第76話 王都到着
「久しぶりって感じがするね」
「そうですね。学校にも寄ってみたいです」
リィナとレィナは王都に着いてからテンションが少し高くなっていた。
シオンはそんな二人に手を掴まれて歩いているのだが、周りを見ると遠巻きからシオン達を見ている人がたくさんいるのがわかる。小さい声で聞き取りづらいが、王女様や婚約者のとかいろんな声が聞こえた。
「ねぇ、二人とも、少し離れない?」
久々に感じる好奇の目にシオンは居づらくなっていた。
「気にしなきゃいいのに」
「シオン君は王族ではないからこのような視線には馴れていないですものね」
二人は一応王族だからこのような視線には馴れているようだった。
「わかっているなら離してくれても」
「離さない」「離しません」
「・・・・・・」
即断固拒否されてしまった。
シオン達は王都アルマブルクに先程到着していた。
外から見た感じ、結界も出発した時と変わらず機能していた。王都の中も今のところ平和そのものと見て取れる。
「最初はアルバルトさんに報告に行こうか」
シオンはリィナとレィナを両腕にぶら下げながら、王城へと歩いて行った。
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『お帰りなさいませ』
王城に到着すると門のところに騎士達が整列して、挨拶をしてきた。
「アルバルト陛下には話を伝えております。謁見の間までお願いします」
「「わかりました」」
騎士の一人がシオン達にそう言ってきた。どうやら王都の見張りの騎士が先に帰ってきたことを伝えていたようだ。
リィナとレィナはシオンの腕を持ったまま謁見の間まで引っ張って行き、シオンもされるがままに付いていった。
そして、その謁見の間に到着すると
「おお!よく帰ってきたな」
アルバルトの大きな声が響いた。
「お久しぶりです。只今帰りました」
「ただいま」「只今帰りました」
シオンに続き二人も挨拶をする。
「無事で結構。それより帰って来たということは何かあったのか?」
アルバルトは玉座に座りながら話を続ける。
「アルマポールトから南東の方へと行き、未開の森で・・・」
シオン中心に未開の森であったことをアルバルトに報告した。
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「以前聞いた魔人がその時に現れなかったのは奇妙な話だな」
アルバルトも白霊との戦いの時にベッフェルが現れなかったことがおかしいと感じたようだ。
「それからはその魔人も特に姿を現さなかったので、見失ってしまったというわけか」
「はい、そうなります。ただ王都に戻る途中に立ち寄ったクラレクの町であった者が東にある山を越えた先の森に異変が起きていると聞きました」
シオンはクラレクの町で妖精に教えて貰ったことを伏せて話した。
「異変か・・・」
「黒い霧のようなものと言っていましたので、間違いはないかと」
「こちらでも情報を集めてみてはいるんだがな、近隣の村の近くで魔物を見たという情報ぐらいしか集まらなくてな」
アルバルトは渋い顔で言った。
「それと少し遅くなりましたが、紹介したい人・・ではないのですがいいでしょうか?」
シオンはこれからのことを考えると、アルバルトにはフィーのことを紹介した方がいいと考えた。
「構わんが・・・人ではないのか?」
アルバルトは人ではないと言われて少し戸惑っているようだ。
「危険ではないですから。フィー、自己紹介して」
シオンの肩に見えなくしたまま座っていたフィーは実体化して、アルバルトの目の前に飛んでいった。
「私はフィーっていうの!よろしく!」
いつもの調子で自己紹介をしたフィーをアルバルトは驚いた顔で見ていた。
「・・・まさか妖精ってやつか?」
「そうだよ」
妖精は人の目には滅多に姿を現さないのでかなり驚いているようだ。
「う、うむ。我はリィナとレィナの父親のアルバルトだ。よろしく頼む」
何とか平常心を取り戻しアルバルトも自己紹介した。
それから暫くの間、アルバルトはフィーと少し談話をしていた。妖精から見た物事を面白そうにアルバルトが頷いていた。
「それで?この何か予定でもあるのか?久々に娘達も帰って来たからガイウスも交えて、皆で食事でもと考えているのだが」
シオンはアルバルトにそう言われて、リィナとレィナの顔を見た。二人は無言で頷いた。
「それではお言葉に甘えて」
こうして昼食は王城で取ることになった。
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「ガイウス殿、お久しぶりです」
「シオン殿も元気そうで」
王城の食堂に案内され待っているとガイウスがやって来た。
シオンは以前、この王都に初めて来たときに少しだけガイウスと話したことがあった。
「妹達は迷惑を掛けてはいないかい?」
「迷惑ってことはありませんよ。何回も助けられていますし」
シオンは実際に助けられたことがあるので、包み隠さずに答える。
「それならいいんだが、りょう・・・」
「兄上、おかしなことは聞かないで」
「私達も成長しているのですから」
何か言いかけたガイウスを横から二人が止めに入った。
「まぁ・・・一応少しは上達してますから」
シオンはガイウスが言いかけたことの内容を察し答える。
実際に二人は最初、料理は全然出来なかった。今は旅の最中にシオンが少し料理を教えて、簡単な料理やシオンの手伝いぐらいは出来るようになっていた。
「そうなのか?」
「そうなの!」「そうなんです!」
ガイウスはなかなか納得ができないようだった。
「お前達、食事が来たから席に付け」
そんな様子を見ていたアルバルトはまだ立ったまま話していたシオン達に促すのであった。
「やっぱり家の料理は美味しいね」
「そうですか?私はシオン君が作る料理も美味しいと思いますけど」
「それはそうなんだけどね」
リィナとレィナは運ばれてくる料理を食べて、旅途中の料理と比較を始めた。
「このサラダおいしいよ!」
フィーはシオンの前の机の上でサラダを小さくちぎり食べていた。
「本当に美味しいですね」
シオンもここで料理を食べることは滅多になかったので味わって食べていた。
「シオンとフィーに気に入って貰って何よりだ」
アルバルトも満足そうだ。
食事も落ち着いてきてアルバルトが先程の話の続きを始めた。
「シオン。今後、東の山の向こう側に行くことになるのだろうが、向こう側は小国バレスの領土になる。関所のようなものは存在しないし、友好国でもあるから特に問題はない。ただ山を越えるのは困難になるぞ。他の道は未開の森を迂回して行く道になるが相当な時間が掛かる」
アルバルトの言う通り、山の向こう側の森に黒い霧が現れたからそこへ行くしかないのは確かだった。
「そうですね。もう暫くは王都に滞在する予定ではいますので、山を越える準備とかしようかと。それに冒険者の拠点の方にも顔を出したいですから」
「まぁ、考えがあるのなら問題はないか」
シオンはクラレクの町て話を聞いてから、山を越えることを考えていた。高い山なので防寒具は必須になるだろうし、他にも旅で消費した飲食類も買い足さなければならない。
「父上、三人に伝えることがあるのでは?」
ガイウスがいつまでもあの事を話さないので、口を挟んだ。
「む?おお!そうだった!」
一瞬考えたがすぐに思い出したらしい。
「お前達が旅に出ている間に完成したぞ!」
突然そんな事を言ってきた。
「父上?」
「完成したって何がでしょう?」
リィナとレィナも思い当たる事がないのか首を捻っている。
「決まっているだろう!お前達が将来暮らす新居だ!」
アルバルトは立ち上がりながら宣言した。
「「「・・・・・え!?えええええーーーー!!!」」」
シオン、リィナ、レィナは同時に大声を上げて驚いた。
「しんきょ?」
フィーは皆が何に驚いているかわかっていないようだった。
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昼食で驚きがあった後、せっかくだからその新居とやらに向かうことになった。
場所は王城からは少し離れてはいるが、貴族が暮らすエリアの一角におる見晴らしの良い高台にあった。かなり大きな屋敷で庭も広い。中には執事やらメイドやらがずらりと並んでいた。
『お帰りなさいませ』
執事やメイド達シオンとリィナ、レィナに一斉に頭を下げた。
「「「・・・・・・・・・」」」
三人は頭の整理が出来ていなかった。
「えーと・・・父上?」
「これは一体なんでしょうか?」
先に思考が戻ったリィナとレィナは同行して付いてきたアルバルトに問いかけた。
「なにって決まっているだろう。この屋敷を管理や炊事洗濯掃除をやる使用人達だ」
アルバルトが腕を振り上げ説明する。
「リィナ様、レィナ様、そしてシオン様。お久しぶりで御座います」
そこへ一人のメイドが出て来て挨拶をしてきた。
「「セレンさん!?」」
リィナとレィナは同時に声を上げて驚いた。
「えっと・・・確か僕が最初に王城に来た時に」
「はい、以前はリィナ様とレィナ様のお付きのメイドをやらせて頂いてましたセレンと申します。この度、この屋敷の統括管理を承らせて頂くことになりました」
このセレンというメイドはシオンが初めて王城に来た時にリィナとレィナの荷物を預かったメイドだった。当時は色々あってはっきりと見ていなかったが栗色のウェーブが髪をして歳は20代後半といったところだろうか。落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
「セレンさんがここの管理するのですか?」
「はい、旅に出ている間も掃除などの手入れはやらせて頂きますのでご安心を。それと失礼ながらアルバルト国王陛下の指示でお二人様の部屋の衣服類等はこの屋敷に運ばせて頂きました。シオン様の衣服類は申し訳ありませんがサイズが分からなかった関係上、ご用意が出来ませんでした。申し訳ありません」
セレンはシオンに向かって謝ってきた。
「いえ、その・・・このような家に住めるだけで・・」
シオンはこの屋敷に使用人付きで将来二人と暮らすことになることを考えると混乱してきた。
「シオン君、とりあえず寝泊まりする家だと考える方にした方がいいよ」
「ですね、シオン君は王族でもおないから慣れていないのですからもっと気を楽にしてください」
シオンは二人にそう言われながら手を握られ、少し落ち着いてきた。
「・・・うん。そうだね、ありがとう、少しは落ち着いた」
シオンは最後に深く深呼吸をして平常心になることができた。
「じゃあさ、この後冒険者の拠点にいった後、シオン君の服とか買いに行かない?」
「いいですね。ついでに旅で使えそうなものも買いましょう」
「リィナ様、レィナ様、誰か御付きで同行しましょうか?」
三人だけで行くと荷物が心配になったのでセレンが申し出た。
「大丈夫です。ありがとうございます。セレンさん」
「わかりました」
シオンが優しく断るとにっこりと笑って後ろに下がった。
「じゃあ行こう」「行きましょう」
シオンは二人に腕を引かれて冒険者の拠点へと向かうのだった。
『行ってらっしゃいませ』
後ろでは執事とメイドたちが並んで挨拶をしていた。シオンはこの状況に慣れるまで時間がかかりそうだと感じていた。




