第57話 奥へ2
シオン達はユンクが見つけた狭い通路を歩いていた。
先頭にシオンとフィー、その後ろにレィナ、リシア、ユンクと続く。シオンとフィーが先頭なのは察知能力が高いからだ。
「本当に暗いですね」
レィナは人差し指に小さな火種を作り歩いている。
「上の通路より狭いからここで戦闘なんてなったら大変ですよ」
リシアも不安なようだ。
「ユンク、この遺跡って集落の方ではどれくらい判明していますか?」
シオンは最後尾を歩くユンクに尋ねる。
「私達は集落の祭事で使う上の一部だけです。奥に扉があったけど、その扉は封印がされていたわ」
「その封印はもしかしたら、リィナのマナに反応するかもしれないね」
「私もそんな気がします」
上にリィナが残ったのは良かったのかもしれない。
「でも上は大変そうですね」
レィナはクスっと笑いそんなことを言った。
「どうしてですか?こっちの方が帰れるか分からないのですから大変なのでは?」
リシアが不思議そうに聞く。
「いえ、人選的という意味で大変そうだなと思いまして」
『人選・・・』
その言葉でシオン達は思い浮かべる。
カイは暴走、リィナは天然というか抜けている所がある上に暴走気味、フィルジアはその二人を止め、ルシルは・・・傍観だろうか。
「確かに」
「大変そうですね」
シオンとリシアはレィナの言っている意味が分かった。
「そんなに大変そうかしら?」
ユンクは共に過ごした時間が少ないのでそこまで分からなかった。
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一行は暫く歩き続けた。
「この先少し広い空間があるみたいだ」
シオンは風の精霊魔法を前方に放っているので漠然だが、どんな風になっているか分かった。
ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・
その空間は水が滴り落ち、床一面に水が少し張っていた。そして、壁もぼんやりと光っていた。
「これってなんで光っているの?」
リシアが不思議そうに見渡す。
「たぶんこれはヒカリゴケだよ」
「ヒカリゴケ?」
「うん。暗く湿った場所に生息する光を放つ苔の一種だね」
「ふーん・・・」
リシアはシオンの説明を聞いてもう一度見渡した。そして空間の真ん中あたりに来ると
キーーーーーーーン
『っ!』
突如、頭が痛くなるほどの高い音が鳴り響いた。
「シオン!この音だよ!」
フィーは叫んだ。
「ってことは魔物が来る!?」
シオン達は武器を構える。
バサバサバサバサ!!
上の方が広い空間になっていたらしく、そこから蝙蝠のような魔物が大群で襲い掛かってきた。
「フィー!捕まってて!」
「う、うん!」
フィーは慌ててシオンに捕まる。
シオンは蝙蝠の魔物を観察する。
「皆!こいつらに噛まれるな!毒を持っているぞ!」
シオンは叫んで伝える。以前何かの本で見たことがあったのだ。
皆はシオンに続いてさっきの通路まで逃げ始める。
(間に合わない!)
シオンは追いつかれると気付き対処をしようとする。
「フィー!レィナにくっついて!」
「う、うん!」
「シオン君!」
「先に行って!食い止める!」
シオンは皆を先に行かせ、蝙蝠の大群に向かい合う。
「はっ!!」
シオンは風の精霊魔法で空気の壁を蝙蝠に叩きつける。何体かは落としたが、数が多すぎて後ろからどんどん押し寄せてくる。
「シオン君!!」
先に行かせていた皆の方を見ると、一際大きい蝙蝠が通路の前で飛んでいた。
シオンは足元の水を打ち上げ壁にして後ろからくる蝙蝠の大群を少しだけ足止めする。そしてレィナ達の方へ走った。
「レィナ!あれで逃げるよ!リシアを頼む!」
「あ、あれって?」
「海でやったやつだよ!」
「あ、あれですね。でもどこへ?」
「あそこだよ」
シオンが視線を向けた方には高いところから落ちてきている滝を見た。
「まさか上る気ですか!?」
「そこしか逃げ道がない!僕がユンクを運ぶ!」
そう言うやシオンはユンクをお姫様抱っこする。
「失礼します!」
「ひゃ!」
「リシアちゃん!」
「うわ!」
レィナもリシアをお姫様抱っこする。
「フィーちゃんもしっかり捕まっててくださいね!」
「うん!」
そう言ってシオンとレィナは足元を水の精霊魔法で覆い、地面を滑るように移動し始めた。その速度は普通に走るよりかなり速い。
「な!な!な!」
リシアは口をパクパクさせていた。
「なんですか!?これは!?」
ユンクも驚きを隠せない様だった。
「詳しくは後で説明します」
シオンは説明する余裕がない。この水上滑走を実践で使うのは初めてなのだ。
「レィナ!一気に行くよ!」
「わかりました!」
二人は滝の近くでジャンプをして、滝を水上滑走で上り始める。
「落ちるー!」
「わわわわ!」
ユンクもリシアはそれぞれぎゅっとシオンとレィナにしがみ付く。
「このまま横穴に行くよ!」
「はい!」
シオンとレィナは滝の上の横穴に入っていく。
「レィナ!ここ浅いから後ろの方塞いで!」
「準備は出来ています!」
レィナも同じことを考えていたようだ。
「はっ!」
レィナが一旦止まり、水にマナを流し込む。水は横穴を塞ぎ次第に凍り始めた。
「これで一安心ですかね」
レィナがそう言うとリシアを浅瀬に下ろす。
「氷の魔法なんて始めてみました」
ユンクは感心していた。
「兄さん、さっきのってなんですか?」
「水上滑走のこと?」
「はい」
リシアは目を輝かせてシオンを見ていた。
「あれは精霊魔法で遊んでいたらできたものだから・・・。今度教えるよ」
「兄さん、ありがと」
リシアは嬉しそうに微笑んだ。
「ここって水路でしょうか?」
レィナは水が流れて来ている方向を見て言った。
「でも、水が流れているってことはどこかに通じている可能性はあるわ」
「そうですね。戻るわけにもいきませんし」
後ろは先ほどの氷で行き止まりになっている。
「うん、奥の方にまた開けた場所があるみたいだけど」
シオンはさっきと同様に前の方に風を送り込んで、地形の確認をしていた。
「じゃあ行きましょう」
ユンクがそう言い、シオン達は歩き始めた。
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「ここは儀式場か?」
フィルジアは辺りを見渡しながら言う。
「最近誰かがここにいた跡あるぜ」
カイが見つけたのは古い布と焚き火のような跡だった。
「遺跡の中で焚き火なんて普通はしないよね」
リィナが不思議そうな顔で聞く。
「普通ならしないだろうな」
「じゃあ、ここにいたのってユンクの恋人のフレンって人かしら?」
「可能性は高いな」
「でも、何処に行ったのかしら?」
「確かにそうだよな。他に行けるとしたらあの扉の奥か、そこに空いている穴ぐらいだぜ?」
カイが指差した方には確かに穴が空いている。
「結構深そうだね」
リィナは覗き込みながら言う。
「あっちの扉はどうなんだ?」
フィルジアが扉の方へ行く。
「だめね。押しても引いても開かない」
「これは・・・封印されているのか?」
フィルジアが扉に触れて言った。
「・・・・・・・リィナ」
フィルジアは少し考えてからリィナを呼んだ。
「なに?」
リィナはフィルジアの方へ行く。
「この扉にマナを流してみてくれ」
「う、うん。わかった」
リィナは言われるがままに、扉に手で触れて、マナを流した。
ゴゴゴゴゴ!!
「え?」
扉はリィナのマナに反応して開くのだった。
「やはりな」
フィルジアは納得するように頷いた。
「ここは太陽の巫女に関連する遺跡で間違いないようだ」
「ってことは私のマナに反応するように作られているってこと?」
「全部がそうだとは言えないが、可能性は高いだろう」
扉の中を覗くと、下へと続く階段があった。
「よし、下へ降りよう」
フィルジアに続き、リィナ達は階段を降りていった。




