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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第四章 廻り出す運命
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第83話 バレスへの道中で

「もう出発するのですね」

 セレンがシオン達を玄関に見送りに来ていた。

 セレンの後ろにはシオン達の屋敷を管理する執事やメイド達が並んでいる。


「はい、できる限り早く解決したいですから」

 シオン達は冒険者の拠点ギルドから帰った日の晩に旅の用意をして、翌日に出発をすることにした。

 王都にいてもあまり情報が入らないというのもあったが、早めに隣国のバレスに向かった方がいいと判断したのだ。


「セレンさん、私達は大丈夫だから」

「私達の家を守ってて下さい」

 リィナとレィナもセレンに心配ないと話しかけていた。


「そうだ。これを渡しておかないと」

 シオンは異空間袋からお金が入った袋を取り出した。

「これは?」

「セレンさん達の俸給含め生活費等が入っています」

 屋敷で働いてもらっている以上、俸給を支払うのは家主の仕事だ。

 シオンはそう思って袋に分けておいたのだが

「こんなに受け取れません。それに、私達の俸給は国王陛下が担っておりますので」

「そうなんですか?」

「ええ。なのでこれは受け取れません」

 セレン達は屋敷含めアルバルトが勝手にやったことなので、自分で持つと言い張っていたのだ。

「それでは何かあった時のために保管してください」

「いえ、しかし」

「僕達の旅の資金の心配はしないで大丈夫ですので。これと同じかそれ以上になると思いますので」

「え!?そんなにですか!?」


 そう、以前からシオン達は冒険者の拠点ギルドの依頼の報酬と素材の売却等で大金と呼べる量のお金を持っていたが、昨日の冒険者の拠点ギルドを訪れた際に王都までの人助けの依頼の報酬を更に貰い、すごい量になってしまったのだ。


「わかりました。ではこのお金は屋敷にて厳重に保管致します」

「はい。よろしくお願いします」

 セレンはそう言ってお金が入った袋を受け取ってくれた。

「そじゃあ、いってきますね」

「はい、決して無理はしないように。お気を付けて」

『いってらっしゃいませ!』

 セレンの後に続き後ろで控えていた執事とメイドが一斉に頭を下げて見送ってくれた。

 周りの家は少なくそこまで目立ってはいないが、少し恥ずかしいと思いながら3人は歩き始めた。


「ねぇ、シオン君。少し人減らしてもらおっか」

「そうですね。やっぱり多すぎると思います」

「だよね。でもアルバルトさん聞いてくれるかな?」

「「・・・・・・・・」」

「なんで何も言わないの!?」

「いやー・・・」

「勢いになった父上をどうやって抑えようかと・・・」

 リィナとレィナの二人は頭を押さえて考えていた。

 アルバルトは勢い任せでやることがある。

 特に娘に関しては暴走しがちだ。

「また卒業式の時みたいに鬼の形相したらいうことを聞い・・・て・・・・・・」

 シオンは言葉が途中で出てこなくなった。

「だれが」

「鬼ですって?」

 シオンの腕をそれぞれ取り、痛いぐらいまで締め付けながら二人が言ってきた。

 右腕は熱く感じ、左腕は冷えてきていた。

「・・・ごめんなさい、なんでもないです」

 シオンは直ぐに謝った。

 謝ると二人は力を抜き、いつも通りに腕を組む体制になり、笑顔を向けてきた。

(ふぅ・・・危なかった。二人の感情に反応して精霊魔法が発動しかかってた。これ以上刺激を与えるのはよしておこう)

 シオンは心の中でそう思うのであった。


 そして、人が増えてきたところでも腕組みで歩き注目を集め、王都の東門にいる兵士に妬ましそうな視線を送られながら三人は王都を出て行った。

 フィーは常にシオンの頭の上で周りの様子を見て楽しんでいた。



「なんかこうして4人で旅するのって久々って感じがするね」

「でもそんな久々でもないんだけどね」

 王都にいた期間は1週間も無い。

 それだけ4人で旅するのが当たり前になっていたということだろう。

「フィーちゃんとこうやって堂々とお話しできるのはやっぱりいいですね」

「うん!私も楽しい!いつも頑張って静かにしてたから少し大変だった」

「ふふふ、頑張りましたね」

「えへへ」

 レィナはフィーの頭を軽く撫でてあげた。

 フィーもすごく嬉しそうに笑っている。


「ん?これは・・・」

「ただの魔物みたいですね」

「猪の魔物だね」

 すぐ近くに魔物の反応があった。

「ここは王都にまだ近いから討伐しておこうか」

「わかった」「わかりました」

「シオン、向こうの方にも何頭かいるよ」

 フィーは違う方向を指して教えてくれた。

「合流されると厄介だからここから倒そうか」

「遠距離でですか?」

「それだと周りに被害が・・・」

「こうすれば平気だよ」

 シオンは遠くに見える魔物目掛けて手を向けると猪の心臓がある辺りに風の細い弾丸が貫いた。


 ドサ


 遠くで何が起こったか分からないまま猪の魔物は絶命した。

「・・・一瞬であそこまでの」

「さすがはシオン君ですね。見習う場所はまだまだあるということですか」

 二人も他のグループの魔物に向かってシオンと同じように精霊魔法でピンポイント射撃をした。

「あー!!上手くいかない!!」

「リィナはもう少し相手を見た方がいいのでは?」

 レィナはそこそこ出来たのだが、リィナは外しまくり魔物が穴だらけになってしまっていた。


「でもシオン君って遠距離での魔法はあまり使ってなかったですよね」

「そういえばそうだね」

「それは二人がいたからだよ」

「「え?」」

「二人は最初、魔物とも戦ったことが無かったから、前衛は僕が引き受けるようにして、二人を戦いに慣らしていたんだ」

「「・・・・・・・」」

「今は二人が成長したから臨機応変に動こうとは考えているから、そこは心配しないで大丈夫だよ」

 シオンが今までの戦い方について説明すると二人は黙り込んでしまった。

「最初から色々考えていたんだね」

「確かに今思い出すと、相手の注意を引くようなことも多々ありましたね」

「でもここまでの精霊魔法が出来るようになったのは二人のおかげでもあるけどね」

「「え?」」

「魔人や瘴魔相手だと僕はうやむやに強い精霊魔法を使えない。すぐにマナ切れを起こしてしまうからね。だから」

「マナの配分を考えて、最小のマナで最高の結果を出そうとした・・・ということですか?」

 レィナはシオンのいうことがわかり、先回りして答えた。

「そういうこと」

 シオンもすぐに気付いたレィナにさすがだなと思った。


「もしかして山の近くまで馬車を使わないのって、魔物討伐しながら行くからですか?」

 旅は基本的に歩きでしていたので気にしなかったが、急いでいるのだったら馬車を使った方が速い。

「それもあるけど、なんか東に向かう馬車が行ったっきり戻って来ないらしくて、向かわせる馬車がないんだって」

「それ問題なんじゃ?」

「うん、だから付近捜索もかねながら向かおうかと」

「そういうことですか」

「でも王都から東の山付近まで行くとなると途中に川があるぐらいだよね?」

 リィナが言った通り、北から南へと抜ける川は存在しているし、随所に橋も設けられている。

「その川の橋が落ちている可能性もあるけど・・・」

「それなら王都の方にも連絡は来るはずですよね?」

「それが来ていないらしいから、向こうに行くついでに見てほしいらしいよ」

 馬車の御者に聞いたら、調べてほしいと頼まれたのだ。

「まぁ、今のところは魔物は出るぐらいしか情報ないけど」

 シオンは先程討伐した魔物を見て言った。



 それからシオン達は途中、野宿をしたりして数日間、遠くに見える山を目指し歩き続けた。

 魔物にも遭遇したが、難なく討伐して歩みを進めた。

 そして、例の川にかかる橋へと辿り着いた。

「壊れてないね」

「壊れていませんね」

「そうだね」

 橋は普通に架かっており、問題も無さそうだ。

「ねぇ、シオン。向こうから嫌な気配がするんだけど」

 フィーが向こう岸にある小屋を指して言った。

「あの小屋は?」

「あれは橋を修復するための道具や、修理の際に大工が寝泊まりする小屋ですね」

「基本的にはあまり使ってないらしいよ」

「へぇー」



 --------------------------


「おい!誰か来やしたぜ」

「なんだ・・・ガキじゃねぇか。でも、男はともかく女二人は上玉だな」

「やっちまうか」

「お前ら、少しは落ち着け」

 小屋の窓から橋の方を見張っていた賊らしき男達を止める声が響いた。


「相手は子供かもしれねーが、旅をしている奴らだ。腕もそれなりにいいだろう」

 親玉らしき男は子供で旅をしているという現実にそんな考えを示したが

「へっ!ガキはガキに変わりはない」

「そうだ!こっちは10人以上いるんだ!」

「今までの荷車の奴らや馬車の奴らみたいに売っぱらっちまおうぜ」

 男達は欲望をだだ漏らしにして話続けた。


「俺は注意をしたからな」

 親玉らしき男はため息をついた。


 --------------------------


「ねぇシオン。私達に敵意を向けているよ」

「さすがの僕でもここまで敵意を向けられればわかるよ」

 シオン達は何事もないように装って橋を渡っている。

「シオン君、もし仕掛けてきたらどうするの?」

「まぁ、恐らく賊だから殺さないで痛めつけるだけでいいと思うけど」

 シオンは人の殺生は出来るだけ避けたいのだ。

 それはリィナとレィナも同じらしく

「私達もそれでいいかと思いますよ」

「悪いことをしている人にお仕置きはするけどね」

 そう言ってくれた。


 そして橋を渡り終わり小屋を通過しようとした時


「待ちな!!」


 男の声と共に賊が3人を囲うようにわらわらと出てきた。

「悪いようにはしねぇ。死にたくなければ言うことを聞け!」

 代表として一人の賊が言った。

 周りを囲んでいる賊はシオン達に剣や槍、斧等の武器を向けて脅そうとしている。


「自国にこのような物がいるのはやはり少し嫌だね」

「少し痛い目に遭ってもらいましょうか」

 リィナとレィナは王族だからなのか自国にこのような賊がいるのを嘆いた。

「僕は手を出さない方がいい?」

 シオンは二人の言葉を聞き、自分は手を出さない方がいいかもしれないと思い聞いてみる。

「これぐらいならば」

「私達で十分です」

 リィナは短剣を、レィナは軽く拳を握った。


「てめぇら!!女は傷つけるな!!金になるからな!!」

 賊の一言でシオン目掛けて一斉に襲い掛かってきた。

 賊は戦力を見誤っていたのだ。

 女二人も子供だからそこまでの脅威にはならない。

 剣を持っている男だけが脅威になると考えていたのだ。


「させないよ!」

 リィナは身体強化をして、シオン目掛けて襲い掛かってきた賊の剣と槍を弾き飛ばす。

「「なっ!?」」

 武器を弾き飛ばされた男は驚愕して隙を見せる。

「ぐっ!」

「がは!」

 リィナは弾き飛ばした勢いを殺さずに短剣の柄をそれぞれの賊の腹に叩き込んだ。


「遅いです」

 レィナも身体強化をして賊と応戦していた。

 レィナは武器を持たずにいたので、賊の反応出来ない速度で急接近して、シオンに教わったことのある徒手格闘で賊を撃退していた。


「なんなんだ!?このガキども!!」

 最初に話しかけてきた賊は一瞬の内に半数近くを女二人、リィナとレィナにやられて動揺していた。

 殺す標的の男、シオンは襲い掛かってきた賊に目もくれずにただ立っているだけだった。


「二人とも、ちゃんと加減しなよ」

「わかってる」「わかってます」

 その後も向かって来る賊は叩きのめし、最初に話しかけてきた賊も倒されてしまった。


「やっぱり手を出さないでいるのが正解だったか」

 そんなことを言いながら一人の大柄な男が出てきた。

「俺自身はおめぇさん達にもう手を出すつもりはねぇから安心しな」

 男が出てきたと同時にリィナとレィナは構えたので、男はそれを笑うようにして言った。


「あなた達ですか?この辺りの馬車等を襲っていたのは」

 レィナが怪しいと思い、男に聞く。

「全部じゃねぇが、こいつらがやっていたのは事実だな」

 男は隠そうともせずに答える。

「襲われた被害に遭った方々はどこに?」

「さぁな。殺したか売ったかのどっちかじゃねぇかな?まあ、最近は警戒されているのかここに人は来なくなったがな」

 男はそう言って笑いだした。

「それと少し見たくなったからな」

 リィナとレィナが再び武器を構えようとすると

「おっと、まずそっちの奴を片付けた方がいいんじゃねぇか?」

 男がシオン達の背後を指差した。


 背後にある橋の上に誰かがいた。

 人にしては様子がおかしく精気がないように見えた。

 そして


『グゥオオオオオーーーー』


 突然叫び声を上げながらシオンに襲い掛かってきた。

 その速度は先ほどのリィナやレィナの速度とあまり変わらない。

 シオンは咄嗟に再度ステップで避け、回し蹴りを放つ。


『グゥオ!』


 それは人とは思えない叫びで吹っ飛ばされていった。


「ふーん、あんたも戦えるんだな」

 男は襲い掛かってきた人でない何かを見ても平然とし、シオン達の戦力を分析しているように見えた。


「さぁ、ここからが本番だぜ」


 男はそう言ってすぅーっと姿を消した。

 そして周りで気絶していた賊達が起き上がり、さっき襲ってきた精気のない人と同じ気配を出して、シオン達を取り囲んだ。


 --------------------------



「さてさて、確かあのガキ共はベッフェルに傷を負わせた奴らだ。俺にも少し付き合ってくれよな」

 その男、魔人イマーゴが人間の身体で作った魔物。

 かつて、魔人を討伐しようとしていた時代にしか出現しなかった魔物。

 グールをシオン達にぶつけて、その戦いぶりを離れた場所から静観するのであった。

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