第51話 集落で
シオン達はユンクに連れられて、森の中の道無き道を歩いていた。
「シオン達はフィーを入れて四人で旅をしているの?」
ユンクは歩きながら話しかけてくる。
「そうですね。と言ってもまだ旅を始めてからは2ヶ月と少しぐらいですが」
「まだ始まったばっかりなのね」
そう、まだ2ヶ月ちょっとしか経っていないのだ。あまりにも中身が濃くて、もっと長く経っていると思っていた。
「それより三人は霊的な何か力を持っているの?妖精も見えるようだし」
「精霊魔法が使えますから」
「へぇー、エルフでもないのに使えるなんてすごいわね」
やはり精霊魔法のことは知っているようだった。
「もう少しで集落に着くわ。先に言っておくけど、あなた達の言語を話せる人は少ないから注意して」
「「「わかりました」」」
そう話していると、先の方に建物らしき物が見えてきた。
「あれが集落よ」
集落の周りには何人かの見張りがいた。
『巫女様、お帰りなさいませ』
ユンクが帰ってくるなり挨拶をしてきた。
『はい、ただいま戻りました。こちらはお客人なので丁重に扱うように』
『わかりました』
どうやらユンクは集落の中でも上の方の人間のようだ。
「私たち呼び捨てで呼んでいいのかな?」
「本人がいいと言ったのだから大丈夫だとは思いますけど」
「最初は様子見ようか」
シオン達は小声で話し合った。
「皆、来て」
ユンクの呼ばれ、シオン達は集落の中へと入っていった。
「ここが長の家よ。集落の集会所としても使われるから遠慮はしないでいいわ」
ユンクはノックもしないで扉を開けて入っていった。
「戻りましたよ、長。お客人を連れて来ました」
「また連れてきたのか。一昨日も連れてきたばっかりだろう」
奥から白髪の髪と髭を生やした老人が出てきた。
「ですが、一昨日の方々は魔物討伐では大変お世話になっています。今回のお客人も腕は立つと思います。それに、今の魔物が増えていることに関して何か知っていると感じ、連れてきました」
「巫女であるそなたの感なら仕方ないか」
どうやらユンクは感もいいそうだ。
「お客人、儂はこの集落の長をやっている。名前をラングという」
「初めまして、僕は・・・」
シオン達は先程のユンクの時のように自己紹介をする。
「ほう、人間でありながら精霊魔法を使うのか。じゃから、妖精を連れて旅が出来るという訳じゃな」
そう言ってラングはフィーを見て話しかけてきた。
「おじいちゃんも私のこと見えるの?」
「フィーちゃん!失礼ですよ!」
レィナが注意をすると
「よいよい、おじいちゃんか。儂の孫はなかなかそう呼んでくれなくての」
「悪かったわね」
ユンクがばつが悪そうに顔をそっぽ向ける。
「「「え!」」」
「ユンクのおじいちゃんなの!?」
まさかのことだった。フィーも驚いている。
「長の孫だからって集落の皆みたいに言葉は直さないでいいからね。見た感じ同い年なんだから」
「僕達は16歳ですけど」
「それなら私の方が一つ上ね」
「そうなんですね」
どうやら一つ年上のようだ。背丈はリィナやレィナと同じぐらいなので低い方なのだろう。
「それでお主達はどうしてこの森へ来たのじゃ?」
「実はこれを預かっているのですが」
シオンはクラークか預かった手紙を渡した。
「おお!クラークの奴からの手紙か!奴はこの集落で不足気味の食材を届けてくれての」
どうやらクラークは物資をここに届けているようだ。ラングはそう言いながら手紙に目を通す。
「ふむ、魔人・・・か」
どうやらクラークは魔人についても書いたようだ。
「そなたらは魔人に、瘴気に対抗するための力があるというわけじゃな」
「はい」
ラングは目を瞑った。
「・・・最近、この集落の周辺に魔物が急増しているのも関係していると思うか?」
ラングは少し考えてから聞いてきた。
「瘴気の魔物を瘴魔と呼んでいるのですが、瘴魔の近くの生物は魔物になりやすいかもしれません。同種族であれば使役して複数で攻めてくることもありました」
シオンは今までのことを思い出しながら話す。
「可能性はあるということか」
「・・・長」
ユンクはラングの方を見ながら、心配そうな顔をした。
「僕達は魔人らしき影をこの森で見たと聞き、ここを訪れました。その情報をクラークさんから聞いたんです」
「なるほどの。だから魔人関連がこの手紙に書いてあるのだな。この手紙は集落の誰かに渡せば儂に来るようにここの文字で書かれておるしの」
クラークさんは何かここにあるのかもしれないと、踏んでいたのかもしれない。
「それと」
「っ!」
ラングが何か話そうとした時にフィーが急に怯えたような顔で震えた。
「どうしたの?フィー」
シオンがフィーに話しかけるが
「・・・何?この音・・・」
「音?」
シオンが聞き返したその時
『魔物が来たぞ!!』
突然外からそんな声が響いた。
「ユンク」
「はい」
ユンクはすぐに外へ出て行く。
シオン達は何と言ったのか分からなかったので、戸惑っていると
「魔物が出たようじゃ」
さっきの言葉の意味をラングが教えてくれた。
「それじゃあ、僕達も行こうか」
「だね」「わかりました」
「すまぬが、よろしく頼む」
ラングに送り出され、シオン達も家を出た。
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集落の外の方に虫を大きくした魔物がいた。小さい魔物は1mほどの大きさ、大きい魔物は5mはありそうだった。
空からさっき戦っていた鳥の霊獣が大きな魔物に向かって攻撃をしたいた。
ユンクは他にも狼の霊獣を3体ほど指示していた。
「僕達は向こうへ行こうか」
シオンは霊獣がまだ行っていない方向にいる魔物に向かった。
「シオン君、今回私は遠距離攻撃中心で行くね」
「いいけど、火事にしないように気を付けてね」
「う、うん。頑張る」
シオンはレィナの方も見ると明らかに近づくつもりがない場所にいた。
「そういえば二人って虫とかも苦手だったっけ」
野宿の際に寄ってきた虫で騒いでいたことがあったのを思い出した。
今回の魔物は大きいといっても虫は虫だ。近くに行きたくないのだろう。
「フィーは二人の傍にいた方がいいよ」
「うん!わかった」
フィーはシオンの肩からレィナの方へと飛んで行った。
「集落に入れないことを最優先でやるよ!」
「わかった!」「はい!」
シオン達は姿が見え始めた虫の魔物に向かって攻撃を開始する。
リィナとレィナは火属性の精霊魔法を使わないようにして、風や水の精霊魔法中心で戦う。
飛んでいる魔物を中心に戦い、大型の魔物には関節といった急所を的確に射貫くような攻撃で動きを止める。
動きが止まったら風の刃で首を切り落とすか、頭を水圧で的確につぶしていった。
旅を始めた頃より断然、精度も威力も上がっているのもあるが、今回は相手が虫ということもあり、近づきたくないと必死につぶしにかかっている部分がある二人だった。
シオンは4mはあるカマキリの鋭い鎌を剣で受け流し一気に接近して首を刎ねる。
刎ねた後に後ろから飛んでくる魔物をスレスレで避け、振り返りざまに一閃すると一刀両断され通り過ぎていく。
シオンは後ろに目が付いているのではないかと言われるほどの正確さで捌いていく。
メキメキメキ!!!
森の奥からそんな音が響きだした。
「二人とも気を付けて!!」
シオンが声を上げた後、奥から木々をなぎ倒しながら10mはある四足歩行の巨大な甲虫が出てきた。
二人がその甲虫の魔物を目にした次の瞬間には、二人は目を合わせて頷いた。
「「シオン君!」」
シオンは二人のマナが共鳴しようとしているのに気付く。この共鳴が起こったときは複合精霊魔法が来ることにシオンは気付いた。
シオンは咄嗟に距離を取る。
甲虫はその巨体を使い、木々をなぎ倒しながら集落へと突進してくる。
今回はリィナとレィナはすぐ傍にいたため、手を繋いで精霊魔法を使うようだ。
(ん?レィナはともかくリィナは火の精霊魔法使わないでできるのかな?)
シオンは火事にならないように注意したので、火の精霊魔法を使わないと思っていた。
「させない!」「させません!」
二人は集落に近づく手前で氷の大きな槍を作り出し打ち出した。
氷の巨槍は強固な殻を破壊し、甲虫の胴体に突き刺さる。
それだけではまだ勢いが止まらずに甲虫は走り続けていると、その氷の巨槍が内側から爆発を起こしばらばらにしてしまった。
(なるほど・・・。レィナの氷の槍の内側に火のマナを溜めて放って、一気に蒸発させて爆発を起こしたか)
シオンは二人がしたことに驚きと共に関心した。
二つの属性を同時に一人で操ることもできるとされているが、実際にはイメージが出来ずに霧散してしまう場合が多いのだ。たとえできたとしても今の二人のような高威力は出せない。
それを二人は何も相談もせずにあそこまで合わせることが出来るのは双子だからだろう。
その巨大な甲虫を倒して攻撃の手がほぼなくなったと思ったら、ユンクもいない方向から魔物が近付いてくるのに、シオンは気付いた。
「二人とも!違う方向から来てる!」
そう言って駆け出す。
二人も付いてきているが、気付くのが少し遅かった分、集落に到達してしまいそうだった。
間に合わないと思った矢先。
「おらぁ!!」
暴風と言ってもいいほどの剣筋が先頭を走っていた魔物を一刀両断する。
きゅんきゅん!
そんな音と共に不可思議な軌道を描く矢が小型の魔物を打ち抜いた。
「捕えました!」
奥にいた大型の魔物も地面から生やした岩の楔に穿たれて動きが止まっていた。
「ナイスだ!!」
そういって先ほどの剣で一刀両断した剣士がそこに一気に肉薄したと思ったら、胴体の中心をめがけて突きを放つ。
ドゴン!
その剣は堅い殻を突き破り穴を穿ってしまった。魔物はそのまま絶命した。
その剣士の周りの茂みから速度を付けた飛行虫が頭に付いている角で突き刺そうと10体近く迫っていた。
「させません!」
その声と同時に水の鞭のようなものがその飛行虫をすべて撃ち落とした。
「だいぶ腕を上げたじゃねーか!」
そう言ってその鞭を振るった少女に向かって剣士は言葉を投げた。
「ありがとうございます」
少女も褒められたのが嬉しく微笑む。
その戦闘を見ていた三人は
「え?カイさん?」
「フィルジアさんもルシルさんもいるし、あれは・・・」
「・・・リシア?」
シオンはこの場所にいるはずのない義妹の姿を見て呆然としていた。




