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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第四章 廻り出す運命
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第77話 屋敷での生活

「よく帰ってきたの」

 シオン達は王都アルマブルクの冒険者の拠点ギルドを訪れていた。中に入るとギルド長のウェルが出迎えてくれた。


 カウンターの方を見ると受付担当のミリアが世話しなく動いていた。冒険者達もミリアの前に長蛇の列を作っている。


「何かあったのですか?」

 シオンは気になりウェルに聞いた。


「最近魔物の討伐依頼が多くての。書類整理に儂まで駆り出される次第じゃ」

「やはり多くなっているのですね」

 後ろで話を聞いていたレィナが呟いた。


「ねぇ、シオン君。これって解決してない?」

 リィナが張り出されている依頼の内容を見てそんな事を言ってきた。


「どれ?」

 シオンはリィナの見つけた依頼を確認してみた。それはシオン達がこの王都アルマブルクに来るまでに解決してきた内容が書かれていた。他にもよく見ると解決してきた依頼がいくつかあった。


「そうだね。いくつか僕達が解決してきたのが・・・」

 シオンは確実にやってきたものを掲示板から剥がした。


「おお!こんなにやってくれたのか!」

 ウェルはシオンが剥がした十数枚の依頼書を見て喜んでいた。


「どれも遠くの方の依頼じゃな。本当に助かった」

 やはり王都から離れている場所の依頼は難航していたようだ。


「ギルド長、ちょっといいですか?」

「終わったらこっちもお願いします」

 カウンターの中から受付の人がギルド長を呼んでいた。


「すまぬが、報告やらは後日でもいいかの?」

「ええ、大丈夫です」

「その時に先程の依頼の報酬も渡すからの」

「はい、わかりました」

 シオンが頷いて返事をするとウェルはカウンターの中へと入って行った。


「すごい大変そうだね」

「そうですね。冒険者の方々もあまり飲んでいなさそうですし」

 ギルドに付属している酒場では、以前見たときよりお客が少なく感じた。


「報告は後日となるなら、このまま買い物に行こうか」

「シオン、手伝わないでいいの?」

 シオンの肩に乗っているフィーが聞いてきた。


「素人の僕達が入っても邪魔になるだけだと思うよ」

「ふーん」

 シオンが見ているカウンターの奥ではどたばたと動き回る人や、ずっと何かを書き続けている人達が視界に入っている。


「シオン君」

「行きましょう」

 リィナとレィナに呼ばれてシオン達はギルドを後にした。



--------------------------



「最初はどこに行く?」

「目的はシオン達の服なのですから男物の服屋でいいんじゃないでしょうか?」

 シオンの目の前ではリィナとレィナがどの店に行くか話し合っている。今は人で混雑している場所を歩いているので、シオンは二人の後ろから付いていく形になっている。


「シオン服買うの?」

「何着かはこの袋に入っているけど、最低限しか持ってないし、良い機会だから買うよ」

「私もシオンの服選ぶね」

「うん、よろしくね」

 シオンはフィーにしか聞こえない程度の小声で話している。フィーはシオンの肩に乗っている。小声なのは他の人にはフィーが見えないためだ。


「シオン君、この店から行くよ」

「早く行きましょ」

 二人は男物の服を扱っている店にシオンの手を引っ張って入って行った。それがシオンにとっての地獄の始まりだとは知らずに。



--------------------------



「つ・・・つかれた・・・・・・」

 シオンは荷物を両手に持ちながら帰路に着いていた。


「シオン君、お疲れ様」

「ごめんなさい、つい」

 リィナとレィナはシオンの服を買う際に、あれもこれもと大量の服を持ってきたのだ。それを次から次へとシオンに着させていった。要するにシオンは二人の着せ替え人形となってしまったのだ。


 帰路に着いたのは陽が落ちてからだ。すでに町は一部を除き暗くなっている。


「シオン、もう少しだよ」

 フィーは少しでもシオンが楽になるようになのか、荷物を持とうとしている。実際はそこまで変化はないのだが。


 そして、そのまま歩いていると今日もらったばかりの屋敷が見えてきた。


「シオン様、荷物をお持ちします」

 屋敷からセレンが出て来て、シオンの荷物を持とうとしてきた。


「大丈夫ですよ。それよりリィナとレィナの方を持ってあげてください」

 シオンはセレンの申し出を柔らかく断る。そして、二人もシオン程ではないが荷物は持っているのでそちらを持つように促した。


「わかりました。リィナ様、レィナ様、荷物をお持ちします」

 二人はセレンに荷物を預けて、シオンの荷物を一緒に手を重ねるように持ってきた。


「これじゃ変わらなくない?」

 シオンが首を捻ると

「手を繋げる」

「共同作業です」

 二人にとっては特別な意味があったようだ。そして、そのまま庭に入ると出迎えの言葉が三人に降り注いだ。メイドの中でも若い人達はシオンとリィナ、レィナの様子を見て何やら内緒話をしているのが聞こえる。


「荷物を置いたらお食事にしますか?」

 先頭を歩くセレンが話しかけてきた。


「そうですね。お願いします」

 代表してシオンが答える。


「こちらがシオン様のお部屋となります」

 案内されたのは屋敷の玄関の目の前にある階段を上がって左の廊下の突き当たりだった。廊下は屋敷の外観と比べて奥行きが少なく感じた。


「右手がリィナ様、左手がレィナ様のお部屋となります」

 廊下の突き当たりの両側に扉がそれぞれあった。


「少し変わった作りですね」

 シオンは普通の屋敷なら廊下を端まで作り、両側に部屋を作っていくイメージがあった。


「この作りはこちらの区画だけですのでご安心を」

「ここだけ?」

「何かあるのですか?」

 リィナとレィナも疑問に思ったようだ。


「中に入ればお気付きになられるかと」

 セレンはそう言いつつ中央のシオンの部屋の扉を開けた。


 中は普通の部屋だった。クローゼット、机、椅子、ソファーと居心地が良さそうな部屋だ。だが、一つだけ足りないものがあった。それはベッドだ。


「えーと・・・。良い部屋だとは思うのですが、ベッドはどこでしょうか?」

 シオンはセレンに聞いた。


「奥の扉が寝室となっております」

 セレンが言う通り、奥に扉があった。扉を開けるとキングサイズの大きなベッドが佇んでいた。そしてなぜか部屋の左右にはそれぞれ扉が一つ付いてきた。


「あの扉は?」

「リィナ様とレィナ様のお部屋に繋がっております」

「・・・・・・・」

 シオンは個人の部屋を与えられるなら一人で寝れるかと思っていたが、アルバルトに先を越されて対策を打たれていたようだ。リィナとレィナはこの事実に嬉しそうにはしゃいでいた。


「それでは食堂に向かいましょうか。食堂は階段を降りて左手になります」

 セレンにそう言われて、荷物を置いたシオン達は食堂に向かうのだった。



  「うわぁー」

 シオンの肩の上でフィーが目を輝かせていた。


 今シオン達の目の前にはご馳走と呼べる程の料理が並んでいた。


「料理は王城でコック長を勤めていた者が作っています。こちらから・・・」

 セレンが料理の説明を始めた。


 説明が終わるとシオン達は料理を食べ始める。フィーにはシオンがお皿の脇に小さく切って置いたのを食べている。

 幸せそうに食べるフィーを見て、食事の後にフィーの説明はした方がいいかもとシオンは考え始めた。


「美味しいね」

「はい、久しぶりにこのような料理を食べました」

 リィナとレィナはシオンと出会う前はこの食事が当たり前だったのだろう。


「・・・・・・」

 シオンとフィーはあまりの美味しさに言葉を失って無我夢中で食べていた。そんなシオンを見てリィナとレィナは微笑んでいた。



『ご馳走様でした』

 シオン達は料理を食べ終わり食器を置いた。


「それでは片付けの方をさせて頂いても宜しいでしょうか?」

 セレンが確認をしてくる。


「はい、大丈夫です」

「わかりました」

 セレンは奥にある厨房の方へ歩いていった。食堂にはシオン、リィナ、レィナ、フィーが残される。


「セレンさんやコック長の管理の上の方にはフィーのこと紹介した方がいいかな?」

 シオンがそう言うとフィーは目を輝かせた。


「そうだね。フィーちゃんも一緒に暮らすとなると教えた方がいいかも」

「全員に知らせると騒ぎになりそうですからそれでいいと思います」

 リィナとレィナも賛同してくれた。


「それなら今から厨房に行って紹介しよう。フィー、行こう」

「うん!」

 シオンはフィーを連れて厨房に向かう。リィナとレィナも後ろから付いてきた。



「すみません」

 シオンが一言掛けながら厨房に入る。そこにはセレンとコック長らしき人と男性と女性のコック長の部下らしき料理人がいた。


「シオン様、どうなされました?何か不備でも」

 コック長はシオンが入ってくるとすぐに気が付いて、話しかけてきた。料理に何か不満があると考えてしまったようだ。


「いえ、料理はすごく美味しかったです」

「それは良かったです」

 コック長とその部下の二人は胸を撫で下ろした。


「今後のことで紹介したい人・・・ではないですけど、いいですか?」

「ええ、大丈夫です」

「それと出来る限り、無闇に他に伝えないでくれると助かります」

「わかりました」

 他の人も頷いている。


「じゃあ、フィー」

 シオンが呼ぶとシオンの目の前にフィーが実体化する。その光景にセレンやコック長達も目を丸くしていた。驚いて声が出ないようだ。


「初めまして!フィーです!」

 フィーは元気よく挨拶をする。


「フィーは妖精族で普通の人には普段姿を見せないんです」

 シオンは補足で説明をする。


「・・・セレンさん?」

「す!すみません!妖精を見たことがなかったもので」

 リィナがいつまでも動かないセレンを見て名前を呼ぶと、慌てて謝ってきた。


「私も初めて見ました」

 コック長の後ろで他の二人も頷いている。


「今回の食事もフィーと一緒に分けて食べたんですが、今後暮らすとなるとフィーの食事は具材を細かく調理して頂けたら嬉しいのですが」

「食材はシオン様達と一緒で良いのですか?」

「はい。食材は僕達と同じで大丈夫です」

 シオンはフィーの食事について話し合った。


「フィー様、もし口に合わなかったら言ってください」

「うん!ありがと」

 どうやらフィーの食事も引き受けてくれるようだ。


「コック長、ありがとうございます」

「いえ、こちらも妖精様のお食事を作るとは光栄ですので」

 確かに普通は妖精族と会わないから、食事を作るなんてことはないだろう。



 食堂を後にしたシオン達は一度自分に与えられた部屋にそれぞれ戻った。フィーはいつも通りシオンにくっついて来ている。


「シオン、この後はなにするの?」

「とりあえずお腹が落ち着いたら風呂に入ろうかな。ここの風呂結構大きいらしいからね」

 広い風呂だとリィナとレィナが何かまてやって来そうな感じはあるが、最近は最初の頃よりは落ち着いてきているので、大丈夫だと信じたいシオンだった。



--------------------------



「・・・・・・・・」

「気持ちいいね」

「そうですね」

「こんなお風呂久しぶり!」

 シオンはフィーをリィナの部屋にいたリィナとレィナに預けて、一人でお風呂に入っていたはずなのだが、いつの間にか両隣にはリィナとレィナ。目の前には泳いで遊んでいるフィーがいた。


「シオン君も緊張しないで楽にすればいいのに」

「そうです。お互いタオルは巻いているのですから大丈夫です」

 確かに二人は体をタオルで巻いて大事な場所は隠している。シオンも二人が持ってきたタオルで隠してはいる。だが、二人はその格好でシオンの腕に抱きついているので、いつも以上の柔らかさが伝わってくるので、シオンは気が気でなかった。


「でもいつまで経っても恥ずかしいってことは私達は魅力あるってことだよね」

「確かにそうですね。こうやって隠していれば私達も平常心は保てそうですし」

「・・・・・・・」

 シオンは何とも言えずに黙ったままだ。


「じゃあさ、これからこの家でお風呂入る時は一緒にこうやって入らない?」

「いいですね!」

「勘弁してください!!」

 シオンはそんな事をされたらいろいろと我慢が出来なくなりそうなので、それだけは阻止した。



「まぁ、たまには一緒にこうやって入ろうね」

「いつかはこうやって毎日入る時は来るでしょうから」

「・・・・・・・」

 そのいつかとは今の騒動が落ち着いて結婚してからなのだろうなと、シオンは考えた。



 その後、お風呂から上がると浴場の入り口でセレンに一緒に出てきたところを目撃されてしまい、リィナとレィナとセレンによるガールズトークに巻き込まれてしまうシオンであった。幸いなのは見つかってもお咎めが無かったことぐらいだ。フィーはその話途中でシオンの頭の上で寝てしまっていた。

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