第78話 かつてのクラスメイトと 1
シオンは新しく暮らし始めた屋敷での初めての朝を迎えていた。
両隣にはリィナとレィナがシオンの腕に抱き付くように布団に入っている。これはほぼ恒例のことなので大丈夫だ。シオンは二人を起こさないように布団から抜け出そうとするが布団を少し捲った時点で抜け出すのをあきらめた。
(この光景は朝から刺激が強すぎる)
二人は前日にシオンの衣服類を買う際に新しい寝間着を購入していた。以前のワンピースの寝間着は二人の背丈やその他の成長により裾が短くなりすぎて、パンツが常に出てしまっていたのだ。旅の途中から二人は普段着で過ごしやすい服を着ることが多くなってきていた。
新しい寝間着と選んだのは以前と同じワンピースタイプなのだが、裾はともかく胸の方の露出が以前より大きくなっていた。成長していることも関係しているのだろうが、寝る時ぐらいはゆったりしたいとのことで、その服を選んだようだ。
シオンは先程起きようと布団を捲った時に目にしたのはそんな二人の胸なのだが、上から見たら服が見えないので裸のように見えてしまったのだ。
(まだ少し早いし二人が起きるのを待つか・・・)
シオンはベッドに体を預け再び目を閉じるのだった。
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「おはようございます」
あの後二人は目を覚まし特に問題なく着替えて朝食をいただこうと、三人で廊下に出るとそこにはセレンが控えていた。
「おはようございます」
「「おはようございます」」
シオンとリィナ、レィナもセレンに挨拶を返す。
「おはよー!」
フィーもセレンの目の前に行きながら挨拶をした。
「朝食の用意は直ぐに出来ますので、食堂にてお待ちください」
「わかりました」
セレンはそう伝えるとシオンに近付いて、耳打ちをしてきた。
「昨晩はお楽しみいただいたのですか?」
「っ!?」
シオンはその質問にドキッとしてしまい、顔を赤くしてしまった。
「それはまだ!」
「わかっております。冗談です」
シオンは慌てて否定しようとしたが、先回りで答えられてしまった。
「お二人と添い寝していただけでのようですから」
セレンはそう言ってリィナとレィナを見る。二人はシオンとセレンが仲良くしているのを見て少し不機嫌になっている。
「セレンさん!シオン君は私達のだよ!」
「横取りはしないでくださいね!」
二人はシオンの腕を取り、セレンから話ながらそう言ってきた。
「わかっています。シオン様、お二人を大事にしてくださってありがとうございます」
そう言ってセレンはその場を去っていった。
「シオン君、何話してたの?」
「すごく仲が良かったように見えましたが」
「二人と仲がいいんだねって話してただけだよ」
シオンは変な汗を搔きながら答えた。
「「ふーーーん・・・」」
二人はシオンのことをジト目で見ていたが、朝食の席に着くころには機嫌は直っているのだった。
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「今日はどうするの?」
朝食を食べ終わったシオン達は外を歩いていた。右隣を歩くリィナが話しかけてくる。
「一応冒険者の拠点に顔を出しておこうかと思って」
シオンは昨日はギルド長のウェルと話が出来なかったので、顔を出すつもりでいた。
「まだ時間も早いですし少し遠回りをしてみませんか?」
左隣を歩くレィナがそんな提案をしてきた。
そして一行が遠回りをして向かったのは魔法学園だった。シオンは約半年間だが産まれて初めての学校生活を送った場所であった。
「そういえば今は夏季休暇でしたね」
レィナが周りを見渡して呟いた。学園前にたどり着いたが、生徒の姿はほとんどなく、研究会か何かの活動で登校している生徒しかいなかった。
「あれ?リィナ様?レィナ様?」
すると後ろから聞いたことのある声が聞こえてきた。
「あれ?シンシア」
「お久しぶりです、シンシアさん」
リィナとレィナは話しかけてきた少女、かつてのクラスメイトのシンシアと久々の再会をするのだった。
「そうだったんですね。でも無事にこうしてまたお話することが出来るなんて思ってもいませんでした」
シオン達はシンシアに連れられて学園の空き教室の一室に来ていた。出発してから今までの経緯を簡単に話すとシンシアは嬉しそうにそんなことを言ってきた。
「ほら、リィナ様とレィナ様は王女様で旅に出るって聞いていたから、もう会えなくなるのかなって思っていたんです」
「そういえば私達って王女なんだよね」
「旅をしている時は王女ではなく冒険者として立ち振る舞っていましたから、帰ってきたと感じますね」
リィナとレィナは同級生から王女と聞いて、少し懐かしそうな顔をした。
確かに旅では王女としてではなく、冒険者として旅をしていたが、育ちの良さはさすがに滲み出ていた。旅をしている最中は基本シオンと一緒にいたが、周りの男性からは嫉妬の視線はかなりもらっていることにシオンは気付いていた。
(まぁ、見た目はかなり可愛いからなぁ)
シオンはその時のことを思い出しながら二人を見つめていると
「あれ?シオン君ってまだ二人に見とれることあるんですね」
それに気付いたシンシアがシオンに話しかけてきた。
「シオン君・・・」
「そんな見つめられると恥ずかしいです・・・」
二人は頬を染めながらそんなことを言ってきた。
「ラブラブなようで良かったです」
シンシアはそんな三人を微笑ましく見ているのだった。
「シンシアはどうして学校に?」
シオンがシンシアに問いかけた。
「私は自主練に来ただけです。フレデリック先生にご教授をいただいているんです」
シンシアはあの翼竜の事件以来、魔法の練習に力を入れているとのことだった。
「それならフレデリック先生に挨拶してから冒険者の拠点の方に行く?」
「そうしよっか。せっかくここまで来たんだし」
「シンシアさん、フレデリック先生はこちらに来るのですか?」
「もうすぐ来ると思います」
そうやって4人で話していると
「すまない、シンシア君。少し遅れてしまった」
教室のドアが開きフレデリックが入ってきた。
「お久しぶりです。フレデリック先生」
「「お久しぶりです」」
「おお!シオン君にリィナ様、レィナ様!帰って来たとは聞いていたが、実際に会うまでは心配だったんだ」
挨拶をするとフレデリックは嬉しそうに近寄ってきた。
「本当はこちらから会いに行こうと考えていたのだがね。そちらから会いに来てくれるとは本当に嬉しいよ」
「先生はシンシアに魔法を教えているんですか?」
シオンはフレデリックに先程シンシアから聞いたことを訪ねる。
「2年生になってからは向上心が増したのか、夏期休暇に限らず、休み時間や祝日も時間が出来れば教えを請いに来るようになってね」
「先生には申し訳なく思っています」
シンシアも言われて結構迷惑を掛けたのではと思っていたようだ。
「いや、大変だけど生徒から頼られて嬉しくない教師はいないからね。それにシンシア君に教えることで自分自身も成長できるから大丈夫だ」
フレデリックもシオン達の練習風景を監督していた影響か向上心が芽生えているようだった。
「それで先生、今日は何をするのですか?」
シンシアがそう聞くと
「今日は冒険者の拠点の依頼をやろうと思っている」
「え?依頼・・・ですか?」
「最近冒険者の拠点の方の依頼で魔物退治が増えているのは知っているだろう?先日、シンシア君達でも討伐できる魔物が近くに現れたら連絡をくれるように頼んでおいたんだ」
「私達ってことはクロイス君も来るのですか?」
クロイスもかつてのクラスメイトの一人だ。
「そうだ。二人は最近かなり強くなってきているから大丈夫なはずだ。何かあったら私が助けに入るから安心してほしい」
フレデリックはそう言うが、学生での魔物討伐は普通ならかなり無茶なことなのだ。シンシアはかなり不安そうな顔をしていた。
「それなら私達も一緒に行く?」
話を聞いていたリィナはそんな提案をしてきた。
「そうですね。討伐したらギルドへ報告に行くときに私達の用事も済ませてしまえばいいですし」
レィナも乗り気なようだ。
「僕もそれで構わないよ。シンシア達も少し心配だからね」
シオンも特に問題ないのでリィナの提案に乗る。
「それなら・・・頑張ってみます」
シンシアも三人が一緒なら安心と考えたのか前向きな返事がかえってきた。
「話がまとまったなら行こうか。先程クロイスは廊下で会ったから学園の入り口で待ってもらっているよ」
フレデリックの声で皆は教室から出ていった。
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「お?シオンじゃないか」
学園の入り口に行くとクロイスが壁に背中を預けて待っていた。
「リィナ様とレィナ様もご無沙汰しております」
シオンとは言葉遣いを変えて二人に挨拶をした。
「クロイスさん、お元気そうで何よりです」
「シオン君と話す時の言葉遣いでもいいよ」
「いえ、そういうわけには・・・」
クロイスは突然のことに動揺しているようだ。
「まぁ、二人は王女として認識され続けていたから仕方ないんじゃない?」
シオンはクロイスに助け船を出してやる。
「私も無理にとは言わないから大丈夫だよ」
「ありがとうございます」
クロイスはやはりリィナとレィナには頭がなかなか上がらないそうだ。
「シオン、私はこのまま姿を隠していた方がいい?」
シオンの耳元でフィーが話しかけてきた。
「うん、それでお願い。ただ何かあったら教えてくれると嬉しい」
「わかった」
そう言ってフィーはシオンの肩に座った。
「シオン、何かあったのか?」
一人でぶつぶつ何か言っていたのでクロイスは気になったようだ。
「何でもないよ」
シオンは笑って誤魔化した。フィーの姿が見えているリィナとレィナはクスクスと笑っていた。
「リィナ様、レィナ様、何かありました?」
「いえ、何でもないです」
「うん、何でもない」
リィナとレィナも笑いを堪えながら答えた。
「それでは今回受けた依頼の内容を説明する」
少し落ち着いたのを確認したフレデリックは皆を見渡して言った。
「今回は馬車で一時間ほど行った場所にある村からの依頼だそうだ。姿をはっきり見たわけではないらしいが、大きさが1mぐらいの獣だとの目撃情報がある」
「1mぐらいなら小型の魔物に入りますね」
話を聞いていたレィナが言った。
「そういうことだ。王都の北の入り口に馬車は手配してある。そろそろ向かおう」
フレデリックが歩き出したため皆は後ろから付いていく。
「シオン、馬車の中で旅の話、聞かせてくれよな」
「いいよ。代わりにクロイスも学園でのこと何かあったら教えて」
「あまり代わり映えはないけどいいぜ」
シオンはクロイスと二人でいろいろと話している。
「リィナ様、レィナ様、シオン君と進展はあったのですか?」
「進展というか」
「会ってから直ぐに惹かれて気付いたら婚約者ですから、進展も何も」
シンシアはシンシアでシオンとのことを質問していた。
「そういうことじゃなくてですね。心境の変化といいますか」
「それは・・・まぁ、助けたり助けられたりしたから好きにはなっているけど」
「そうですね。ずっと一緒にいるのですが嫌気とかはないですし、むしろもっと一緒にいたいと思っているぐらいですから」
こうして馬車に乗って現地に行くまで男子女子で別れて話が弾んでいるのだった。
「・・・緊張するよりはいいが、少しは私も話に入れてほしい」
フレデリックは生徒の話の中に終始入れず終いだった。




