第62話 救援
『怪我した奴は下がれ!』
『向こうからも来るぞ!』
集落ではあちこちから戦闘音と人々の声が行き交っていた。
『っ!後ろだ!』
『うわぁ!!』
一人の戦士の後ろから、甲虫の魔物が突撃してきた。
だか、甲虫は戦士の体を傷つけること無く落とされる。
戦士の目の前では、狼が甲虫を引き裂いていた。
『あ、ありがとうございます』
戦士は狼に礼を言う。
この狼はユンクと契約している霊獣の1体だ。集落を守って欲しいとユンクに頼まれて、早朝から集落の警戒をしていたのだ。
陽が落ち、暗くなった空を見ると大きな鳥の霊獣も空から魔物退治をしている。
『・・・魔物の数が多過ぎる』
一人の戦士が全体を見渡して呟いた。
霊獣達も奮闘はしているのだが、魔物の数が多過ぎて苦戦していた。
霊獣は妖精と同じ様に精霊と生物の間のような存在だ。怪我もするしマナを源として動いているので、戦い続ければ疲弊していく。
『向こうからでっかいのが来るぞ!!』
そんな声がまた上がった。
『・・・ここまでなのか』
戦士の誰かが呟いた。戦力差は歴然、諦めが頭の中に宿り始めた。そこへ、1体のゴーレムがやって来た。
『う、うわあぁぁぁーー』
ゴーレムは5mはある。その巨体を目撃し、戦士の中でも逃げ始める人も出てきた。
ゴーレムは腕を振り上げ、一人の戦士を潰そうとしてきた。
『させません!』
ゴーレムの頭の横から白い光が突撃してきた。
『早く立ち直して!!』
白い光に包まれたユンクが戦士に言った。
『は、はい!!巫女様!!』
その戦士の言葉で折れかけていた戦士達の心がまた震え上がるのだった。
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時は少し遡る。
シオン達は集落の近くにいた魔物を倒しながら進んでいた。
「すげぇ数だな!」
カイはフレンを背負いながら、片手で魔物を倒し続けている。
「私は空から集落へと先行します!!」
ユンクは白い光を纏いながら言った。
「わかりました!僕達はこのまま倒しながら集落へと向かいます!」
シオン達も剣や精霊魔法で魔物を倒しながら答える。
「っ!シオン!また音が聞こえる!!」
フィーがまたあの音が響いていると教えてくれる。
「急ごう!」
集落までもう少し。
シオン達は先を急ぐのであった。
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蝙蝠の瘴魔は口から毒液を空から吐き出して、リシアとフィルジア、ルシルの3人を狙っていた。
「暗くて狙いにくいな」
フィルジアは樹を盾にしながら上空を見上げて言った。
「私が火の魔法を空に撃ちます」
フィルジアの脇に控えていたルシルが提案してきた。
「頼む。リシア!ルシルが火の魔法を撃つ!見えたら奴の羽を狙え!」
フィルジアは少し離れている場所で隠れているリシアに言った。
「わかりました!」
樹の陰からリシアの返事が聞こえた。
その時、また毒液が降ってきた。
「そこ!」
ルシルは毒液が降ってきた場所を狙い、無詠唱でファイアボールを撃った。
ルシルは下位魔法だったら無詠唱で撃つことができる。
魔法の詠唱とは言葉で魔力に指向性を持たせて発動する。無詠唱は言葉に発しないで、魔法を発動するものだ。
精霊魔法と近いように思えるが、まったく違う別物だ。
精霊魔法は世界に事象するマナを直接操作するので、応用範囲が広い。
無詠唱での魔法は、魔力を操作してマナに働き掛けるため、詠唱をして使う魔法と同じことしか基本的に出来ないのだ。
それでも詠唱しない分、早く発動する事が可能だ。
ルシルも3発連続でファイアボールを撃っている。
「そこか!」
フィルジアはファイアボールに照らされた蝙蝠の姿を捕らえるや、風を纏わせた矢を放った。
矢は蝙蝠の脇を通り過ぎたが、纏っていた風の影響を受け、バランスを崩した。
「今です!!」
リシアが水の槍を2本放つ。水の槍はバランスを崩した蝙蝠の片翼を貫いた。
蝙蝠は飛行を維持できずに、くるくる回りながら落下した。
3人は蝙蝠が落ちた場所へと走る。
どんッ!
走っていたリシアの横の樹に毒液が矢の形を成して刺さった。毒液で出来た矢は樹を侵食して腐らせていく。飛んできた方向を見ると、蝙蝠の瘴魔は地に足を付けて、口から毒液の矢を放って来ていた。
「っ!?」
リシアは横に跳び、毒液の矢を避けた。リシアがいた場所に毒液の矢が通り過ぎる。
リシアの方を向いている内にフィルジアは火の精霊魔法を纏わせた矢を放つ。
蝙蝠は3mはある巨体にも関わらず、軽快な動きで避けようとする。
「甘い!」
フィルジアこ言葉と共に通り過ぎようとした矢が爆発した。
蝙蝠は爆発に巻き込まれ、胴体の一部が焼け焦げた。今もフィルジアを睨み、苦しそうにしている。
リシアはフィルジアに気を取られている内に、蝙蝠の死角に入り水の精霊魔法で刀身を伸ばした短剣で腕である両翼を切り落とした。
蝙蝠はリシアの方を向こうとするが、そこにはリシアの姿はなかった。
リシアは両翼を切り落とした時には蝙蝠の頭より高い位置に跳躍していた。
「はっ!」
リシアは蝙蝠の首辺りを狙い、先程と同じ様に水を纏わせた短剣で、体重を乗せて振り切った。
蝙蝠の頭はリシアの攻撃で滑り落ちる様に地面に落ちた。リシアもそのまま地面に着地した。その時
「リシア!!」
「っ!?」
フィルジアの声が上がったが、気付いたらリシアは左肩辺りに鋭い痛みが走っていた。
リシアは肩を見てみると、鋭い何かがかすった様な跡があった。その部分の服は破れ、皮膚も黒っぽく変色していた。
蝙蝠は頭だけでリシアに向かって毒液の矢を放ったのだ。その攻撃を最後に蝙蝠の瘴魔は絶命した。
そして、リシアはその場で立っていられなくなり、地面に倒れた。
「リシア!大丈夫か!」
「リシアちゃん!!」
フィルジアとルシルがリシアの側で声を掛ける。
「まずい!毒だ!何かで縛るぞ!」
「解毒の魔法も効きづらいわ!もしかして瘴気!?早くレィナさんに!」
「くそ!俺の治癒魔法でもこの指輪でも駄目だ!急ぐぞ!」
フィルジアとルシルが何か騒いでいる。
フィルジアはリシアを抱えて走りだした。
リシアは二人の会話を最後に意識を失った。
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シオン達は集落に到着すると、カイ以外は集落の戦士達と連携して魔物を討伐していった。
カイは長の家にフレンを運びに行った。長の家付近はユンクの亀の霊獣が結界を張っていおり怪我人もそこで治療を受けていた。
「フレンなのか!?」
長は担ぎ込まれたフレンを見て驚いていた。
「ああ、遺跡の奥にいたみたいだぜ」
カイは簡潔に説明をした。
「オレも魔物を片付けてくっからそいつ頼むぜ」
「お、おお」
カイも長の家を後にし、魔物討伐へと狩り出るのだった。
『坊主!助かったぞ!』
シオンは助けた戦士にお礼を言われたが、言葉が理解できなかった。だが、顔を見れば喜んでいるのはわかった。
「シオン君、こちらはだいぶ片付きました」
「こっちも終わったよ」
レィナとリィナはシオンの方に報告に来た。
「数は多かったけど、中型や大型が少なかったですね」
「うん。思ったより早く片付いちゃった」
レィナとリィナがそんなことを話していた。
「フィー、あの音は聞こえる?」
「ううん、今は聞こえないよ」
シオンの近くにいたフィーは首を振った。シオンやリィナ、レィナがいた所の魔物の波は収まっていた。
「なら今ので最後か?」
シオンは反対方向に行っているカイやユンクの方を見た。
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「ユンク!大丈夫か!」
「は、はい!私は大丈夫です!」
ユンクは先に到着してあちこち救援をしながら飛び回っていたため、多少疲弊をしていた。
カイは出来るだけ中型以上の魔物を中心に討伐していく。集落の戦士はユンクやカイの参戦で士気が上がっているため、小型の魔物なら普通に討伐できる。数が多い所はユンクが率先して数を減らしていく。
「ふぅ、これで終わりか?」
カイは大型の魔物を倒し、周りを見渡して一息ついた。
『兄ちゃんありがとな!』
『助かったぞ!』
カイの周りに集落の戦士達が集まってきて、お礼を言った。
「いいっていいって」
カイは言葉こそ解らなかったが、お礼を言っているのは解った。
「カイさん、ありがとうございました」
ユンクも近くに来てお礼を言った。
「いいってことよ。それより長の家にフレンって奴置いてきたから行こうぜ」
「は、はい!皆さんもありがとうございました」
ユンクは最後に集落の戦士達にお礼を言った。
そして、カイとユンクは長の家へと向かった。




