第66話 ユンクと霊獣
「ユンク、先程霊獣を使い呼び寄せると言ったな」
長のラングがユンクを睨みながら言った。
皆での話し合いの後、この場にはラングとユンク、フレンが残っていた。
「はい」
「今の白霊様を誘き寄せるということはお主に付いて来てくれている霊獣に・・」
「わかっております。わかって・・・」
ユンクは今にも泣きだしそうな顔をした。
「長、ユンクは何を考えているのです?」
フレンは状況がわからず、ラングに聞いた。
「フレン、霊獣とは何か知っているか?」
「自然界そのものに近い生物としかわかりません」
自然界そのものとは精霊のことを指している。
「そうじゃ。故に自然そのものと生物の中間な存在であるため、少し不安定な存在とも言える」
「不安定・・・ですか」
「シオン殿達の話からすると瘴気とやらは自然界の力を侵食する傾向があるように考えられる。実際お主も魔力ではなくマナが侵食されていたようじゃしの」
「そうだったのですか」
フレンは治療に関しては特に聞いていなかったのだ。
「白霊様も格は違えど霊獣じゃ。あの場所にユンクの霊獣を集めれば、呼応して同じ霊獣としての白霊様もやって来るじゃろう。じゃがユンクの霊獣達は瘴気に侵された白霊様と対峙しなきゃならん。ヘタをすると霊獣達も瘴気に侵されてしまうかもしれん」
ラングが懸念していたことを話した。
「・・・そうならないように私が全力で守ります」
「・・・ユンク、お主は共鳴を使うつもりじゃな」
「はい」
「相手は白霊様と言えど瘴魔じゃ。どうなるかわからんぞ?」
「それでも可能性があるのなら」
暫くの間、ラングとユンクはお互いの目を見続けた。
「・・・わかった。絶対戻ってくるのじゃぞ」
「許しをいただきありがとうございます」
ユンクはラングに向かって頭を下げた。そしてそのままユンクは出て行った。
「長、共鳴とはなんなのですか?」
「本来は舞巫女にしか伝えんことなのじゃが・・・。ことがことじゃ。夜にでもシオン殿に説明する。その時にお主も同席させよう。説明はその時にでもしよう」
ラングはそう言って、フレンにユンクに付いて行くように促した。
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「皆、昨日はありがとね」
ユンクは森の中で霊獣達と話し込んでいた。脇には狼が寝ており、近くの切り株には大きな鳥、他にも熊や亀、狐のようなものも近くで寛いでいる。
「うん、大丈夫。・・・え?それは・・・」
霊獣達もユンクの様子がおかしいことに気付いたのか、何か訴えかけているようだ。
「うん・・・皆、ありがとね」
ユンクは霊獣達に何か言われたのか、涙目になりながらお礼を言った。
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「明日の戦いに何かあるのかな」
そんな様子を偶然見てしまったシオン達は暗い表情をしていた。
「私たちがもっと強くなっていたら、今回の襲撃とかも防げたことなのかな?」
リィナがシオンに向かって言ってきた。
「昨日の白霊様と対峙したときだって、私達がもっと強かったら助けられたのかな?」
「リィナ・・・」
「シオン君、もっと強くなる方法はないのでしょうか?」
レィナも同じことを言ってきた。
「シオン君は相手が瘴魔でなかったら助けられたのではないですか?」
「・・・瘴魔じゃなかったら、無茶すればできたかもしれないけど・・・」
シオンは全力で戦うと代償があるので使いたくはないが、いざという時には使う覚悟だ。
「シオン君、私達もっと強くなりたい」
「何かありませんか?すぐに強くなれる方法は?」
「・・・・・・・」
シオンは二人の真剣な眼差しを見て教えていいものか迷っていた。
確かに二人が言うように、精霊魔法の使い手ならば一時的に強くなる方法はある。だがそれはシオンのように何かしらの代償あっての力で、あまりお勧めは出来ない。それに二人の場合はマナが特殊だ。できたとしても操作が出来るかが分からなかった。
「二人は一時的だけど強くなる方法を知っているはずだよ」
「「え?」」
シオンは少しだけヒントを与えた。
それは出会ったばっかりの時、王都で周辺でシオンがピンチになった時に使った状態のことだ。当時は実力は今ほどなかった。それなのに今の強さ以上の力をあの時だけ使えていた。
シオンが言うのはその状態へ自分の意志でなる方法。無意識で使うのと違い、意識して使うようになれば、それに依存してしまう。使い過ぎると体やマナの流れに負荷が掛かり過ぎて、何が起こるかわからない。だから、シオンはあまり教えたくないのだ。
二人はシオンの言っている意味が解っていなかった。シオンも今はそれ以上のヒントを出すことはなかった。
「・・・シオン」
シオンの肩の上でフィーが悲しそうに呟いた。
「シオンさん」
「・・・フレンさん」
そこへフレンがやって来た。
「シオンさん、長より伝言です。今日の陽が沈んだら家に来て欲しいとのことです」
「私達も?」
「いえ、シオンさんだけのようです」
フレンは先程に長から言われたことを伝えた。
「わかりました、時間になったら伺います」
「よろしくお願いします」
そしてフレンはユンクの方へと歩いて行った。
「ラングさんから何か伝えることがあるのでしょうか?」
「もしかするとユンクに関わることかもしれないね」
レィナとリィナはシオンに話しかけてきた。
「二人を呼ばないと言うことは、あまり公にしたくないことなのかもしれない」
シオンはそう解釈していた。
その日、陽が落ちた後、リィナとレィナはユンクの家で待機し、シオンは長の家へと向かうのだった。
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「フィルジア、明日はお前が付いて行った方がいいんじゃねーか?」
カイは借りている小屋で寛いでいる時に、フィルジアに聞いた。
「もしここに瘴魔が現れたときに、対応できる者がいた方がいいだろう?」
「まぁ・・・そうか」
カイはあっさりとフィルジアに納得させられてしまった。
「リシアちゃん、もし戦いになっても無理はしないでね?」
「はい、気を付けます」
「危なくなってらフィルジアを盾にしていいからね?」
「わかりました」
ルシルはそんな事を言い、リシアも了承した。
「そこ!勝手に俺を盾にするな!」
フィルジアにも聞こえたらしく、話に加わってきた。
「でもフィルジアはリシアちゃんを守るのでしょう?」
「それは・・・そうだが・・・」
「なら、昨日みたいなことにならないように身を挺して守らないと」
フィルジアはルシルに諭され始めた。
「フィルジアさん、昨日みたいな無茶はしないので大丈夫ですよ」
フィルジアが困っていたので、リシアは助け船のつもりで言った。
フィルジアはリシアにそう言われたことで、絶対今度こそ守ろうと誓うのであった。
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「共鳴か・・・」
今、シオンはフレンと共にラングの家で話を聞き、家から出てきた所だ。
「シオンはどう考えている?」「フレンは何か思い付きました?」
同時に二人は同じ事を聞いた。二人はラングの家で話している内に仲が少し良くなっていた。
「私は特に思い付かない」
フレンは首を横に振った。
「僕も実際に共鳴を見ないことには何とも言えないかな」
「そうか・・・」
二人は暫く無言で歩いた。
「シオン、押し付けるようで悪いが、ユンクを守ってくれないか?共鳴は普段なら危なく無いだろうが、今の状態の相手だと不味い気がする」
「わかりました。ユンクのことは任せてください」
「よろしく頼みます」
フレンはシオンを信じることしか出来ないのが少し悔しそうだった。
二人は話しながらユンクの家に入って行った。
その日はユンクの部屋にユンク、リィナ、レィナが一緒に寝ることになり、シオンはフレンの部屋で寝ることになった。フィーはなぜかシオンの傍にいることになった。
「ユンクも嬉しいんじゃないかな?」
「どういうこと?」
寝る前にフレンがシオンに話しかけてきた。
「ユンクは舞巫女で対等の友人はいなかったから、同年代の友人は初めてだからね」
「ああ、そういうことか」
実際、リィナとレィナも王女であったため同年代の友人はいないと言ってもいい。似た者同士で共感が持てる所があったのだろう。
「シオンにも感謝しているよ」
フレンはシオンにも感謝を言ってきた。
「シオンがいなければ私はここに今いなかっただろうしね」
フレンは微笑しながら言ってきた。
「そろそろ寝るとしようか」
「そうだね、お休み」
「ああ、お休み」
二人はそのまま目を閉じ、明日の決戦へ向けて眠りに就くのであった。
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「シオン!!起きて!!!シオン!!!」
まだ陽が出ていない暗い部屋の中、フィーの声が響いた。
「ん?・・・フィー?」
シオンは思い瞼を擦りながら返事をする。
「大変!!あの音がしてるの!!」
フィーはシオンの耳元で言ってきた。
「何だって!!!」
シオンは慌てて飛び起き、皆に知らせるのであった。




