第58話 奥へ3
「この通路は誰も通っていなそうだな」
フィルジアは足下や壁を見ながら言った。
「そんなことわかるの?」
リィナはフィルジアに聞いた。
「まぁな。足跡とか色々判別する要素はあるからな」
「フィルジアはそういうの見極めるのは得意な方なんですよ」
ルシルが教えてくれる。
「へぇー、すごいですね」
リィナは感心した。
暫く狭い階段を降りていくと円形の少し広い空間に出た。
「何かあるぞ」
部屋の中心には台座があり、その上に指輪が一つ鎮座していた。
「これってリシアが付けていた指輪と少し似ているな」
カイが指輪を見て言った。そして手に取ろうと手を伸ばす。
バチッ!
「うわっ!」
カイは数m後ろに飛ばされた。
「封印が掛けられているのね」
ルシルがカイが吹っ飛ばされる様子を見て言った。
「ちったオレの心配しろ!」
「でもあなたはそれぐらいじゃ、くたばらないでしょ?」
「・・・まぁな」
カイは起き上がりながら言った。
「これって・・・」
リィナはカイの様子を見ても、自分なら大丈夫とどこかに確信があった。そのまま手を引かれる様に指輪に伸ばす。
「取れた・・・」
カイみたいに弾き飛ばされずにリィナは指輪を取れてしまった。
「・・・うん、わかった」
リィナは指輪から不思議な声を聞いたような気がした。
「フィルジアさん、この指輪を・・・『太陽の欠片』をあなたに預ける」
「・・・どういうことだ?」
「この指輪は『太陽の欠片』というみたい。この指輪からそう聞いた」
「『太陽の指輪』・・・か」
「これは精霊魔法を使える人しか使えないみたい。だからフィルジアさんに。リシアちゃんが持っているのは月のマナに近く変質させるのに対して、これは太陽のマナに変質させるみたい」
リィナは指輪に付いて説明する。
「そうか・・・確かにこの中では俺しか精霊魔法使えないか」
「それならフィルジアが持っておけばいいだろ。いつまでもリシアだけに面倒かけるわけにもいかねぇし、おまえが使えれば色々とやりやすい」
カイもそう言ってくれる。
「でも俺も瘴魔とやりあってみてーのにな・・・」
カイはその後うなだれてしまった。
「でも、目的の物ってこれですよね?」
ルシルが聞いてきた。
「そうだな。瘴魔に対抗する手段の一つだからな」
フィルジアもそう判断した。しかし
「なんかあっけなくね?リィナがいないとここに来れないし、来れたとしても指輪には手もだせねぇけどよ」
カイも少し不服そうだ。
「それにシオン君達とも合流できてない」
リィナはまずそこだった。
「奥にまだ道続いているみたいだから降りるか?」
「そうだな。まだ何かあるかもしれねーし」
皆でさらに奥へ行こうとすると
「そうはいきませんよ」
その場の誰でもない声が響いた。
「いやー、前に来た時も上の扉の封印が堅くて困っていたのですよ。あの子を置いてきてしばらくしたら扉が開いているのですから驚きました」
上の階段から降りてきたのはベッフェルだった。
「貴様!何もんだ!」
カイがベッフェルに向かって威圧する。
「人間にしてはすごい威圧ですね」
ベッフェルはカイを見て笑った。
「なんであなたがここにいるの!?」
唯一会ったことのあるリィナが叫ぶ。
「やはり貴方もいましたか。以前のあの攻撃は結構効きましたよ。でも、今はおひとりのようですね」
ベッフェルは不気味な笑いでリィナを見た。
「っ!」
リィナは見られた途端萎縮してしまった。
「おやおや、貴方一人だとこの程度で萎縮してしまうのですね」
ベッフェルは萎縮したリィナを見てまた笑った。
「おい!無視してんじゃねぇ!」
カイはベッフェルに無視されて少し切れ気味だ。
「これは失礼。私はベッフェル。一応魔人です」
ベッフェルは自己紹介をする。
「ま、魔人・・・だと」
フィルジアが魔人という言葉を聞いて、後ずさる。
「貴方が持っているその指輪に用がありましてね。渡してくれますよね?」
ベッフェルはフィルジアに向かって手を差し出し、話しかけてくる。
「そんなことできるはずねぇだろ!!」
カイは強めに身体強化を施し、剣を構え、ベッフェルへと切り込んだ。大抵の魔物なら一撃で葬ることができる一撃だが
ガァン!!
「なかなかの力ですね」
「っんだと!」
ベッフェルは片手でカイの剣を掴んでいた。
「邪魔です」
「ぐはぁ!」
ベッフェルが適当に腕を振るうとカイはリィナ達がいる場所まで飛ばされた。
「カイさん!大丈夫ですか?」
「っく!」
カイは膝を付いていたが大丈夫なようだ。
「それにしても、あの子はどこに行ったのでしょうか?私が来たから顔を出すと思ったのですが・・・。おや?そうでもなかったですね」
ベッフェルはにやりと笑った。
どどどどど!!
遠くから地響きが聞こえてきた。
ベッフェルが来た入口から次々といろんな種類の魔物が入ってきて、リィナ達を囲んだ。
「これで終わりでしょうかね」
ベッフェルは宙に浮かび、魔物に囲まれるリィナ達を見下ろした。
「お前ら、防御系の魔法使えよ」
カイは小声で皆に声を掛ける。
「おら!!」
カイは地面に思いっきり剣を叩きつける。叩きつけられた地面に亀裂が入り、床が崩れ始めた。
「ルシル!」
「はい!燃やし尽くせ!プラミルナード!!」
ルシルは落ちる寸前に追いかけてこないように周囲に炎の渦を自分たちがいる場所を囲うように作り出した。その渦はどんどん肥大化し部屋全体を包み込もうとする。その瞬間、完全に床が抜け、砂埃を起こしながらリィナ、カイ、フィルジア、ルシルの4人は下に落ちていくのだった。
「・・・逃げられてしまいましたか」
ベッフェルは砂埃が晴れた先にある穴を見て呟いた。
魔物たちはルシルが放った魔法で半分近くが死に絶えていた。
「この狭い場所での広範囲殲滅上級魔法、自分達にも被害がいくかもしれないというのに無茶をしますね。いや、そこまで追い詰めてしまったのは私ですか」
ベッフェルは穴を見続ける。
「下にあの子もいますが・・・」
ベッフェルは呟き考え込む。
「やはり様子を見に行った方がいいでしょうかねぇ・・・」
ベッフェルはしばらくの間、そこで考えるのだった。
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ドッゴオオオオン!!
「今の音は・・・」
遠くから何かが崩落するような音がした。
「まさかカイさん達が何かやったのかな?」
「壊さないように伝えたのに・・・」
ユンクは肩を落とした。
「でも、そうしないといけない状況になったかもしれませんよ?私たちもさっきは危なかったですし」
レィナはそう分析する。
「そうだね。言われたことは守る人達なのは間違いないからね」
シオンもそれには同意だった。
「それは向こうに何かあったってこと?」
リシアはシオンに聞く。
「可能性だけどね。もう広い空間に出るから注意して」
シオンはそう言って注意を促す。
出た場所は神殿のような建物が佇む広場だった。シオン達はその広場の横を流れる水路から出てきた。
「居住区・・・でしょうか?」
レィナは見渡して言った。
「確かに人が住めそうな神殿ではあるね」
シオンも神殿を見ながら言う。
「あそこに誰かいません?」
リシアが指を指した方向を見ると神殿の入口の所に横たわっている人がいた。
「・・・・・・あれは・・・フレン!」
ユンクはそう言って駆け出した。
「僕達も行こう」
「はい」「うん」
シオン達もユンクの後を追った。
「フレン!フレン!」
ユンクは涙目になりながら、フレンの名を呼び続けていた。
「ユンクさん、ちょっと見せてもらってもいいですか?」
「は、はい」
レィナは許可を取り、フレンの体を見た。
暫くの間、レィナは黙ったままフレンの体を見ていく。
(怪我はしているけど、重症になるものはない。生命維持に必要な魔力やマナは少ないけど、これだけあれば意識は戻るはずだし・・・ほかに原因は・・・。これって瘴気?)
「シオン君、フレンさんの体の中に瘴気みたいのがあります」
「瘴気だって!?」
「浄化してみましょうか?」
「そうだね。やってみてもらってもいい?」
「わかりました」
レィナはフレンの瘴気を浄化しようと月のマナを送り込もうとした時
「ヤメローーー!!」
「きゃっ!」
突然フレンが起きだし、レィナを弾き飛ばした。
「フ、フレン!」
「ヤメロヤメロヤメローーーー!!」
ユンクも叫ぶがフレンは聞こえていないのか暴れるのをやめない。
「邪魔ヲ・・・スルナーーー!!」
キーーーーーーーーーーーン!!!
フレンが吠えた途端、高い音が辺りに響き渡った。
「この音は!!」
「兄さん!何か来るよ!」
この空間に繋がっている通路や天井部、シオン達が上がってきた水路からまで、多数の魔物がシオン達に群がってきた。
そして数秒の間に完全に取り囲まれてしまうのだった。




