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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第四章 廻り出す運命
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第81話 王子と王女と・・・

「いやはや、こんなに魔物が潜んでいたとは」

 朝の騒動の後、シオン達は依頼主のおじさんに報告し、魔物の討伐した場所に来ていた。

 シオンが精霊魔法で倒した後は暗いので後始末をしなかったので、目の前には酷い惨状が広がっている。

 因みに今ここにはシオンとクロイス、フレデリックの三人しか来ていない。

 女性陣はネズミの魔物の大量死体なんて見たくないと、小屋で待機している。


「多いとは思ったけど、ここまで多かったのか」

 シオンは周りに広がるように、雷の精霊魔法を放ったため、細かい数字は数えていなかったのだ。

 明るくなってから見ると、百は越えていると思われる死体が転がっていた。


「これはどうしましょうか?」

 どうするというのは、この魔物の死体の処理のことだ。

 雷で焼いてしまったため、皮は材料にならない。

 ネズミの肉も一晩置いたので、状態はあまりよろしくない。


「出来ることなら処分してほしいが」

 おじさんは死体の数を見ながら言った。

「でもこの数を処分するとなると燃やして灰にするしかないのでは?」

「この数を燃やすんだ。どれぐらい掛かるかわかったもんじゃない」

 普通の小さいネズミならともかく、魔物のネズミは1m以上はあるのだ。

 燃やすにしても百匹以上いる魔物を移動させるのは難しい。


「だったらこの場で一気に灰にしましょうか?」

 シオンはそんな提案を出す。

「こんな数だぞ。出来るのか?」

 おじさんはシオンの戦闘を見ていないので、そんなことを聞いてくる。

 フレデリックとクロイスは納得した顔をしていた。


「はい、でもこのままやってしまうと、熱が外に広がってしまうので壁で囲いますね」

 シオンは前に出て、地面に手を付けた。そして


「アースウォール!」


 誤魔化しの詠唱と魔法の言葉を言ってから、精霊魔法で死体を囲うように広い範囲を土壁で囲った。


「おお!一度にこれほどの壁を作るとは」

 おじさんは驚いているが、シオンはそのまま天井を塞ぎ、熱が逃げにくくする。


「ファイアストーム」


 シオンはまた誤魔化しの言葉を言って精霊魔法で土壁の中に炎の竜巻を出した。

 ファイアストームは上級広範囲魔法の一つだ。

 王都の魔導師団でも使えるのは、団長のジンぐらいだ。


 シオンはそのまま土壁の中を高温にし、中にあるもの全てを灰になるまで続けた。


「終わりました」

 シオンはそう言って、土壁を破壊した。

「おお!凄い!」

 おじさんは中を見て驚きの声を出した。

「シオン達が使う魔法は凄いな」

「ここまでやっていたのだな」

 クロイスとフレデリックも驚いていたが、昨晩精霊魔法のことは話していたので、そこまで驚いていなかった。

 土壁がなくなり出てきたのは、一ヶ所に積まれた灰の山だってのだ。

 シオンは片付けのことを考えて、風を操りまとめておいたのだ。


「ここまでやってくれたなら、後はこちらで処理はするよ」

 おじさんは嬉々とシオンに言ってきた。

「ではよろしくお願いします」

 これを捨てる場所までシオンが運んでもいいかと考えたが、流石に目立ちすぎるので、ここは甘えることにした。


「これで依頼終了か?」

「そうだな。本当に世話になった。こんなに魔物が潜んでいたとは思わなかったから報酬は少し弾むよ」

 クロイスが訪ねると、おじさんは懐から追加の報酬金を取り出した。

 本来はギルドで報酬は受けとるのだが、追加分はおじさんから直接受け渡されることになった。

「また何かあったら頼むよ」


 こうしてシンシアとクロイスの予想外なことが起こった依頼は終了した。

 小屋に戻り、追加分を貰ったことを報告すると

「これはシオン君達に上げます」

 シンシアがそう言ってきた。

「でもこれは」

「最終的に討伐と処理してくれたのはシオン君です。だから、これだけは受け取ってください」

「そうだな。シオン達がいなかったら危なかったからな」

 クロイスも同意見のようだ。

「シオン君、受けとりましょう」

「そうだよ。ここまで言ってくれてるんだからさ」

 レィナとリィナが後ろからそう言ってきた。

「わかった。これは受けとるよ」

 シオンは報酬金が入った袋をシンシアから受け取った。


「それでは王都に帰ろうか」

 フレデリックの言葉で皆は帰る準備をして、王都へと戻るのだった。



 帰り道は特に問題なく、馬車に揺られてお昼前には帰って来れた。

 しかし、シオンとリィナ、レィナの三人は王都の入り口でセレンに発見され説教をされる羽目になった。


「もう!いくら旅に出るとはいえ、一報は下さい!心配したではないですか!」

「「「ごめんなさい」」」

 シオン達は三人揃ってセレンに頭を下げた。

 シオン達は旅をしていた感覚でいたため、セレン達に外に出ることを言わずに外泊してしまったのだ。


「国王陛下に頼んで捜索するところだったんですからね!」

 どうやらセレンはアルバルトには報告したらしい。

 しかし

「あいつらなら大丈夫だ。どっかで人助けでもしているのではないか」

 そう言って捜索を断ったのだ。

 まぁ、アルバルトの考えは当たっていたのだが、セレンに心配かけてしまったことにかわりはない。


「これからは旅に出る時や王都の外で外泊する時は教えて下さいね」

 セレンも三人がわざとではないことがわかったので、今回は許してくれた。

「わかりました。心配かけてすみませんでした」

「「すみませんでした」」

「わかってもらえたらないいですよ。フレデリック様も申し訳ありませんでした」

「いえ、助けられたのはこちらですから」

「そう言ってもらえて何よりです」

 セレンは引率をしたフレデリックに頭を下げていた。


「シオン様、この後はギルドに顔を出すのですよね」

「そうですね。ギルド長に時間があれば話をしてくると思います」

「わかりました。昼食は用意しましょうか?」

「どうする?」

 シオンはリィナとレィナに話を振る。

「話が終わったら一度帰りたいかな」

「昨晩はお風呂に入れませんでしたし」

「ということなので、昼食の用意お願いします」

「わかりました。それでは失礼します」

 セレンはそのまま屋敷の方へと歩いて行った。


「シオン君、リィナ様、レィナ様、ごめんなさい」

「えーと・・・何が?」

 シンシアが突然謝って来たのでシオンは聞き返した。

「私達の依頼を手伝ってもらったばっかりに・・・」

 どうやら怒られたことを気にしているらしい。

「それは僕達の不注意だったから気にしないでいいよ」

「うん、私達も言うの忘れていただけだから」

「シンシアは気にしないで下さい」

 三人でそう言ったのだが、シンシアはギルドに到着するまで謝り続けた。




 --------------------------


「はぁ・・・はぁ・・・」

「エリー、大丈夫か?」

「はい・・・兄様、なんとか」

 エルネストとエスカリーテの兄妹は険しい山道を歩いていた。



 あの時、小国バレスが魔人達に襲われた日、エルネストとエスカリーテは父親であり小国バレスの国王エスカーンに言われ、バレス地下にある秘密の通路から町の外へ脱出してした。


 暫くの間、エスカリーテをエルネストが抱えて走って町の西側にある高台に到着する。

 エルネストはエスカリーテを下ろし、肩で息をして住んでいた城と町を見る。

「兄様っ!?」

「あれはっ!?」


 突如、城と町を囲うように結界のような物が出現したのだ。

 中にいる魔物は抜け出そうとしているが、それが出来ないで閉じ込められているのが遠目でわかる。


「あれは・・・禁術?」

 エスカリーテはそう呟く。

「禁術って・・・まさか!?」

 エルネストはかつてエスカーンから聞いたことがあった。

 自らの命を代償に死の牢獄を出現させる魔法が宿った短剣があると。

 そんな魔法は今後は使い道などないと考えていたため頭から抜け落ちていたのだ。


「兄様・・・あれを使ったのは父様?」

「・・・あれを持っていたのは父上だ。間違いないだろう」

「それじゃあ・・・・」

「・・・・・・」

 エスカリーテは泣きだしてしまった。

 エルネストも歯を食いしばって耐えていた。


「エリー、行こう」

 少し経ってエルネストはエスカリーテに言った。

「・・・どこへ?」

 まだ泣いているエスカリーテはエルネストを見上げて聞いた。

「ここから西へ行った山のふもとにある森に妖精が住んでいる。エリーは覚えていないかもしれないけど、父上と一緒に家族三人で行ったことがあるんだ」

 二人の母親はエスカリーテを産んだ時に亡くなっている。

 エスカーンの話だと、元々体が弱かったらしい。


「・・・妖精さんに会えるの?・・・この子みたいな」

「ん?・・・まぁ、まだそこに住んでいれば会えるよ」

 エスカリーテは最後の方は小声だったのでエルネストには聞こえていなかったようだ。

 そして、エスカリーテはエスカーンから持っていけと言われた二本の剣の短い方を鞘の上から抱きしめていた。


「さあ、父上が稼いでくれた時間を無駄にしないように行こう」

「うん・・・」

 エルネストはエスカーンから託された長い方の剣を腰に携えて、エスカリーテの手を取り、歩き出した。

 エスカリーテもエルネストみたいに腰に短い剣を携えようとしたがそこで異変が起きた。


「エリー?」


 エルネストは手を引いたエスカリーテが付いてこないので振り返る。


(正式に契約するね)


「何?」

 エスカリーテの頭の中に不思議な声が響いた。

「妖精さん?」


 エスカリーテは一年ほど前、シオンとリィナとレィナが出会う少し前から、小人のようなものが自分の近くに寄り添っていたことに気が付いた。

 いや、気付いた。

 それに気付いてから困ったことがあるとエスカリーテを不思議な力で助けてくれた。

 エスカリーテもどうして助けてくれるかは分からなかったが、他の者に見えないこともあり、黙っていたのだ。

 独りきりの時にお礼を言ったりはしたが、言葉として話しかけてくることは一度もなかった。


(僕は妖精ではないよ。地の精霊ノーム。エスカリーテ、魔人の封印の一部が解けたから僕はこの状態まで戻れた。君には僕の力に呼応する力がある。だから契約する。そうすれば今まで以上に君を助けてあげることが出来る)


「地の精霊・・・ノーム?」

「エリー、どうしたんだ?精霊?」

 ノームの声はエルネストに聞こえていないのか疑問を持っていた。


(そう。今君が持っている剣は僕が宿っていた剣なんだ。そこのお兄さんが持っている剣も僕の一部が宿っている)

「助けるって何を?」

(後ろを見て)


「エリー!!」

 エルネストは背後に猪の魔物が向かって来ていたのが見えた。


(お兄さんに剣を地面に突き立てるように言って)

「兄様!剣を地面に突き立てて!!」

「あ、ああ!」

 エルネストは直ぐに地面に向かって剣を突き立てる。

 すると走ってきた猪の魔物の足元から地面が尖った槍が突き出るように出てきて、魔物を見事に貫いた。


「・・・これは」

「・・・地の精霊ノームが助けてくれるみたい」

「地の精霊ノーム・・・」


 こうして二人は地の精霊ノームと出会い、お互いのことを話しながら、西の妖精が住む森を目指すことになった。



 そして、今に戻る。

「まさか妖精の住んでいた森が瘴気に侵されているとは」

「うん・・・妖精さんに会えなかった」

(あそこはいない方がいい。瘴気からは契約しているエリーと剣を持っているお兄さんは守れるとは思うけど、長居は禁物)

 エスカリーテは小人の姿で頭に乗っているノームから色々と道中に教わっていた。


 かつて魔人達を封印するのに四大精霊と太陽と月の巫女の力で封印したこと、そして四大精霊が宿る武器があること、そしてエスカリーテが初めてノームの姿を捕えた日に魔人の封印の一部が解けたこと。

 もちろんそのことはエスカリーテを通して、兄であるエルネストにも話してある。


「この山を越えればアルマブルクの領土に入るはず。そしたら王都アルマブルクへ行って、バレスで起こったこととノームのことを伝えなければ」

 そう、魔人が出たという情報はバレスのギルドから入っていたが、もとはアルマブルクから情報が来ていることも分かっている。

 対応が出来たという情報も入っているので、例の太陽と月の巫女とやらはアルマブルクにいる可能性が高いとエルネストは踏んでいた。


「ここで少し休もう」

 エルネストはちょうどいい木の骸を見つけてそこに空いた穴の中で休もうと提案した。

 陽は暮れ始めていたので丁度いい雨風を防げる場所だった。

「うん・・・。疲れた」

(魔物の警戒は僕がするよ)

「うん、ありがとう」

 二人は木の骸の中で寄り添うように座り休んだ。


「旅の準備もろくにしないでこの山を越えるのは難しいと思っていたが、ノームのおかげでなんとか行けそうだな」

「うん、感謝」

 ノームはここに至るまで食べれる果実や、水が湧き出ている場所などを教えてくれているのだ。


(僕も現世の巫女に会いたいからね)


 警戒しながら話を聞いていたノームはエスカリーテに話しかけてきた。


(魔人を討伐、もしくは封印するにも太陽と月の巫女の力は必要不可欠。僕達精霊の力だけでは魔人おろか瘴気の力を宿した魔物も討伐は難しい)


「ふーん・・・瘴気の魔物って確か瘴魔ってギルドで呼ぶようにしたって聞いた」


(もし瘴魔が出たら足止めするから全力で逃げて)


「わかった」

「何かノームは言ってたのか?」

「うん、あのね・・・」

 ノームが教えてくれたことをエルネストに説明した。


「なるほど、瘴魔に会ったら逃げればいいんだな」

「うん」

「ノーム、注意をありがとう。助かるよ」


(お兄さんもエリーをしっかり守ってね)


「兄様は私をしっかり守れって」

「当たり前だ」

 エルネストは笑って答えた。


 そこで取っておいた果実でお腹を満たし、一晩過ごした兄妹は再びアルマブルクを目指して歩き出すのだった。

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