第61話 脱出
シオン達はカイ達が見つけた通路に入り走っていた。だが、ここは狭く、古いからなのか一部の床が盛り上がったり、凹んだりしていた上に、急な上り坂でもあった。足を取られそうになる人が2人いた。
「うゎっと!」
「きゃっ!」
リィナとレィナだ。二人は王室育ちのためこのような暗く、足場の悪い通路を走ることはまずなかった。
カイ達は旅慣れしている。
シオンとリシアは森の中を駆け回っていたため、足場の悪いところでも身軽に動けた。
ユンクもこの森で育っているので、大丈夫なようだ。
「シオン、そいつ貸せ」
カイがシオンの前に来て、シオンが背負っているフレンを指差して言ってきた。
「お前はその二人を持て」
どうやらリィナとレィナを担いで行けと言っているようだ。
「・・・わかりました」
シオンは背負っていたフレンをカイに渡した。シオンは一度立ち止まり
「リィナ!僕の背中に!レィナはこっちへ!」
シオンは二人に指示をだした。
リィナはシオンの背中に乗り、おんぶする体制でしがみつく。
レィナはシオンの前に行くとお姫様抱っこをされた。
「あ!レィナずるい!」
リィナは少し不服そうだ。
「とりあえずこのまま走るから、リィナはしっかり捕まってて!」
「・・・わかった」
リィナは渋々頷いた。
「お前ら!急げ!」
カイから声が掛かる。
「行くよ!」
シオンは二人を抱えているにも関わらず、先程と変わらない速度で走りだした。
「こっちから風が来てるよ!」
いつの間にかカイの先を飛んでいたフィーが誘導し始める。
「おっし!」
カイはフィーに続いていく。
他の皆もそれに続く。
最後にリィナとレィナを抱えたシオンが走る。
「開けた場所に出るぞ!」
カイが後ろにいる皆に前方の状況を伝える。
そこは地底湖だった。
そして、地底湖から緩やかな川となり、川の流れる先に小さな光が見えた。
「あの光を目指すぞ!」
カイはフィーと顔を見合せ、その光を目指すことにする。
「二人とも、もう平気?」
シオンはリィナとレィナに聞く。
湖の辺りは広く、足場も先程よりまだ走りやすい感じだった。
「これなら平気だよ」
「大丈夫です!」
二人は下ろされて走り出す。
バサバサバサバサバサ!!
突然、羽音が後ろから響いてきた。
「シオン君、あれって・・・」
レィナが青い顔でシオンに聞いてきた。
「まずい!皆、あれに噛まれると毒食らうよ」
シオンとレィナは地下深くでみた蝙蝠の魔物が多数、後ろの穴から出てきたのだ。
そして、真っ直ぐにシオン達がいる方向を目指してくる。
「はっ!」
シオンは走りながら後ろを振り向き、蝙蝠が固まっている所に向かって、風の精霊魔法で攻撃を仕掛ける。
一陣の風は蝙蝠を複数切り刻み落とすことに成功するが、数が多すぎて全てを倒すことには至らない。
「私も!」
「行きます!」
リィナとレィナも回り込まれないように、飛び出してきている蝙蝠に向かって、精霊魔法を放つ。
リィナは焼き払い、リィナは氷の矢を複数創り出し貫く。
三人でいくら攻撃しても数を減らさずに、遂にカイ達の目の前に回り込まれる。
「やらせません!」
「道を開けろ!」
ルシルとフィルジアも魔法と矢で攻撃を仕掛ける。
それでも、数が減らずに、遂に完全に囲まれてしまい、足が止まってしまう。
「クソ!数多すぎだろ!」
カイはフレンを背負いながら片手で剣を構え、吐き捨てるように言った。
それもそのはずだ。皆を囲む蝙蝠は数が多く、黒い壁のように渦を巻いているのだから。
「シオン、何とかできないか?」
フィルジアはシオンに聞いてきた。
「・・・少し無理をすればな」
「「それはダメ!!」」
シオンが無理をすると言いだそうとした瞬間にリィナとレィナが声を上げ、シオンの言葉を遮った。
「シオン君、まだ本調子じゃないでしょ!」
「そうです。まだ回復しきれていないとフィーちゃんから聞いているんです!」
シオンはフィーを見ると目線を逸らした。
「だから、私達が!」
「道を開きます!」
この会話の間にも、蝙蝠たちはシオン達との間を徐々に狭めて来ている。
「でもどうやって切り抜けるつもり?威力ありすぎると崩れるかもしれないよ」
シオンは二人に聞く。
「「シオン君の真似をする(します)」」
「真似?」
シオンは二人の言っている意味が分からなかった。
「出来そう?」
「リィナと一緒なら」
「私もレィナと一緒なら」
二人は手を繋ぎ集中する。
「いっけー!!」「いきます!!」
二人は同時に声を上げ、腕を振り上げる。
ジジッ!ガガガガガガガガガン!!!!
青色の稲妻がシオン達の周りを一周したと思ったら、そこから外側に向けて放射状に電撃が多数発生した。
青白い電撃はシオン達の方には一切来ないまま、蝙蝠だけを次々と感電していき、離れた所にいる蝙蝠まで焼き落とす。
電撃の嵐は一瞬だったが、周囲に蝙蝠が焼けた異臭を匂わせた。
『・・・・・・・』
リィナとレィナ以外は呆然としていた。
「「やったーーーー!!」」
「やったね!」「できました!!」
リィナとレィナはシオンに抱き付きながら、喜び始めた。
「すげぇな・・・。って、今のうちに走るぞ!!」
カイも呆然としていたが、我を取り戻し、叫んだ。その声で皆も我に返り走り出そうとする。
「ほら、二人も行くよ!」
シオンは自分の雷の精霊魔法を真似されるとは思っていなかったので、内心はかなり同様していた。
「うん!」「はい!」
二人は元気に返事をして走り出した。
そして、そのまま川に沿って走り続け、外へと出て足を一旦止める。。
周りを見ると川はこの先小さな滝になっているようだ。そして、正面に太陽が沈んでいくのが見える。
「ユンク、集落はどっちかわかる?」
シオンはユンクに聞いた。ベッフェルの話だと集落に魔物が集まっているかもしれないのだ。
「ちょっと待って」
ユンクは周りを見渡し始める。
「ねぇ!あれって煙じゃない!?」
そこへリシアが何か見つけたらしく、指をさして言ってきた。
「あの場所は集落です!やはり魔物が!」
ユンクはリシアが指さした方向を見て言った。
「あの煙を目印にして行くぞ!」
カイがそう言って走り出す。
「でも、間に合うでしょうか?」
レィナが不安そうな顔で聞いてきた。
「集落の者も戦っているでしょうが、霊獣も戦っているので持ってくれるとは思います!」
ユンクは霊獣と繋がりがあるので、戦っていることがわかるそうだ。
「それなら余計に早く行って加勢しないと!」
リィナはユンクの言葉を聞き、速度を上げようとする。
その時
「リィナ!!」
「え?きゃっ!?」
シオンはリィナに飛び付き、押し倒す。
その後、リィナがいたところを黒い影が通りすぎる。
リィナの悲鳴にカイ達も足を止める。
「今度はなんなんだ?」
カイは上昇していった黒い影を目で追った。
「さっきの蝙蝠?」
「いや、大きさが違いすぎる!」
ルシルとフィルジアが正体に気付いた。
先程の蝙蝠は大群ではあったが1体の大きさはそれほど大きくはなかった。だが、今の目の前で飛んでいる奴は3m程の大きさがある。
「急いでるってのに、何でこう次々と来やがる」
カイは舌打ちする。
「こいつは瘴魔です!僕らで対処しますから、カイさん達は先に行って下さい!」
シオンは蝙蝠が瘴気を放っているのに気付いた。
「いや、先に行くのはお前達だ」
フィルジアがそう言ってきた。
「俺とリシアがいれば瘴魔は倒すことはできる。だから、先に行け。シオン」
「そうだよ、兄さん。私とフィルジアさんでやっつけるから」
リシアもそう言ってくる。
「カイとルシルもシオン達と先に行け」
フィルジアは二人にも声を掛けた。
「・・・私は残ります。二人に何かあったときにフォローしますから」
「オレはこいつ背負ってるし、先に行くぜ」
ここにはフィルジアとリシアとルシルが残るようだ。
「わかりました。フィルジアさん、リシアよろしくお願いします。リシアも怪我はしないように」
「わかってます。兄さんも頑張って下さい」
シオン達は3人を残し、走りだした。
その後ろを蝙蝠の瘴魔は追いかけようとする。
「させません!」
リシアが放った水の槍が蝙蝠の羽をかすめた。
「兄さんの邪魔はさせません」
「リシア、早く片付けるぞ」
フィルジアも弓を引き絞り、構えを取る。
こうしてフィルジアとリシア、ルシルの戦闘が始まった。




