第60話 瘴魔・大蛇の襲来
カイやリィナ達が逃げてきたのは、今シオン達が見上げている先にいる20mはあろう漆黒の大蛇だった。大蛇は口から長い舌と黒い霧の様なものを出していた。
「あれって・・・」
「そうだ。瘴魔だ!」
シオンの呟きにカイが答えた。
「ちょっと大き過ぎません!?」
「私も最初見た時思った」
レィナは驚き、リィナは頷いて答えていた。
「こいつ瘴魔だから、オレの攻撃が効かねぇ」
「私の精霊魔法も相手が大きすぎて、効いてないみたいなの」
カイとリィナが説明する。
「それに場所も悪いです」
「そうだな。この場所で奴を吹っ飛ばせるほどの攻撃をしたら、俺たちが生き埋めになる」
ルシルとフィルジアも説明をしてきた。
「だからと言って、逃げようにもっ!!」
ドッゴオォォォォン!!!
カイが話している最中に、漆黒の大蛇は頭からシオン達がいる場所に神殿も破壊しながら突っ込んできた。
「クソ!みんな無事か!!」
カイは咄嗟にルシルを抱え跳躍して避けた。近くにフィルジアもリィナを抱えて避けていた。リィナはフィーを手に掴んでいた。
「こっちは大丈夫です!!」
「兄さん・・・」
シオンはフレンを背負い、リシアを脇に抱え、カイ達とは別方向に避けていた。
「私たちも大丈夫です!!」
レィナはユンクを抱え、シオンと同じ方へ避けていた。
確認している間にも大蛇は破壊された壁から顔を出し、シオン達の方を睨みつけていた。
「っ!レィナ!向こうへ!!」
シオンはフレンとリシアを持ったまま、レィナと大蛇の脇へと走り出した。次の瞬間、シオン達がいた辺りの地面から、大量の水が噴き出し始めた。
「何してやがんだ!!」
カイはダメもとで大蛇の顔面を思いっきり斬り付けた。だが、
ガキン!!
大きな音を響かせて、カイの剣は弾かれる。
「やっぱりダメか」
カイは後ろに下がりつつ舌を打つ。
「私のシオン君とレィナに何してんのよ!!」
次はリィナが巨大な炎球を出して、大蛇に放った。
炎球は大蛇の顔を全て埋め尽くすほどの大きさだ。だが
しゅぅぅぅぅぅ!!
炎球が衝突する直前に水の霧の様な物で消されてしまった。
「うそ!!」
リィナも驚愕している。
「これならどうですか!!」
ルシルは地属性中級魔法のアースランスを連続で放つ。
がらがらがらがら!!!
だが、衝突前に瘴気によって阻まれてしまう。
「やはりだめでしたか・・・」
ルシルは肩を落とす。
「でも、おかしくないか?」
カイが突然そんなことを言いだした。
「何でオレ達が攻撃しているのに奴はこっちを攻撃しない」
「・・・なにか狙っているのか?」
カイの言葉にフィルジアも思案する。
カイの言う通り、大蛇は攻撃を多く仕掛けているカイ達の方ではなく、相変わらずシオン達を狙い続けていた。
「それなら今のうちに逃げ道を探しませんか?」
ルシルが提案する。
「そうだな。あれをここで倒すのは困難だ」
「だな、一応目立たない様にして行くぞ」
カイ達は逃げ道を探し始めた。
「何でこっちばっかり狙うのですか!!」
レィナはユンクを抱えながら上手く避け続けていた。
「確かにちょっとおかしいね!っと」
シオンもフレンとリシアを抱えながら上手く避け続けている。
「兄さん、何か考えあるの?」
リシアは抱えられながらシオンに聞いた。
「今はどうやって隙を作って逃げるか模索中っ!だよ」
シオンもこの場所でこの相手は悪すぎると踏んでいた。
「ユンク、大丈夫ですか?」
レィナはユンクが先程から声を発さないので心配になり聞いた。
「・・・・・・・・・・・」
「ユンク?」
「え!ああ、ごめんなさい。で、なに?」
「いえ、先ほどっ!から黙ったままだったので」
「うん・・・」
そしてユンクはこちらを追ってきている大蛇をまた見続けていた。
避け続けて跳躍した時にシオンの目にある物が目に入った。
「あれだ!レィナ、左の方へ上手く避けて進んでくれ!」
「わかりました!」
シオンとレィナは攻撃を躱しながら大蛇を誘導する。
「リシア!天井近くまで跳ぶから捕まってて!」
「わ、分かった」
シオンはそう言うと一度足を止め、深く腰を落とすと一気に天井近くまで跳躍する。その高さは10mほどに達する。
「そこ!」
シオンは天井から突き出ている岩の根本に向かってマナの塊を岩の隙間に撃ち込み、爆破させた。
突き出した岩は根元が破壊され、大蛇の上に落ちていった。
『シャーーーー!!』
大蛇は悲鳴のような声を発しながら、少し離れていく。
シオンはフレンとリシアを抱えながら上手く着地して大蛇を見る。レィナも近くまでやって来た。
「やはり傷は負っていないようですね」
レィナは大蛇を見て言う。
「脅かしたに近いことしかやってないからね」
シオンも瘴気があるから効くとほ思っていない。だが、これだけ大規模な攻撃をすれば、何か変わると考えていた。結果、多少状況を変えることが出来た。シオンはリシアを下ろし、レィナもユンクを下ろす。だが
キーーーーーーーーーーーーン!!
大蛇が尻尾の先端の方を振り回し始めた。
蛇が尻尾の方を振り回した時に、例の高い音が鳴り響いた。
「こいつが出している音だったのか!」
シオンはフレンが出している音だと考えていたので、驚いた。
「あの行動は・・・白霊様?」
ユンクは小さな声で呟く。
「でも兄さん、魔物とかこっちに来ていないですよ」
リシアは周りを見渡して言った。
「・・・まさか・・・集落の方に!!」
「正解ですよ。お嬢さん」
レィナの言葉を肯定する声が響いた。
「ベッフェル!!」
シオンは叫んだ。
「どうですか?この子を瘴化させるのに苦労したんですよ」
ベッフェルは大蛇を見下ろしながら言った。
「この子の能力は凄いですよ。生物にある程度とは言え、音を響きかせて命令するのですから!」
ベッフェルは興奮しながら言う。
「あなた!白霊様に何したんですか!!」
ユンクはベッフェルに向かって叫んだ。
「あや?貴方も面白い力をお持ちのようで」
ベッフェルはユンクを見て言った。
「そんなことより白霊様に何をしたかと聞いています!!」
「ただ瘴玉を埋め込んで、瘴化させただけですよ」
ベッフェルは隠すこと無く言う。
「なんてこと・・・。白霊様!!」
ユンクは大蛇に向かって叫ぶ。
「そんな事しても無駄ですよ。もうこの子は落ちたのでっ!?」
ベッフェルは大蛇 白霊の尻尾の振り回しによって吹っ飛ばされた。
「白霊様!!」
『・・・逃げ・・・時間・・。我・・・・ころ・・・』
「え?」
ユンクは頭の中に大蛇 白霊の声が響いた。漆黒の大蛇は何かに耐えるように踞っている。
「っ皆さん!今のうちに逃げましょう!」
ユンクは目に涙を溜めながら叫んだ。
「こっちだ!!」
離れた場所からカイとリィナ達が手を振って呼んでいた。
「わかった。あそこから逃げよう!」
シオン達はカイとリィナ達がいる方へ走りだした。
「まだ自我があるとは驚きですねぇ・・・」
ベッフェルはふらふらと大蛇 白霊に近寄りながら呟く。
「なら、もう少し入れてみましょうか・・・」
ベッフェルは瘴玉を取り出し、不気味な笑顔をしながら言うのだった。




