第59話 フレンの救出
シオン達はフレンが突如出したと思われる音により、魔物に囲まれてしまった。
「フレン!」
ユンクはフレンに向かって叫ぶがフレンはのろのろと魔物の奥の方へ姿を消していく。
「ねぇ、兄さん。この半分近くは魔物じゃないよ!普通の生物だよ!」
リシアは近づいてくる魔物に普通の生物が混じっているのに気付いた。
「ってことはさっきの音は魔物じゃなくて近場にいる魔物を含めた生物を操る音ってことか!」
「シオン君!どうします!?」
「音で操っているなら、フレンさんの瘴気を浄化すればもとに戻るかもしれない。みんなが無事に脱出するならそれしかない!」
シオンはそれしか考えられなかった。
「それならフレンが向かった方向の魔物を中心に倒すわね!」
ユンクはフレンが助かるかもしれないと思い気合を入れる。
「でもこの数相手では!」
リシアが周りを見て叫ぶ。
周りには1mもない魔物や生物の小型が大半だが、中には中型や大型、さらに10mは超える超大型の魔物までいる。
「でもやるしかないですよね」
「そうだね。クラーケンと比べたらまだ戦いやすい。フィーはレィナの近くに」
「うん!」
フィーはレィナの近くに行く。そしてレィナとシオンは目配せで笑い合う。
「いつもより本気、出しますよ!」
レィナはフレンが向かった方向とは別の全方向に大量の水で壁を作った。
「凍って!」
そのレィナの言葉で進むべき方向以外は5mの氷の壁で覆われる。
「リシアは飛び越えて上からくる魔物の対処を!」
「わ、わかった!」
リシアはレィナの精霊魔法に驚きつつシオンの言われ、頭上を警戒し始めた。
「ユンクもいける?」
「大丈夫・・・。来て」
ユンクが呟くとユンクの身体は青色に光り始める。
「行きます!」
ユンクは腕に青い光を集中的に纏わせ敵陣に突っ込む。その速さはシオンの風を纏った動きに迫る勢いだ。
「レィナは補助お願い!」
「わ、わかりました」
レィナは最初の氷の壁を作ったことで少し疲弊してるようだ。
シオンは敵陣に突っ込み、シオンを迎撃しようと迫るオオカミの胴体を剣で両断し、その勢いのまま横から襲い掛かって来る甲虫の魔物も切り伏せる。シオンは風の精霊魔法で加速して更に手数を増やし魔物を次々と切り伏せていく。
ユンクは両手を手刀のようにして襲い掛かって来る魔物に手を振るう。手刀からは青い光が伸び剣のような形を取り、その光に触れた敵は剣で斬られたように両断されていた。そしてユンクはそのまま加速していき、周りには青い剣閃の光の奔流が生まれていた。
「ユンク!すごいね!」
「シオンこそ!」
二人は時折背中合わせに立ち、言葉を交わす。
「それに二人もすごいわね」
ユンクは後ろを見て言った。
後ろではレィナとリシアが背中合わせにして、氷の壁を越えてくる敵をそれぞれ水と氷の精霊魔法で次々と打ち抜いていた。時折、シオンとユンクを上から奇襲して来ようとする敵も打ち抜いていた。
ドゴン!
突如目の前に大きな足音がした。
そちらへ視線を向けると5m以上はある竜のような魔物が立っていた。
「あれは地竜!」
ユンクが叫ぶ。
「地竜って小型の竜種だったと記憶しているけど・・・。大きさから完全に魔物化してるね」
シオンは見上げながら言った。
「シオン!お願いできますか?今の私は速度だけなので」
ユンクは降霊する霊獣によってスタイルが変わるようだ。
「わかった。小さいのは頼んだよ」
「わかったわ」
シオンはユンクに小さい魔物たちを任し、大型の地竜の魔物に向かって走り出す。
地竜は二足歩行の竜種だ。本来、1~2mほどしかなく、高い機動力を持っているのだが、大きくなった分鈍くなっていた。
だが大きさで見ると早い部類に入るだろう。地竜は機動力を活かし、近付くシオンを踏み潰そうとしてくる。
シオンは降って来る足を避けては剣を走らせているが、鱗が堅く傷を付けられないでいた。
「やっぱ竜種は堅い!」
シオンは一旦距離を取り、両腕の先に炎を槍を作り出す。
「はっ!」
シオンは炎の槍を地竜に向けて放つ。
グォオオオオ!!
地竜は顔面に炎の槍を受けて苦しみだす。
「シオン君!!もう一回!」
そこへレィナの氷の槍も顔面に突き刺さる。
シオンもレィナの指示に従い、同じ場所に炎の槍を放つ。
ビキビキ!!
地竜の顔の鱗が温度差で何枚か崩れ落ちた。
「はあぁぁぁ」
シオンはそれを狙って一気に地竜の顔面まで跳躍した。
「止め!」
シオンは剣に暴風を纏わせ、砕けた鱗を狙って突き刺す。
ゴォオオオオン!!
シオンが放った一撃で突き刺さった場所から暴風が吹き荒れ、地竜の首から上を消し飛ばしてしまった。そのまま地竜の身体は地に伏せた。
「ちょっとやりすぎたか?」
シオンは鱗がはがれた部分は思ったより柔くて驚いていた。
「シオン!フレンを見つけたわ!」
そこへユンクの声が響いた。
「レィナ!リシア!フレンさんを見つけた!そっちに向かうぞ!」
「「はい!!」」
周りの魔物もレィナが作った氷の壁の向こうでは魔物達が多数いるが、フレンの場所までは少なくなっていた。
そこまで4人で襲い掛かって来る魔物を撃退しつつ、フレンの元まで駆け抜ける。
「レィナ!お願い!」
シオンはフレンの元まで行くと力づくでフレンを抑えつけた。フレンは暴れてはいるが抑えつけられてからは少しおとなしくなった。
「わかりました!」
レィナはすぐさま、フレンに近寄りフレンの中にある瘴気の浄化を始めた。
「急いでください!後ろからもう来てます!」
リシアは後ろを向き、精霊魔法を続けて攻撃をし続けている。
「来て」
ユンクの言葉で青い光が消え、緑色の光を纏い始める。
「はっ!」
ユンクはその場で腕を振り、緑色の光を針状にして、複数敵陣に向かって打ち出した。
その緑色の光の針は次々と魔物の体を貫通し後ろの魔物も貫き、無力化していく。
「ユンクさん!すごい!」
隣でリシアが褒め称えた。
「でも、これは中型以上の魔物にはほぼ効かないわ」
ユンクの言う通り、倒れて無力化しているのは1mにも満たない魔物や生物だった。でも、一番数が多かったので、巻き込んだ数は相当な物だった。
「では、私は中型以上を担当します!」
そう言ってリシアは手数より威力優先で攻撃を始めた。
「兄さん!まだ!」
「もう少しだ!レィナ、頑張ってくれ」
シオンはフレンを抑え込みながらレィナを応援する。レィナは集中しているのかシオンの言葉に軽く頷くだけだった。
「シオン!レィナ!こっちはそろそろ限界です!!」
魔物達はもう10mは切ろうとしているところまで近付いている。
魔物達は小型は大半は倒れ、中型や大型ばかりになっていた。
「浄化・・・完了です!」
レィナはそう宣言した。しかし、これまでの戦いで興奮状態なのか魔物の進軍は止まらなかった。
「フレンは大丈夫なの!?」
ユンクがレィナに聞く。
「はい。後は安静にしていれば目を覚ますはずです!」
「じゃあ、ここを切り抜けないとね!」
シオンはフレンを背負い逃げ道を探そうと辺りを見渡す。
どっごおおおおぉぉぉおぉぉんん!!!!
シオン達がいる場所とは反対にある通路からとてつもない音が聞こえた。
魔物達もその音のする方向を見た。すると、魔物達はシオン達に見向きもせずに一目散に逃げ始めた。
「な、なにが来るの?」
リシアが不安な声で呟く。
「おまえら!もっと早く走れ!!食われるぞ!!」
通路からカイの声が聞こえてきた。そして通路からカイ、リィナ、フィルジア、ルシルの面々が姿を現す。
「あ!シオン君!レィナ!」
リィナは二人に気付きこちらへ走って来る。他の人もシオン達の方向へ駆け寄ってくる。
「カイさん!リィナ!皆も無事だったんですね!!」
シオンは遠くから叫んだ。
「お前らも逃げろ!!」
だが、カイは再開の喜びよりもかなり焦ってこちらに向かって来る。
「そうだ!そうだよ!皆!逃げなきゃ!!」
リィナもかなり焦った様子でそう言ってくる。
そして、カイやリィナ達が来た通路からないかを引きずるような大きな音が聞こえてきた。
シオン達はそちらを向くと、長さ20mはある漆黒の大蛇がうねりながら出てきている所だった。




