第67話 夜明けの奇襲
「シオン君!どういうこと!!」
リィナが部屋から飛び出てきた。
リィナとレィナの部屋にはユンクがいるため、扉の隙間からフィーが入り、皆を起こしてもらったのだ。
「っ!リィナ!服!?」
シオンは出てきたリィナの服を注意した。
リィナは慌てて起きたせいなのか着崩れしており、胸やパンツも見えていた。
「あ・・・」
それに気付いたリィナは顔を真っ赤にした。
「ほらリィナ。早く着替えてきなさい」
部屋の中から着替え終わったレィナとユンクが出てくる。
「リィナって結構大胆なのね」
「いえ、あれはただ気付いていないだけです」
「いやぁーーー!!」
レィナとユンクの会話の中、リィナは部屋へと逃げて行った。
「この場にフレンがいなくてよかったわ。もしいたら目つぶしだったわね」
ユンクが恐ろしいことをさらっと言った。フレンはまだ着替え途中でこの場にいなかったのだ。
「まだ時間はあると思うから僕はカイさん達に知らせてくる」
「なら私は長に伝えてくるわね」
二人はそう言って外に出て行った。
「フィーちゃん、どっちから来るとか方向はわかります?」
「えーと・・・」
レィナは魔物達が集落に入る前に対応しようと考えた。フィーは目を瞑って方向を探っている。
「音は向こうからだけど・・・」
「ならそっちを警戒した方がいいですね」
二人で警戒する方角を決めているとフレンとリィナが着替えを終え、部屋から出てきた。
「おまたせ!」
「シオンとユンクは?」
「シオン君はカイさん達の方へ、ユンクはラングさんに知らせに行きました」
レィナは簡潔に説明した。
「僕はまだ激しくは動けないから長の家へ向かうよ」
「レィナはどうするの?」
「私はフィーちゃんが音が聞こえている方の警戒に当たろうかと」
「なら私も手伝うよ」
「フィーちゃんはシオン君達にこのことを伝えてください」
「わかった!」
そして、薄暗い集落の中は騒々しくなっていった。
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「やっぱり来ましたね」
「うん」
リィナとレィナはフィーが言っていた方向、集落の北東側へと出ていた。そして遠くに魔物の姿がちらほらと見え始めていた。
「探索魔法が使えたらもっと感知できるのにね」
「そうですね。この森では出来ないのですから目だけが頼りです。集落には入れないように対応しましょう」
「りょーかい」
二人は風と水の精霊魔法をそれぞれ使い、遠距離攻撃を始めるのだった。
『皆の者!!もた魔物が押し寄せて来ておる!!今回は客人達も一緒に戦ってくれると言ってくれている!そして、我らが舞巫女が元凶を討伐する間、一緒に耐え抜こうぞ!!』
『『『『おおおおおおーーーーーー!!!!』』』』
広場に集まった集落の戦士たちにラングは演説をし、士気を上げていた。
「おまたせ!」
「お待たせしました」
リィナとレィナが戦士達と入れ替わり戻ってきた。
「では、急ぎましょう」
ユンクを先頭にシオン達は薄暗い森の中へと駆けて行くのだった。
「頑張ってね、兄さん」
「あいつらなら大丈夫だ。それより早く手伝いにいこう」
「そうですね」
集落に残ったリシアとフィルジアはシオン達の背中に向けて話した。そして二人は集落の戦士達の助太刀をしに行くのだった。
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シオン達は薄暗い森の中を走っていた。
途中、魔物も襲い掛かってくるので、そいつらをそれぞれ討伐しながら移動をしていく。
「ねぇ、ユンク。音がしてるのはこっちじゃないよ?」
ユンクに並走するように飛びながらフィーが聞いた。
「ええ、これから行くのは儀式を行う湖ですから」
ユンクは短く答え、走り続ける。
もう太陽は昇ってもいい時間なのだが、森の深くに進むほど霧が濃くなってきており、太陽の光もわずかにしか届かない状況になっていた。
皆ははぐれないように速度を落として走り続けた。そのまま走っていると徐々に木々が少なくなってきた。
そしてついに開けた場所に出た。
そこは広い湖になっており、霧が幻想的な空気を漂わせていた。湖の周囲には光の小さな球も浮遊している。
「ここは・・・」
シオンはそう呟いた。
「ここは白霊様と対面する儀式場の一つです。本来は舞巫女一人で訪れるのが慣わしなのですが」
ユンクがこの場所について説明した。
「対面するってことは白霊様をここに呼ぶことが出来るということ?」
「はい、そうです」
ユンクはリィナの質問に肯定した。
「皆さん。白霊様をお呼びしますので少々ここでお待ちください」
ユンクはそう言って着ている服を脱ぎ始めた。ユンクはいつも踊り子のような服だが、素肌は隠れていた。今その素肌を露わにして、かなり際どい踊り子の衣装の姿になる。一部は透けている素材を使っているのか、妙に艶めかしい感じだ。
「シオン君はああいうのが好きなの?」
「シオン君、そうなんですか?」
シオンがユンクの姿に見惚れているのに気付いた二人が問い詰めてきた。
「えっと・・・嫌いではないかな?」
シオンは二人の圧力に押されつつ何とか答える。
「お前たちはこんな時でも相変わらずだな」
「変に緊張するよりはいいのではないしょうか?」
カイとルシルは少し呆れながら見ていた。
ユンクは一人で湖の傍らに静かに立つ。そこへユンクと契約している霊獣達がユンクを囲うようにどこからともなく現れた。
ユンクはそのまま静かに舞を踊り出す。音楽等は無い。あるとすれば森からの鳥や虫の声、湖から小川へと流れる水の細流の音だけだ。
するとユンクと霊獣達は仄かな光に包まれ始めた。湖に浮遊していた光の珠もユンクの周りに集まり始めた。
「綺麗・・・」
「本当ですね・・・」
リィナとレィナもその神秘的な光景を目の当たりにして呟いた。
神秘的な光景が暫く続いていると、瘴魔や魔人の独特の嫌な気配が近付いて来るのがわかった。
「皆!来るよ!」
シオンは皆に知らせた。その時にはいつもの通り、リィナとレィナはシオンの両頬にそれぞれキスをしていた。
シオンも照れはあるが、来るとわかっていたので二人にお礼を言い、そのまま武器を構える。皆も武器を構えるが、ユンクだけはまだ踊り続けている。
そして
ばっしゃーーーーん!!!
湖の奥で大きな水柱が立った。
水柱が収まるとそこには以前見た時より黒く染まった大蛇が佇んでいた。
「白霊様・・・」
ユンクは踊りをやめ、白霊を見上げていた。
「ユンク!」
シオンはユンクの側に行き、ユンクを庇うように前に出る。
「白霊様!!」
ユンクはシオンの後ろで、白霊に呼び掛ける。
しかし
「ユンク!」
シオンはユンクを抱えて、その場を離脱する。側にいた霊獣や後ろに控えていた皆も左右に散った。
そして、シオン達がいた場所に巨大な水鉄砲が複数飛来し、直線に地面を抉っていった。
「ユンク、今は白霊様を止めるためにも戦わないと」
シオンは抱えているユンクの目を見て言う。
「・・・そうね。今語り掛けようにもあの状態では厳しいわ」
ユンクは白霊を助けようと考えているので、心苦しいが戦うことを決意した。
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「・・・・・・あの男はここにいないのですかねぇ」
今戦おうとしているシオン達を上空から見下ろしながら呟いた。
「おい、ベッフェル」
そこへやたら筋肉質な大男がやって来た。
「おや、アスラさんじゃないですか。お久しぶりです。封印は解けたのですか?」
「全てではないが、動けるようにはなった」
アスラと呼ばれた大男はそう答えた。
「相変わらずお前は実験か?」
「まぁ・・・そうですね」
ベッフェルは曖昧に答える。
「実験もいいが、少し手を貸して貰えんか?バレスは意外と固くてな、力が戻ってない俺にはちと厳しいんだ」
アスラはベッフェルにお願いをしてきた。
「まだやりたいことはあったのですが・・・まぁ、いいでしょう。途中私の実験室に寄ってからでも?」
「それぐらいなら構わない」
ベッフェルは瘴魔・白霊が負けるわけがないと考えていた。例えそれが太陽と月の巫女だとしても。普通の生物ではない白霊は物理でも魔法でも普通の攻撃手段で殺し切ることなど不可能なのだから。
「後で回収すればいいですかね・・・。それでは参りましょうか」
ベッフェルとアスラは北へ向かって移動を開始する。その方角にある小国バレスへと姿を消して行った。




