第56話 奥へ
「ねぇ、なんかやけに涼しくない?」
リィナが言石内部の狭い廊下のような場所を歩いている時にそんなことを言った。
「遺跡の内部は普段、太陽の光に当たらないから、壁や床が冷たくなっているからだよ」
シオンはリィナのために説明する。
「なるほど・・・」
リィナは頷いて納得する。
「ん?これ何?」
リシアが脇に落ちている鈴を拾って聞いてきた。
「ちょっと見せてください!!」
ユンクは過剰に反応してその鈴をリシアから奪った。
「これは・・・フレンの・・・」
ユンクは呟いた。
「フレンってどなたなんですか?」
近くにいたリシアにはユンクの呟きが聞こえてしまった。
「・・・私の恋人です」
『え!?』
その言葉に皆は驚く。
「ユンクって恋人いるの!?」
リィナが驚いてユンクに聞く。
「はい。もしかしたら『いた』になっているかもしれませんが」
「あ・・・・ごめんなさい」
リィナは自らの失言に気付き謝った。
「でも何でそのフレンって人の鈴がここに?」
「・・・最初この遺跡に魔物が住み着いた時にフレンと私で討伐を試みたことがあったんです。まぁ、私は入口のゴーレムでかなり苦戦して撤退させられてしまいましたけど」
「フレンって人は?」
「私を逃がすためにカイさんが倒したゴーレムへ向かって走って行きました。私がフレンを見たのはそれが最後です」
ユンクは泣きそうな顔で話した。
「でも、ここにフレンさんの鈴が落ちているということは、まだこの遺跡のどこかで生きているかもしれませんよ」
レィナは励まそうとして希望を持たせようとした。
「そうですね」
それでもユンクの顔は笑っているが、瞳の奥の悲しみが晴れることはなかった。
「うっ!」
フィーが頭を抱え苦しみ始めた。
「皆!注意して!」
シオンはすぐに察知し皆に注意を促す。
しかしここは横に二人ほどしか並べないほどの狭さだ。この人数だと相打ちしてしまう可能性があった。
「前から来たぞ!」
先頭を歩いていたカイは声を上げる。
「けっこうたくさんいるな」
カイの隣にいたフィルジアが後ろの人に伝える。
その時
ガラガラガラガラッッ!!
『っ!!』
シオン達が立っていた後方の足元が崩れ落ちた。
「シオン!」
フィルジアの叫びは虚しく響くだけで、シオンは遺跡の下へと落ちていくのだった。
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「ん?」
シオンは暗闇の中で目を覚ますが光が無いので全く見えていなかった。
そして、近くに何かないか手で探るととても柔らかい何かを掴んだ。
「あん」
掴んだと同時に艶のある声がした。
「えっと・・・これはレィナ?」
「そ、そうです。早く胸から手を離してください」
「わわ!ごめん」
シオンはレィナの手を握りながら周りを見渡した。
「暗くて見えないね」
「他に誰かいるのでしょうか?」
「とりあえず、明かりを付けるね」
そう言ってシオンは火の精霊魔法で辺りを照らした。
「ここは・・・」
何か祭っているような儀式場のような広い空間だった。
「あ!あっちに人が」
レィナが人が倒れているのを発見し近づく。
「リ、リシア!しっかり!」
倒れていたのはリシアだった。
「う、うん?」
リシアは意識を取り戻しシオンを見上げた。
「ここは・・・?」
「僕達あの穴から落ちたんだよ」
シオンは遙か上の方に光る穴をを指さして言った。
「皆さん!無事でしたか!」
そこへユンクが現れた。
「ユンクも落ちたの?」
「ええ。たぶん落ちたのは私達4人かと」
ユンクは一番後ろを歩いていたので誰が巻き込まれたか見ていたのだ。
「私もいるよ!」
フィーが上から降りてきた。
「フィーちゃん、どうしてこっちへ?」
「フィルジアって人から伝言!こっちはみんな無事、このまま進むからどこかで合流できたらだって」
フィーは伝言を預かり、ここに来たようだった。
「フィー、向こうはもう行ったの?」
「うん!私が下りてきたときには歩いて行くときだったよ」
「それならフィーはこっちにいてもらった方がいいか」
「そうですね。今からだと危ないかもしれませんし」
「それにしてもどうしてあんな高いところから落ちたのに無事だったの?」
リシアが聞いてきた。
「それは落ちた時に僕が風の精霊魔法で下に思いっきり打ち込んだからね。場所がばらばらに落ちてしまったのは謝るよ」
シオンは落ちた時にしたことを説明した。
「私がシオン君の傍にいたのはシオン君に捕まっていたからなんですね」
「・・・捕まってたんだ」
いつの間にか捕まっていたらしい。
「それにしてもここはどこなんでしょうか?」
レィナが見渡しながら言う。
「恐らくここは神殿の奥の方にあると言われていた礼拝場だと思います」
その質問にユンクが答えた。
「ユンクはここに来たことあるの?」
「いいえ、このような場所があるのも初めて知ったわ。でも、あれを見る限り大体あっていると思うけどね」
そう言って視線を向けた。
ユンクの視線の先には大きな竜の石像があった。
「あれは太陽神ソールの石像よ。この神殿は太陽の巫女が残したと言われているの」
「太陽の巫女ってあの古くに伝わる?」
「ええ」
ユンクは静かに頷いた。
「だからリィナとレィナ、特にリィナの太陽のマナに反応するものがあるかもしれないわ」
石像を見上げながら言った。
「とにかく合流しましょう。こっちに来るとき向こうに通路があったわ」
「そうだね。ここにいてもしょうがないから行ってみよう」
シオン、レィナ、リシア、ユンク、フィーはその通路の方へと歩いて行った。
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「シオン君!レィナ!」
穴の中に向かってリィナは叫んでいた。
「リィナ!今は目の前の魔物だ!」
「・・・うん」
フィルジアに諭され魔物に向き合うリィナの目には涙でいっぱいだった。
「おら!」
カイは遺跡が壊れないように加減して魔物たちを倒していく。狭い通路ってこともあり、大型の魔物はいないのでそれでも余裕があった。
フィルジアも奥の方の魔物を狙って数を減らしていく。
「私たちは何かあった時に周りに注意してましょ」
「・・・うん」
ルシルはリィナに優しく声を掛ける。実際この狭い通路で魔法を使うと見方を巻き込む可能性があるから控えているのだ。
「大丈夫だよ!リィナ!シオン達生きてるから!」
「・・・え?」
リィナはフィーの方を見る。フィーはシオンの肩に乗っていたが、シオンが落ちる時に飛んでいたのだ。
「シオン達の気配がするから大丈夫!」
「・・・よかったぁ」
フィーの探知能力は感情や心を感知するものだ。それを知っているリィナは安堵の息を吐いた。
そんな会話をしている間にカイとフィルジアは魔物を掃討したようだ。
「リィナ、無事とわかったら進もう。もしかすると、こちら側からしか開かない扉や仕掛けがあるかもしれん」
フィルジアがリィナをこちら側に付いてくるように促す。
この先、瘴魔が出たら今の面子だとリィナしか対抗できないのだ。
「わかった」
リィナは少し後ろ髪を引かれたが同行することにした。
「それとフィー」
「なに?」
「お前にはシオン達に伝言を伝えてほしい」
フィルジアはフィーにこっちの方針を伝えるように指示する。
「わかった!伝えるね!」
フィーは穴に向かって飛んでいこうとする。
「待って!フィーちゃん!」
リィナはフィーを止めた。
「大丈夫だよ?シオン達生きているから」
「ううん、違うの。ただフィーちゃんに・・・その・・・」
リィナは何を言おうとしていたのか分からなくなってしまった。
「その・・・皆のことをよろしくね」
「・・・うん!わかった!」
フィーは元気よく返事をして穴の中に入っていった。
「私達も行こう」
フィルジアの号令でカイ、フィルジア、ルシルそしてリィナは遺跡の奥へと歩き出すのだった。
(こっちも頑張るから、そっちも頑張ってね。レィナ、シオン君)
リィナは心の中で二人に言うのだった。




