第68話 瘴魔・白霊との戦い
白霊はシオン達に強烈な水鉄砲をお見舞いした後、ユンクを見据えていた。シオンはユンクを下ろし、何が来ても対応出来るように構えた。
「どっち見てるの!」
リィナが水上滑走で側面から近付き、短剣に巨大な炎の塊を乗せて、白霊の頭を横から叩きつけた。
白霊は衝撃で頭が反対側へ飛ばされる。
「こっちにもありますよ!」
反対側でレィナが3mはある氷柱を頭上で構えていた。それを飛ばされてきた頭を狙って叩きつけた。氷柱は当たった瞬間に砕け、白霊も後ろに下がろうとした。
「っ!?皆!何か来るよ!」
シオンは下がった白霊が反転し、尻尾を振り回して来ようとしているのがわかった。
リィナとレィナはいち早く跳躍で避けた。シオンとユンクは思いっきり後ろに跳躍して難を逃れたが、その尻尾の振り回しにより、湖の水が大量にカイとルシルがいる方まで、津波のように押し寄せて来た。
シオンはユンクも一緒に包むように結界を張り、カイとルシルは亀の霊獣による結界で難を逃れたようだ。
「霊獣は大丈夫そう?」
「ええ、なんとか。近付き過ぎなければ影響を最小限に押さえられているみたい」
ユンクは霊獣達に気を使いながら戦っているようだ。
空高くから風の砲弾が放たれる。しかし、白霊の体を覆っている瘴気に当たると霧散してしまう。
「霊獣の攻撃も通らないみたいね」
でも、その攻撃で白霊の意識を上に向けることが出来たようだ。
「いくよ!」「いきます!」
リィナとレィナはいつの間にか同じ位置に集まっていた。そして、掛け声と共に二人の頭上に燃えている氷柱が現れた。
氷柱が現れた時に白霊も視線をリィナとレィナの方へと向けた。そして僅かに口を開けた。
「まずい!?」
その時には先程の津波の水もかなり引いていたので、シオンは結界を解除し、二人の前へと出て、二人のマナに染まったマナを使い精霊魔法を使う。
ドゴン!!!
突如、白霊の頭上に落雷が落ちた。それを受けた白霊は少し仰け反ったが、そこまでのダメージにはならなかったようだ。
シオンはそのまま姿勢を低くした。
「「ありがとう!!」」
後ろにいたリィナとレィナはお礼を言いながら、燃える氷柱を白霊に向けて放つ。
燃える氷柱は白霊の頭がそれを避けたことで、体に当たった。その瞬間に爆発を起こし高温と低温にさらされて、初めて傷らしい傷を与えることが出来た。
白霊は痛みからなのか尻尾を振り、例の音を鳴り響かせた。
「魔物が来たら俺らで対応する!」
「シオンさん達は白霊様に集中を!」
カイとルシルが後ろを警戒して叫んだ。
周りからは少しずつだが魔物が集まり始めてきた。
「こっから先には行かせねーぜ!」
「カイ、あまり突っ込み過ぎないようにしてよ」
「わかってる!」
二人は魔物と戦い始めた。
魔物は小型より中型が多くいた。カイは一気に剣で凪ぎ払っていく。
「おら!相手にならないぞ!」
勢いに乗っているカイの後ろから一匹の甲虫が凄い速度で突っ込んでくる。
「アクアウォール!」
突如、カイの後ろから水の壁が地面から吹き出して来た。甲虫は水の壁により、空へと飛ばされた。
「ナイスだ!ルシル!」
「ナイスじゃないわよ!突っ込み過ぎないよう言ったでしょ!」
二人は何だかんだと言い合いをしつつ、お互いにフォローをして戦っていた。
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「ユンク、どうする?何かやりたいことがあるんだろ?」
シオンはユンクの場所まで下がり、同調をしようとしていると長から聞いているので、訊ねた。
「・・・何か聞いているの?」
そんな素振りを見せていないのに聞いてきたので怪訝な顔をした。
「長からちょっとね」
「そう・・・。それなら動きを少しでいいから止めてもらえると助かるわ。その間になんとか顔の辺りに触れることさえできれば・・・」
ユンクは知っているなら、協力をしてもらうと考えた。
シオンも話を聞いてかなり難しいと思った。
相手は全長20mにも迫る大きさをしているのだ。その動きを一時的といえ止めるのは至難の業だった。
白霊は自らに傷を負わせた二人。リィナとレィナを警戒しているようで、睨み付けていた。
二人は一瞬視線を合わせ、水上滑走で左右に別れた。白霊はリィナを目で追っていく。
ユンクもある程度近付きたいのだが、白霊はさっきからずっと湖の中にいるのだ。降霊は霊獣を危険に晒すことに成りかねないので今は使えない。そうユンクが考えていると
「シオン君」
レィナがシオンの側にやって来た。そしてすぐに頬へとキスをしてきた。
「さっきので結構使いましたよね?」
確かにシオンはさっきの雷の精霊魔法で二人に染まったマナを使っていた。レィナはそれに気付いていたようだ。
「ありがとう、助かる」
「どういたしまして。それで何か作戦あるのですか?」
レィナはユンクとの話し合いが気になったようだ。
「レィナ、リィナと二人で白霊様の動きを止めることは出来そう?」
シオンはユンクと話していたことを聞いた。
「少しなら出来るかもしれません。リィナとなんとかやってみます」
レィナはそう言ってリィナの元へと向かった。
「それとユンク、おんぶとお姫様抱っこ、どっちがいい?」
「・・・え?」
シオンはユンクを抱えて水上滑走で白霊に近付こうと考えていた。
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「きゃーきゃー!!多すぎでしょ!!」
リィナはレィナと別れてから白霊に追われ、1mはある水球の嵐に見舞われていた。
「しつこいの!っよ!!」
リィナは両手に炎を纏わせ、水球に向かって炎を解き放った。炎は水球に負けずに蒸発させながら白霊へと向かって飛んでいく。しかし、白霊の前に現れた白い霧のようなもので炎は消されてしまった。
その後も何回か放つが、同じ結果に終わった。
「・・・やっぱり一人だと霧の内側からしか通らないのかな」
リィナは最初の攻撃が通ったことを考えてそう結論付けた。
「リィナ!」
水球を上手く避けながらレィナが近付いて来た。
「シオン君からっ!伝言です!」
レィナはさっきシオンから聞かされたことを簡潔に話した。
「よっと!わかった」
二人は水球を避けながら会話しているので、会話が途切れ途切れだった。
二人はまた二手に分かれ、白霊の撹乱を始める。
今回は動きを止めることが目的として動くため、レィナの氷の精霊魔法が鍵となる。ただ、相手が巨大過ぎるので、レィナだけでは動きを止めることは難しい。そこでリィナが協力する。
「いっくよー!」
リィナはレィナに聴こえるように大きな声で叫んだ。
リィナはマナを湖に大量に流し込む。白霊の周りを囲むようにマナを操作する。それを一気に火の精霊魔法を使うイメージで変化させる。その瞬間、白霊の周りの水が一気に蒸発した。
白霊は高熱の蒸気に包まれる。
「凍りなさい!」
レィナもマナをリィナと一緒に湖へと流していたのだ。その蒸気にもレィナのマナが流れている。そのマナを全て凍るようにイメージする。
白霊は頭の先と尻尾の辺りを残して、氷付けになる。だが、蒸気を凍らせたため空気が多く入っており、直ぐにヒビが入り始める。
「「シオン君!!今!!」」
リィナとレィナがシオンに知らせた。シオンもその時にはユンクをお姫様抱っこで抱えて水上滑走で頭に近付いていた。
「皆!!来て!!」
ユンクは契約している霊獣を全てを呼んだ。それは以前に使っていた降霊とは違い、霊獣自体と同調する命令だった。そして、5体の霊獣と同調したユンクは白霊の頭に触れようとした。
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「同調ですか・・・」
シオンはフレンと共に夜に来るようにと、長のラングに呼ばれていた。
「そうじゃ。少し話は変わるが・・・シオン殿は精霊とは会った子とはあるのかの?」
ラングは突然そんなことを聞いてきた。
「ええ、僕とリシアが住んでいた精霊の里には大精霊アレティア様がいらっしゃいますから」
シオンはアレティアのことを思い出しだしながら答えた。
「精霊とはその・・・契約のようなものはないか?」
その契約とはユンクと霊獣のことを言っているのだろうか。
「少しややこしいですが、精霊と契約することはありますよ」
「シオン殿はしたことはあるのか?」
「ええ、アレティア様と諸事情により、一時契約をしたことがあります」
「その時シオン殿はどんな感じがした?」
ラングの質問にシオンはその時のことを思い出してみた。
「・・・自分の中に異物がある感覚でしょうか?でも、それが嫌ってわけではなく・・・どちらかというと暖かくて安心していたような感じがしました」
「なるほどの。他には何か感じたか?」
「そうですね。ある物の修理をする際に契約したのですが、アレティア様の視点といいますか、マナの流れがものすごく細かく正確に認識できるようになりましたね」
シオンはあの時の感覚は鋭過ぎて結構疲れたが、魔道具を弄るのには最適な感覚だったのを覚えていた。
「ユンクが使おうとしている同調も少し似たようなところがある」
ラングは同調に話を戻した。
「同調とは舞巫女と契約している霊獣と精神的に同調させる儀式の一つのようなものじゃ」
「それはどのようなことが目的なのでしょうか?」
シオンは同調して何をするのかが気になった。
「同調するとシオン殿がさっき言っていたように、感覚が鋭くなったりする。後は言葉にしなくても精神で会話が出来たりもする」
「確かに精霊との契約に似ている所がありますね」
シオンもアレティアと契約している時、シオンの頭の中にアレティアが話しかけてきたのを覚えている。
「恐らくユンクは白霊様の精神にユンク自身の精神で話しかけようとしているのじゃろう」
ラングはユンクがしようとしていることの説明をした。
「ちょっと待ってください!長!」
黙って聞いていたフレンが割り込んできた。
「先程の同調の説明の時に契約している霊獣と精神的に同調させるとおっしゃっていましたが、ユンクは白霊様と契約はしていないですよね?」
「確かに・・・」
シオンは頷く。フレンが言ったことはもっとものことだった。
「そこでユンクは己と契約している霊獣の力を借りるのじゃろうな」
「・・・どういうことですか?」
「人間と霊獣は契約がなきゃ同調は出来ん。じゃが、同じような存在。つまり霊獣と霊獣なら契約がなくとも同調をしようと思えば出来るのじゃ。白霊様も守り神に近いとはいえ霊獣じゃ。ユンクの契約している霊獣全てを使えば白霊様とも同調は出来るじゃろう」
「「・・・・・・・・」」
シオンとフレンはその話を聞いて言葉が出なかった。
なぜなら、瘴魔となった白霊に同調でユンクも含め霊獣達も瘴気に侵されることになるのだ。そんな覚悟を持ってしても白霊をユンクは助けようとしている。
「なぜユンクはそこまで白霊様を助けようとするのでしょうか?」
シオンは少し疑問に思い聞いてみる。
「ユンクの連れている霊獣達は白霊様から託された霊獣なんじゃ。ユンクは幼い頃から舞巫女としての適正も高かったので、契約する前から色々な物が見えたりしたのじゃ。それを人に話したら気味が悪いと周りからは蔑まれるように見られていたんじゃ。10歳になり白霊様とお目通しが掛かれる歳になって、白霊様と初めて会った日。あの日を境にユンクの人生は激変したのじゃ」
「・・・あの時ですか」
フレンも何か思い当たることがあるのだろう。
「本来の舞巫女は霊獣一体を授かり契約するのじゃが、ユンクは白霊様の傍にいた霊獣達に懐かれ、今の5体の霊獣と同時契約を結んでしまったのじゃ。白霊様もそれに異論せずにお祝いにとユンクに霊獣との接し方など色々教えてもらっていたのじゃ。しかし、白霊様は守り神としてもこの土地を見なきゃならん。最初の2ヶ月だけユンクとずっと一緒に過ごしていたのじゃ」
ラングも懐かしそうに話し続けていた。
「ユンクにとっては初めてできた友達なのじゃよ。霊獣と白霊様はな・・・。じゃからじゃろうな。ユンクが白霊様を救いたいと強く願うのは」
「そんなことがあったのですね・・・」
シオンは今のユンクしか知らない。明るくて元気で霊獣と楽しく話していたユンクしか。
「シオン殿。お主は少し特殊な精霊魔法の使い手と聞いている。もし可能ならばユンクを・・・霊獣達も守ってほしい」
ラングはそう言ってシオンに頭を下げた。
「・・・わかりました。できる限り頑張ってみます」
シオンは力強く頷いたのだった。




