔物が瘴気で合わさって、再生速度も上がってるんだ」
もう上半身はほぼ再生し終わっていた。
「レィナ、さっきみたい氷に閉じ込めたままに出来る?」
「長時間は難しいですけど、出来なくはないです」
「っ!?散開!!」
話していると顔らしき物から黒い液体を砲弾のようにして、無数飛ばしてきた。
地面に落ちた黒い液体は地面を溶かして穴を開けた。
「させるか!」
リィナとレィナの方を向き、また黒い液体を出そうとしていたので、シオンは炎球を瘴魔に放った。
特に効いた様子もなかったが、ただ攻撃を邪魔してきたシオンの方に意識を向けてきた。
その時、四足の足と地面を縫い付けるように、氷の槍が突き刺さる。
『ガアァーーー!!』
苦悶な叫びを上げて、また黒い液体を無造作にばら蒔いてきた。
「「させない(ません)!」」
シオンは風を操り瘴魔を包み込むように竜巻を造り出す。
それと同時にレィナも川の水を操り、シオンの出した竜巻と合わせるようにする。
結果、風と水の竜巻の複合精霊魔法となり、放たれた黒い液体は阻まれて霧散した。
本来、レィナもリィナ以外とでは魔法を合わせるのは難しいが、シオンとはお互いに好き合っていることや長時間共に過ごした影響か、魔法同士の衝突も起きずに、今回は複合精霊魔法へと発展させることが出来た。
シオンとレィナは一瞬目を合わせると、竜巻はそのまま氷の檻となる。
「「リィナ!!」
シオンとレィナが足止めしている間にマナを集めに集めたリィナが精霊魔法を解き放つ。
「これでどうだ!」
リィナがそう言った途端、空から眩しすぎる程の光が氷の檻を包み込んだ。
一瞬で氷は溶け、中にいた瘴魔も苦しそうな声を上げている。
そして、そのまま光の柱は瘴魔の全てを包み込み続け、光と一緒に塵となって消えていった。
消えた後もまた再生しないか、三人で瘴魔が消滅した場所を見続けた。
そして、再生しないことがわかると、三人は肩の力を抜いた。
「はぁ・・はぁ・・・はぁー」
リィナは集中力が切れたのかその場に座り込んだ。
「リィナ、お疲れ様」
「やっぱり威力はリィナの方が出ますね」
シオンとレィナはリィナの側に行き、労いの言葉をかけた。
「私も二人が止めてくれるってわかってたから、集中出来たよ。ありがと」
リィナも二人に労いの言葉をかけた。
「それにしてもさっきの男はなんだったんでしょうか?」
「途中消えたもんね」
「ままままさか・・・幽霊!?」
消えたと聞き、幽霊が苦手なレィナが震え始めた。
「いや、幽霊は瘴気使わないでしょ」
シオンは冷静にレィナに言う。
「最初の人の魔物みたいのだって、あの男を襲わなかった。たぶん、あの男が魔物も瘴気も操っていたんだと思う」
「そうなると、あの男は魔人ってこと!?」」
「確定ではないけど、可能性は高いかもしれないね」
シオンは男のことを思い出しながら答える。
「ふぅ、幽霊じゃなくてよかったです」
レィナは幽霊じゃないと聞き、安堵の息を吐いた。
「いや、魔人の方が問題でしょ」
リィナからつっこまれてしまう。
「それより・・・これ、どうしようか?」
シオンは壊れた橋を見ながら言う。
「一応この辺りは王都の騎士が巡回する場所ではあるはずですから、放置しておけば、王都へ連絡はしてくれるはずです」
「騎士の人には申し訳ないけど、先に進もうか」
シオンはそう決めて、先を目指すのだった。
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「へぇー、雑魚のグールとはいえ集合体もあっさり討伐するか」
魔人イマーゴは遠くからシオン達の戦いを見て感嘆の声を上げた。
「ま、楽しみが出来たからよしとするか」
イマーゴはシオン達と戦うことを考えると自然と笑みが溢れた。
「早く力戻んねーかな」
封印から解放されたばかりのイマーゴは完全に復活はしていなかった。
今のまま戦ったら一人は消せるだろうが、3人は無理だと判断した。
「取り敢えず、主の頼まれごとを優先しとくか。ベッフェルの奴も探さなきゃだしな」
イマーゴそう言って姿を消していった。
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「なんとか峠は越えたな」
エルネストは後ろに山の頂上が見えるのを確認して言った。
「・・・兄様、疲れた」
エスカリーテは兄のエルネストに言った。
「そうだな。今日はそろそろ休むとしようか」
エルネストは辺りを見渡し、休めそうな場所を探す。
二人の服は山を越えたり、旅をするには難しい服だったので、結構ボロボロになっていた。
枝やら岩に引っ掻けたり擦ったりして、穴が空いたり擦りきれたりしていた。
エスカリーテに限ってはドレスのような服なので余計にボロボロに見えた。
(ねぇ、エリー。向こうに岩穴があるよ)
精霊ノームがエスカリーテに休む場所を教える。
「兄様、向こうに岩穴があるみたい」
「そうか。それならそこで休もう」
「うん」
二人はノームが教えてくれた辺りに行くと、岩穴が顔を出した。
「ここなら雨風は防げそうだな」
エルネストは安全かどうかを確認してエスカリーテを呼び寄せる。
そして、暖を取るようにお互いに身体を寄せ合うように座る。
「・・・暖かい」
エスカリーテは呟いた。
「・・・そうだな」
エルネストもエスカリーテを守ように更に寄せ合った。
(ここまで来れたなら、後は山を降りていくだけだ。慌てずに進めば人里に着くはずだ)
エルネストは頭の中で今後の方針を決めていた。
横を見るとエスカリーテはエルネストに身体を預けてすでに眠りに就いていた。
(エリーだけは必ず守ってみせる)
寝顔を見て更に決意を固めるのであった。
そんな様子を周りを警戒しながら、精霊ノームは見守るのであった。




